アルルの女(6)
——————————【6】———————————————————
Je jetai un regard en passant, et je vis, au fond de la cour, accoudé—la
tête dans ses mains,—sur une large table de pierre, un grand vieux tout
blanc, avec une veste trop courte et des culottes en lambeaux... Je m'arrêtai.
——————————(訳)————————————————————
私は通りすがりに目をやった。すると庭の奥で——頭を両手の中に
うずめて——大きな石のテーブルに肘をついて、頭髪は真っ白で
短すぎる上着とぼろぼろの半ズボン姿の一人の老人が見えた。
——————————《語彙》————————————————————
regard: (m) 視線 jeter un regard sur qn 人に視線を投じる
en passant:(ジェロンディフ)(同時性を表す)「通りすぎながら」
<passer (自) 通り過ぎる
veste: (f) 上着、ジャケット
en lambeaux: ぼろぼろの(服など)
culottes: (f) 半ズボン
tout blanc:「白髪の」色彩形容詞は人間の髪の色を表すことがあります.
des culottes:「半ズボン」ズボンのように2つの部分からなる物を表す名詞
はしばしば1個を複数で表します.
—————————≪文法事項≫—————————————————
Je vis, au fond de la cour, accoudé—la tête dans ses mains,
—sur une large table de pierre, un grand vieux tout
blanc, avec une veste trop courte et des culottes en lambeaux
—la tête dans ses mains,— この部分は「頭を両手でかかえて」
となります.mettre を補って読みます.en mettant la tête dans ses mains です.
文章はリズミカルにテンポよく読めるように、読み手のほうで補ってくれ、
という著者側の頼みを聞きながら読むことになります.
Je vis の次は既習文法に依れば目的補語のun grand vieux が来るべきですが、
ここでは、読み手をじらすように、au fond de la cour, accoudé—la tête dans
ses mains, —sur une large table de pierre, と長い長い挿入句が放り込まれていま
す.
文法習いたての人には迷惑千万な挿入句ですが、まあ、ときには邪魔物との
付き合いも必要です.面倒みてあげましょう.
au fond de la cour「庭の奥に」
accoudé sur une large table de pierre 「大きな石のテーブルの上に肘をついて」
この挿入句の中に、さらに挿入句がぶち込まれています.
それがこれ:
la tête dans ses mains「頭を抱え込んで」
二重に挿入しましたよ、という合図の —ハイフンで示しています.
主語からすぐに目的補語にたどり着けない、いじわるな挿入句に負けるな!
がんばれ!
以上です.