アンドロマケは、心中、強く強く祈っていた。
『アステアナクス。この子は、幼い乳飲み子だ。もしかして、もしかして、一命を助けてくれるのでは、、、、そうあって欲しい、お願いだから、、、。』
立ちはだかった兵は、アンドロマケに告げた。
『私が、これから言うことは、私の意志ではない。この子は、トロイの城壁の高みから、投げ落とされて、死ななければならない。耐えてください。』
もう助けは何処にもなかった。彼女は、幼子アステアナクスを、その骨も砕けよとばかりに腕の中に強く強く抱きしめた。アンドロマケは、母として、この子にしてやれることは祈りだけであった。彼女は、命長らえることの身の守りにと、ひと振りの短剣をアステアナクスの身にしのばせた。
兵は幼子アステアナクスを連れ去った。
ヘクトルの息子アステアナクスに死を与えることで、トロイ戦争は終結した。
アステアナクスを連れ去った兵の心の中には、優しさがあった。彼はできるだけ、この子が苦痛少なく、命が果てるように心くばりをして、投げ落とす地点を選んで城壁の上に立った。
アステアナクスの、その小さな身体が宙に舞った。沈みゆく太陽が力をふりしぼって、生きる意志を起こせと、その小さな体躯を照らした。
幼子は、城壁の下、雑草が密生している草地に落ちた。幼子の声はなかった。
『死ぬな!死ぬな!死ぬな!生きろ!』 兵は、絶叫で彼を送った。
『アステアナクス。この子は、幼い乳飲み子だ。もしかして、もしかして、一命を助けてくれるのでは、、、、そうあって欲しい、お願いだから、、、。』
立ちはだかった兵は、アンドロマケに告げた。
『私が、これから言うことは、私の意志ではない。この子は、トロイの城壁の高みから、投げ落とされて、死ななければならない。耐えてください。』
もう助けは何処にもなかった。彼女は、幼子アステアナクスを、その骨も砕けよとばかりに腕の中に強く強く抱きしめた。アンドロマケは、母として、この子にしてやれることは祈りだけであった。彼女は、命長らえることの身の守りにと、ひと振りの短剣をアステアナクスの身にしのばせた。
兵は幼子アステアナクスを連れ去った。
ヘクトルの息子アステアナクスに死を与えることで、トロイ戦争は終結した。
アステアナクスを連れ去った兵の心の中には、優しさがあった。彼はできるだけ、この子が苦痛少なく、命が果てるように心くばりをして、投げ落とす地点を選んで城壁の上に立った。
アステアナクスの、その小さな身体が宙に舞った。沈みゆく太陽が力をふりしぼって、生きる意志を起こせと、その小さな体躯を照らした。
幼子は、城壁の下、雑草が密生している草地に落ちた。幼子の声はなかった。
『死ぬな!死ぬな!死ぬな!生きろ!』 兵は、絶叫で彼を送った。
