絵のタイトルは、「遠い昔のような」です。
風に揺らぐ、蔓物が障子に映っている。
私の「切磋琢磨」は、遠い昔のことなのでしょうか。
かつて勤めたエンジニアリング会社で、プロジェクトマネージャーをやるのは、
容易ではなかったし、怖いことだった。
ジョブ受注のために、プレゼンテーションの企画・実演から試される。
ノミネートされた数社に残り、オファー(見積もり・提案書)を出す。
すべて、社内の部長会、役員会を通過して初めて出せるオファーです。
利益率、スケジュール、人員配置、専門性、果ては鉄骨トン数、インチ・メーター、
工夫の数々(ストロングポイント)を社内で説明し、クリアーしなければならない。
その上、プレゼンテーションの実演会も試行される。
時計を持ったパフォーマンス・チェックの集団(広報)が目線、ストーリー性、迫力までを査定する。
プレゼンテーション・受注・設計・施工と完工まで気が抜けない日々を送る。
仕事が進行するにつれ、社内のチェックはさらに厳しくなる。
工期遅延、利益率低下、クレーム処理のまずさは、ご法度である。
チーム力が試され、チームのメンバーのその後(他ジョブへの参加、査定)をも担うことになる。
プロジェクトが終わると、マネージャーは脱力感で強い刺激を求めてしまう。大酒を飲むことになる。
失敗すると、進退伺は必須である。連戦連勝のプロジェクトマネージャーだけが生き残る。
プロジェクトで、マネージャーは全責任を持たされ会社の社長より強い権限を持つことになる。
数々の難関をクリアーしたマネージャーを会社の代表として送り出し、全面的にバックアップする。
今日のタイトルは、「切磋琢磨」です。
エンジニア会社では、毎日積まれる技術書の高さは、20cmにもなる。読んだら、次の人に回す。
ただ読むだけではなく、いつ始まるか分からない新しいジョブへの知識集積の機会となる。
200のコピーの中から、一つだけ選んで、ストロングポイントに仕上げる、自分だけの技術書を作る。
社内営業も欠かせない。
チームメンバーは、一心同体で菅笠の集団(裏方)となる。ジョブごとに、メンバーは変わる。
強い団結力と信頼感が無ければ、足元をすくわれる。内部崩壊したら仕事はできない。
強いリーダーシップが求められる。マネージャーは、人としても尊敬される人柄でなければならない。
プロフェッショナルの集団は、若々しく常に挑戦する人たちで溢れていた。
趣味の造形も深く、玄人はだしの人も多くいた。
こだわりの人たちの集まりのなか、人望を集めるマネージャーは、肩書だけでは務まらない。
駅でも鳩が止まらぬ工夫を見たり、人が歩くのを見て人動線の流れの意味を探る。
酒の席でも、技術論と組織論に暮れる。そんな集団にながいこと浸かると、家庭を顧みなくなる。
見積もり提案書のストロングポイントは、他社のものになり広くひきつがれることになる。
隠すことは何もない。常に全力投球であった。
真似ができないから、あるマネージャーだけが連戦連勝となる。
スポーツの世界、ビジネスの世界は常に相手があり、ぶつかり稽古の繰り返しである。
毎日明け暮れ、いつしか強くなっていく。
ライバルは、社内だけに限らず、社外へ世界へと広がっていく。
あの仕事を仕切ったのは誰だ。やり切った集団は、どこの会社だとなる。
それがどうだ。
末娘の結婚式で、娘を夫役に引き渡す儀式に出ている。
粗相のないよう、気を付けて歩いていました。
馬鹿野郎、こんなところにワイヤー(電線)を這わすんじゃない。
見事にこけてしまいました。
笑うに笑えない娘の晴れ舞台に、ちょこっと役で出ています。
そんな夢が実現する日は、いつのことでしょう。
子になって 切磋琢磨は 子を送り
2021年2月6日
<<あとがき>>
真面目な話ばかりじゃ疲れると、落としを入れました。
ライバルがいてこそ、頑張れる。
切磋琢磨は、遠くになりにけり。
(筆者)