
シワと科学
皮膚は外側から「角質層」「角質細胞」とその細胞間にある「セラミド(脂質)」下部にある「基底層」から成る。
基底層で作られた新しい細胞は皮膚の表面に向かい押し上げられる。
およそ28日周期で入れかえられる。その結果古い細胞は角質となってはがれ落ちる。
表皮の下にある真皮は厚い層で体毛や汗腺、皮脂腺がある部分である。
実は、真皮の中には肌の張りを保つ重要な働きがある。それは弾力性と保湿性である。
真皮にはコラーゲン繊維とエラスチン繊維が網の目のように張りめぐらされている。これらの繊維が肌に弾力性を与えているのである。皮膚の保湿性の役目をはたしているのが、皮脂腺。これから出る皮脂が角質層の水分の蒸発を防いでいる。
皺には表皮性の細かい皺と、真皮性の深い皺がある。前者は縮緬皺とも呼ばれ、年齢に関係なく、肌の乾燥によってできる。通常みずみずしい肌と言うのは表皮の角質層に約30%の水分が含まれている状態をいう。
ところが、日焼けや乾燥した外気または冷暖房の中に長時間いると肌の角質層の水分が蒸発し、表皮に弾力がなくなり、シワになる。このシワは別名「乾燥ジワ」と呼ばれている。この乾燥ジワは皮膚が薄くよく動く部分にできやすい。表情の変化でできた細かい溝が乾燥により、弾力がなくなって、定着してしまうのである。
同じ乾燥ジワでも体内の変化が原因で生じる乾燥ジワがある。それはホルモンの影響下にある皮脂の減少によって起こる角質層の乾燥である。
皮脂腺の働きが年齢と共に低下し、皮脂の分泌が減少してしまう。すると角質層の水分が蒸発しやすくなり、「乾燥ジワ」ができてしまうのである。皮脂の減少が起きる原因は皮脂の分泌を促す男性ホルモン“テストステロン”が減少し、皮脂量が減少してしまうからである。
とくに女性の場合、卵巣から分泌されるテストステロンは30歳前後から急激に減少するため、その頃から乾燥ジワができやすくなる。
そこで男性ホルモン量が多い脂性肌の人は皮膚の保湿効果が高いのでシワになりにくい。
しかし脂性肌は皮脂量が多いため毛穴がつまってしまう場合がある。すると肌の新陳代謝の低下を招いたり、ニキビなどのトラブル肌の原因となってしまうのである。
表皮性のシワを防ぐには…
でき始めに保湿性の高い化粧水・乳液等でケアすれば回復可能。冷暖房のかけ過ぎは肌の乾燥をまねくので、かけ過ぎには注意する。どうしても長時間、冷暖房のなかで長時間作業する時は顔に直接水分をスプレーしたり、また水を入れたコップを近くに置くだけで、肌の乾燥を防ぐことはできるのである。
真皮性のシワのできるメカニズムとは…
それは老化現象。真皮にはコラーゲン繊維とエラスチン繊維が網の目のように張りめぐらされ、細胞間をうめている。これらの繊維が肌に伸縮性や弾力性を与えているのである。若いうちは繊維芽細胞の働きが活発だが、年をとると繊維芽細胞の働きが低下し、繊維が硬くなったり、切れてしまったりする。
繊維の柔軟性や弾力性の変質がおこると、真皮は衰退し、真皮性の深いシワができてしまうのである。これはだれもが逃れることのできない老化現象といえるが、最近若者に真皮性の深いシワが急増中だという。
その第一の原因は紫外線。波長の短い紫外線はエネルギーが大きく化学作用、生理作用をおこしやすい。その紫外線の中で最も波長の長いUV-A波はコラーゲン繊維やエラスチン繊維を曲げたり切ったりしてしまう。
そして皮膚は弾力性を失い、ムラができ、繊維の少ないところがへこんで真皮性の深いシワができるのである。
紫外線は皮膚の細胞自体にも影響を与える。たとえば紫外線の影響で真皮中の毛細血管が拡張し、赤くなる。いわば炎症である。
表皮の基底層で通常より早いサイクルで新しい細胞を生成しようとする。しかし、通常より早いサイクルで生成されると、供給されるべき水分量が追い付かず、さらに角質層の水分をガードしているセラミド(脂質)の量も減少してしまう。つまり紫外線により肌に炎症が起きるとシワができやすくなるのである。こうした紫外線による皮膚の老化を“光老化”という。
深いシワに対しては有効な治療法がない。
炎症をおこした皮膚は温度が上昇し、表皮内の水分も蒸発してしまう。炎症をおこしてしまったら、洗顔や冷やしたタオルにより皮膚表面の温度を下げてやる。洗顔後は保湿力のある化粧水で水分を補給し、乳液やクリームで水分の蒸発を防ぐのが望ましい。
人間の60兆個もの細胞の分裂回数は約50~60回程度といわれている。年をとるほど細胞の分裂回数が少なくなり、そのため細胞の数も減少してしまう。つまり老化現象から逃れることは不可能とされている。
だが、アメリカのテキサス大学ダラス校とのベンチャー企業14社の研究チームが細胞の寿命を延ばす実験に初めて成功したという。
そもそも寿命があるというのは、細胞分裂の際に遺伝子情報を持つDNAがコピーをくり返すたびに少しずつ短くなるからだという。それではなぜコピーするたびに短くなってしまうのであろう。
それはDNAの末端部分であるテロメア(telomere)が短くなってしまうからである。これは靴紐の先端のキャップようなもので、ほぐれてバラバラになったり、他のDNAとからまないような役割をしているという。
このテロメアは分裂をくり返すたびに短くなってしまう。そして一定以上短くなると細胞は分裂しなくなってしまう。この細胞の分裂回数の限界は生物の種類により様々である。
テロメアとは細胞の老化を進めるタイマーの役割をしているといえる。もし仮にテロメアが短くならなければ細胞分裂を半永久的にくり返すことが可能となる。
シャロン社が細胞を長生きさせる実験に成功する以前より「不死化」した細胞の存在は知られていた。それは「生殖細胞」と「ガン細胞」である。それはテロメラーゼという酵素が働いて、分裂をくりかえしてもテロメアが短くならない。先の研究チームはテロメラーゼの遺伝子を人間の細胞の中に入れ、テロメラーゼを発現させることに成功した。
........
この成果を生かし、テロメア治療が確立されれば細胞の老化を止めることができる。心臓病や皮膚の老化など様々な老化に伴う病気に広く応用できる可能性がある。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます