『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1185

2017-12-15 13:08:43 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『ちょっとたずねるが、今日、船の試乗会をやるといっているのは、あなた方かな?』
 『はい、そうですが』
 『私は、マリアの集散所に船の引き合いをした者だが、リドラス担当はまだ来ていないのか』
 『この頃合いです。ダントス所長、リドラス担当ももうこちらへ来ると思いまが。私が船の試乗会の催行責任を担当しているオキテスといいます。よろしくお願いいたします。よろしければ船を見ていただいてもよろしいのですが、案内申しあげますが』
 二人の男性は顔を見合わせる。
 オキテスがスダヌス浜頭に二言三言、言伝てを頼んでいる。
 『スダヌス浜頭、ギアスとゴッカスに伝えてほしいのだが頼めるかな。全員乗艇して出航の準備をするようにと伝えてほしい』
 『おう、解った!』
 オキテスがイリオネスに小声で声をかける。
 『軍団長、マリアにいる間だけですが、軍団長のことを統括と呼びます。よろしいですね』
 『おう、それでいい』
 『統括、客人が見えました。挨拶かた願います』
 『おう!』
 『お客様は、こちらの二方です』
 『今日は、ようこそおいで下さいました。試乗会の開催を統括しているイリオネスです。よろしく願います。集散所所長及びリドラス担当がもうこちらへ来ると思いますが、お待ちになっていただくようでしたら船を見てください。当方のオキテスが案内いたします』
 『所長とリドラス担当を待つこともなかろう。船を見ろというから、見ようではないか』
 『いいでしょう、行きましょう』
 オキテスは、二艇の仕様書きと艇を描いた木板を二人に手渡す。二人は、その木板に見入る。
 『これは?お~お、これはいいな。この木板を見れば船がどんな船かがわかる。このような図面を見て船を理解する。これまでになかったことだな』
 二人の客人は、木板を見て感動を抑えられないでいる。オキテスは客応対の呼吸を読んでいる。イリオネスは集散所からの道に目をやる。
 ダントス所長を先頭にリドラス担当らと二人の浜頭の姿が見えてくる。それとともに客人らしき二人の姿をも目にとらえた。
 『おう、オキテス、ちょっと待て!ダントス所長らが見えた』
 『あ~あ、お客様、ダントス所長らが見えました。少々お待ちいただけますか。皆様方を迎えての挨拶をと思いますので』
 『お~お、そうか。彼ら客の身になってよくやってくれているからな。解った』
 オキテスが彼らに向かって招きの手を振る、リドラス担当が一行から抜けて出て小走りに走ってくる、イリオネスがリドラスを迎える。
 リドラスが二人の客人を見て駆け寄る。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1184

2017-12-15 05:30:02 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスが率いる一行が新艇の試乗会を催行しようとしているクレタ島マリアの海岸の浜は、この時代では、波打ち際より約200メートル、延長約15キロメートルに及ぶ白砂の海岸である。絶え間なくクレタ海の波が打ち寄せる遠浅の海岸である。
 今の時代は、多くのリゾートホテル、瀟洒なリゾートキャビンが立ち並んでいる。
 その海岸の一画に構築されている係留岸壁は、マリアの宮殿、集散所から北の方角にあたる海岸に石積みで構築されている船溜まり岸壁である。
 この時代の船舶は木造船である、マリアの集散所に訪れる船といえば、中型船、漁師連の数人が乗る小船の類である、船の喫水は深くはない船である。
 そのようなわけで造られている船だまり岸壁の海の深さは深くはない。成人男子の背丈くらいである。
 その岸壁は、マリアの集散所から約1キロ足らずである、歩いての所要時間は約12分くらいのところである。
 
 試乗会催行に待機しているイリオネスら四人は私語をひかえて待っている。ギアスにゴッカス、二艇の漕ぎかた連中は、係留している二艇の近傍に待機して試乗会催行開始の時を待っている。
 イリオネスが太陽を仰ぎ見る、頃合いを計る。(今様時間にして午前8時ころ)彼はオキテスに声をかける。
 『おう、オキテス、もう、そろそろだと思うが、エドモン浜頭ら、集散所の連中の姿が目に入らんか?』
 『そうですね。まだ目にしませんな』
 『そうか、目についたら声をかけてくれ』
 船だまりの係留岸壁に船が到着し始める。相次いで船が着く。岸壁がにぎわい始める。
 彼らガ岸壁に係留している新艇、試作戦闘艇を目にする。声高らかに話す声が聞こえてくる。
 『おう、目にしたことのない船が停泊している』
 『ちょっと覗いてみようぜ!』『2本帆柱の船か』
 『リドラス担当が言っていた船だな』『試乗会をやるといっていた船はこれか。帆柱が2本とはな』
 『帆張りしたら、どんなカタチで海の上を走るか見てみたい』『おう、用事を済ませたら乗ってみるか』
 『お前、午後の予定はどうなっている?』『乗ってみる時間が造れるかな?』
 『お前、時間ができたら声をかけてくれ』『おう、心得た』
 『俺はだな、先日、2本帆柱の船を目にした。あの船と同型の船だな。あの船はレテムノンから来たと言っていたな』
 『考えてみれば、船の試しノリなんて初めてだな』『何としても、乗ってみる』
 『お前はどうだ?船の試し乗り、こんな機会はめったにない!何としても乗ってみる』
 『そうだな。後学のためだ。乗せてやると言うのなら、乗ってみなくてはな』
 二人連れの男性がオキテスに話かけてきた。