「そう、あなたはもういないのね」

2008-04-30 00:02:15 | 日々思うこと
「そうか、もう君はいないのか」(城山三郎)が図書館から回ってきて読んだ。
彼の作品はかなり読んでいるのでこれが最後の作品(小説ではないけれど)かと思うと感慨深かった。
帯に「五十億の中でただ一人{おい}と呼べる妻へ--]とある。

あなたは生涯わたしを「おい」と呼んだことは一度もなかった。ただ名前で呼ぶだけ。

以前、ICUに入ったとき、朦朧とした中でもあなたはわたしの名前を呼び求めたらしい。
看護師さんが「奥さん、~~さんというのですか」と言うので「ええ、呼んだのですか」と
尋ねると「名前を呼んでばかり」といわれたことがあった。
あなたがわたしを頼っているとじんときたものだった。

有名人であろうとなかろうと連れ合いを亡くすことの哀しさ、寂しさに変わりはない。
あなたが突然倒れて7ヶ月。その間、あなたのそばで顔を見つめながら、次第に
覚悟をしなければならないときが近じかやってくると悟らねばならなかった。
あのままあなたが逝ってしまっていたら、わたしはなかなか立ち直れなかっただろう。
今でもつらく、悔しく、誰にと言うのではなく怒りの気持ちが抑えきれないでいるのだから。

わたしたちは有名人ではないから本にはならないけれど「そう、あなたはもういないのね」と
題していくらでも書けそうに思う。
わたしたちはわたしたちなりに二人の歴史があったのだから。
波乱万丈の歴史というほどではなかったけれどね。
コメント
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