★星空日記コリメート風goo★

星や旅などの話題を「ひらい」が札幌から発信。2010年開設。2022年7月にteacupからgooへ引越しました。

早見盤で知る恒星時

2015-05-01 07:00:00 | 星座早見盤
 恒星時は、南中している天体の赤経と同じ値です。

 たとえば、オリオン座のベテルギュースの赤経は5時56分なので、ベテルギュースが南中した瞬間の恒星時は5時56分です。(通常、赤経は時分秒の時角という角度の単位で示されます。360度=24時、1度=4分)

 ベテルギュースなどの恒星は、南中から翌日の南中まで約23時間56分で1回転のサイクルで日周運動をしています。
 つまり、恒星の南中時刻は毎日4分ほど早くなるため、恒星時用の時計などを持っていないと、恒星時を知ることは難しいのです。

 しかし、2015年4月23日の記事 【 星座早見盤の活用 】 に書いたように、札幌市青少年科学館で販売されている星座早見盤を使うと、簡単におおまかな恒星時を知ることができます。

 71080132
 南の地平線と書かれた下に細長い窓があり、「南」 と書いた下の線に重なる数値が札幌における恒星時です。なお、この枠内に書かれている数値目盛りは赤経の値です。

 上の例では、2月12日20時の札幌における地方恒星時は5時55分ごろということがわかります。また、2月27日19時でも恒星時は同じ5時55分ごろということがわかります。

 この星座早見盤は札幌市近郊での使用を前提に、東経141.5度・北緯43.0度を基準に作られています。

 お住まいの地域で恒星時を精度よく求めるためには、東経141.5度を基準に、経度補正を行う必要があり、具体例としては西の函館市の場合、東経140.7度なので経度差は-0.8度。恒星時に直すと約3分早くなります。
 東の釧路市は東経144.4度なので経度差は+2.9度。恒星時に直すと約12分遅くなります。

 なお、星座を見つけたいというような簡単な目的であれば、この星座早見盤は北海道全域で使えます。


 ところで、ある天文指導員さんから 「天体の座標として赤経と赤緯だけ知っていれば天体の導入ができるので、難しい恒星時のことを覚えなくてもいいのでは?」 という疑問が寄せられました。

 恒星時を4月18日の天文指導員研修で取り上げた理由は、5月3日以降のブログに順次書いていきます。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

星座早見盤の活用

2015-04-23 07:00:00 | 星座早見盤
 星座早見盤は、星座を探すときに使う初心者向けの道具だと思われがちですが、星座早見盤によっては、上級者向けに様々な仕掛けが施されているものがあります。

 たとえば、札幌市青少年科学館の星座早見盤は、天文薄明・航海薄明・市民薄明の時刻や地方恒星時を求めることができます。


 4月25日から始まる天文指導員研修の場で、新規登録された指導員さんには 「初心者向け」 に星座の見つけ方などの一般的な使い方を私が説明することになりました。

 ベテラン指導員さんには星座の見つけ方だと簡単すぎるので、昼間の星を導入する訓練を兼ね、星座早見盤の応用編としてこんな設問を用意。

 さて、設問です。恒星時・赤道座標・時角の意味を正しく理解していると簡単に答えられる設問です。不確かな理解だと答えることが難しくなります。

 71080005T
 上の画像は科学館屋上に設置されている口径60cm反射望遠鏡の操作卓です。
 ある日の14時30分ちょうどに1等星 「A」 を導入したときの様子を示しています。左上の表示は地方恒星時、右上は日本標準時です。

【問1】 恒星 「A」 を導入したのは何月何日ですか。星座早見盤を使って答えなさい。
 (ヒント)星座早見盤で恒星時を求める方法の逆パターンです。

【問2】 恒星 「A」 の名前を答えなさい。
 (ヒント)画面に表示されている赤経・赤緯の値を星座早見盤と比べてみましょう。

【問3】 恒星 「A」 は南中前、それとも南中後か答えなさい。
 また、この日の恒星 「A」 のおおよその南中時刻を答えなさい。


 少し難しいですかね。今回の研修には使われない可能性が大きいかも。
 なお、この答は4月26日以降に追加記事として投稿する予定です。

【4月26日14時:記事追加】
 4月25日の研修には、上記の文章のまま出題されました。5月9日に答え合わせが行われるということですので、正答は5月10日以降に掲載します。
 なお、その前に解答のためのヒント記事を掲載する予定です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

初心者向け天文講座

2014-09-19 07:00:00 | 星座早見盤
 札幌市清田区の里塚・美しが丘地区センターで初心者向けの天文講座が開催されました。
 講座の初日、9月13日(土)に私が講師を任されたので、星座早見盤の使い方の説明をしてきました。

 31230822
 参加者は僅か6名です。人数が少ない分、コミュニケーションを密にし、懇切丁寧な説明を心がけました。
 星座早見盤を初心者が使う際、「方角の確認」 がおろそかになりがちなことを繰り返し説明し、屋上へ移動。

 31230825
 星座早見盤を実際に使って星を探しているところです。
 
 アンケート用紙に 「星座早見盤の使い方がようやくわかった」 という意見が複数書いてあり、ホッと一安心です。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

薄明時刻を知る(2)

2013-05-07 07:00:00 | 星座早見盤
 5月5日の記事【薄明時刻を知る(1)】からの続きです。

 単に札幌用というだけでなく、特徴のある星座早見盤を作りたかったので、
 ① 天体位置を±2度の精度で読み取り可能
 ② 薄明時刻を±5分の精度で読み取り可能
 ③ 初心者からベテランまで使ってもらえる二面性を備える
 という製作方針を掲げました。

 なお、製作時の詳細は【2011年5月17日の記事】に書かせていただきましたので省略します。

 完成した窓枠盤です。
 31200753T
 方位線と高度線は30度きざみとし、10度ごとに目盛りを打ちました。これで、任意の時刻の天体の方位と高度が±2度ほどの精度で読み取れます。

 また、地平線下6度ごとの薄明枠を設けたことで、市民薄明、航海薄明、天文薄明の時刻が求められるようになりました。時刻の読み取り精度は±5分程度です。
 薄明時刻がわかる星座早見盤を他で見たことがなかったので、実用新案でも申請しておけばよかったかも。私が知らないだけかもしれませんけどね。

 このようにして完成させた星座早見盤は、札幌市青少年科学館が開館した1981年から販売されました。

 私が科学館から他部局へ異動して3~4年後、恐らく1989年前後だと思いますが、改訂版の星座早見盤が作成されたと聞きました。

 31200758
 左:開館当時に私が手がけた旧盤。直径は25cm。確か700円でした。
 右:現在販売中の改訂版。直径は18cm。500円です。

 改訂版が出た理由は、大きさと値段ではないでしょうか。
 読み取り誤差を少なくするため、スケールを1度=0.7mmとしましたが、直径25cmにもなってしまい持ち運びには大きすぎたようです。
 また、組立誤差が大きくなってしまいがちな中心軸のハトメ式を避けて分離差込式にしたため、製作手数が余計にかかることが価格アップの要因になっていたはずです。

 改訂版の製作は止むを得ない選択だったかもしれません。
 しかしながら、旧盤では30度おきに12本あった方位線が改訂版では90度おきの4本になり、高度線は30度線だけになり、途中にあった10度おきの目盛りも省略されてしまったため、天体の位置を精度よく読み取るのは難しくなってしまいました。

 薄明枠が残っているだけでもよしとすべきかもしれませんが、他の様々な工夫もなくなってしまったことで、マニア向けの設定がなくなり初心者向けの星座早見盤になってしまったことは、少し寂しい気がします。

    ~ 星座盤 つわものどもが 夢のあと ~
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

薄明時刻を知る(1)

2013-05-05 07:00:00 | 星座早見盤
 北海道は高緯度帯なので、季節により薄明時刻がかなり変化します。
 たとえば、夏至の天文薄明終了は21時37分ごろ、天文薄明開始は1時36分ごろなので、真っ暗な時間は僅か3時間59分しかありません。

 夏至のころに札幌の繁華街 「すすきの」 で飲んで深夜2時過ぎに帰宅すると空が明るくなっているのがわかります。(笑)
 ちなみに夏至の日の出は3時54分ごろです。

 冬至の天文薄明終了は17時45分ごろ、天文薄明開始は5時20分ごろ、真っ暗な時間は11時間35分もあります。

 40年ほど前の1970年代には天体写真をよく撮影していましたので、撮影当日の薄明時刻や撮影対象となる天体の高度を事前に知っておくことは重要でした。

 星座早見盤を改良すれば概略値であっても簡単に薄明時刻や天体の位置がわかることを承知していましたが、北海道の経緯度で作られた星座早見盤は皆無で、すべて自作するには相当な手間がかかるため、1980年までは小型関数電卓にプログラムを組んで計算していました。

 31200746
 1979年に2万円で購入したカシオFX-502Pプログラム関数電卓です。256ステップという制約の中で天文用プログラムを自作し活用しましたが、天体の位置を視覚的に得ることができる星座早見盤を作ってみたいという気持ちは持ち続けていました。

 2013年現在、優秀な星図ソフトを使っているので、カシオFX-502Pの出番は激減しています。現在は簡単な三角関数を引くのに使っていますが、液晶が薄れてしまって、文字を読むのも一苦労です。

 1980年4月に札幌市青少年科学館建設準備室に異動した私は、1981年10月の開館を控え、星座早見盤の作成を命じられました。
 天体の概略位置や薄明時刻もわかる星座早見盤を作ろうと考えたのは当然の成り行きでした。

 以下、5月7日に掲載予定の【薄明時刻を知る(2)】に続きます。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする