ドーデ短編集から ②
『星』(2)
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De temps en temps*¹, l'ermite*² du Mont-de-l'Ure*³ passait*⁴ par
là pour chercher des simples*⁵ ou bien*⁶ j'apercevais*⁷ la face
noire de quelque charbonnier*⁸ du Piémont*⁹; mais c'étaient*¹º
des gens naïfs*¹¹, silencieux à force de*¹² solitude, ayant perdu
le goût*¹³ de parler et ne sachant rien de ce qui se disait
en bas dans les villages et les villes.
——————————(訳)—————————————————————
時々、モンドリュールの行者が薬草を採取するため、そこを
通ったり、あるいはピエモンの誰か炭焼き職人の黒ずんだ顔
を見かけるぐらいだった; しかし、それらは、素朴で、
孤独生活のため、無口になった連中で、会話するような意欲
はなく、下の村や町でどうしたことが話題になっているか、
などは何も知らなかった.
——————————《語句》—————————————————————
*1) de temps en temps: 時々
*2) l'ermite: 森や山にこもって苦行生活をするカトリックの行者.
山林にこもって修行するのは、日本の修験道の行者
だけでなく、西洋でもカトリックの修道士などが
人里離れて隠遁苦行を行う。
*3) Mont-de-l'Ure: 「モン・ド・リュール」.この地方の山の名前
*4) passait:(半過去) <passer (自)通る、 passer par ~ ~を通る
passer par là そこを通る
*5) simples: (m,pl) (複数で) 薬草
*6) ou bien: さもなくば.(ou の強調形)
*7) apercevais:(半過去、1単)
<apercevoir 見える、目に入る、ちらっと見る
*8) charbonnier(ère): 炭焼き職人、炭焼き人、石炭商、炭屋
*9) Piémont:(m) 「ピエモン」; 北イタリア、アルプスのふもとの地方
なお、イタリア本国では「ピエモンテ」と発音する.州都トリノ.
*10) c'étaient:(半過去、3)直説法3複では ce sont
*11) naïf: (形) 純朴な、素朴な
*12) à force de ~: 「非常に~をしたために」、「多くの~のおかげで」、
silencieux à force de solitude
*13) goût: (m) 意欲、関心