幼い子供にとって「お菓子」とは,宝物のように大事なもの。
お菓子をめぐっての喧嘩は,時に,凄惨を極め大けがの元になることがある。
そして,お菓子をあげる行為は,相手に対する畏敬の念や思いやりを表している場合がある。
KM軍団は,一昨日の大会で予選リーグを突破できずに涙をのんだ。
しかし,各場面において感動的なシーンがあったことは伝えておきたい。
そして,ひとつだけ記録しておきたいことがある。
KM軍団のエースはARI君だ。
身長167cmのはにかみ屋で,人前で声が聞こえるように喋るということは殆どない。
だけど,バッティング,ピッチング技術も群を抜いており,ランニングもいつも1番である。
試合前日のホテルで摂った夕食のおかわりは7杯で,ボクらを震撼させたのは言うまでもない。
そんなARI君は,予選リーグ第1試合で期待通りの好投を見せた。84球の完投で2失点だった。一方,バッティングでは5回の第3打席で,敵チームを突き放す特大スリーランを披露した。
当たった瞬間にホームランと確信したボクは,一気に絶頂してしまって打球の行方を追わなかったが,目撃者によれば,そのホームランボールは,対角線上の隣コートを直撃したらしい。
ボクの前に座って応援していたリョー坊も,その特大アーチに狂喜乱舞。
選手席と応援席を隔てるネットに駆け寄り,「ARI君!,ARI君!」と叫ぶリョー坊。
身長121cmのリョー坊がネット越しにハイタッチのポーズ。
はにかみ屋のARI君は照れ笑いしながらロータッチで応えてくれた。
席に戻ったリョー坊は,ボクに振り向くと興奮した口調で「カルビーのポテトばやらんといかんね」と言った。その言葉を聞いたボクは,ポテトチップスをARI君に買って上げなくちゃいけないのかなと思った。
予選リーグ第2試合。延長10回の激戦の末,KM軍団は惜敗。
出発地である地元のグランドに戻ったのは夜9:30。周囲を木々に囲まれたグランドは闇に包まれていて,荷下ろし作業は,車のヘッドライトが頼り。ライトに照らし出される土ホコリが疲労感そのものに見えた。
荷下ろし作業,試合結果報告,選手挨拶,解散。
一同がそれぞれに挨拶を交わして帰路についた頃,リョー坊が,突然,姿を消した。
闇の中をしばらく探したが,いつの間にかリョー坊はボクの足元に戻っていた。
「おとーさん,ARI君,どこ?」リョー坊。
「ほら,あそこじゃぁ,おとうさんと歩いとるよ」ボク。
言い終わらないうちにリョー坊は駆けだしていた。
ヘッドライトに3人のシルエットが浮かび上がる。
小さい子供がナニか手渡し,それを少年が受け取る。そして大人が,小さい子供の頭を撫でる。
ボクは,途端に目頭が熱くなった。
野球,それはスポーツに過ぎない。
だけど,そこには空気があり,流れがあり,ドラマがある。
少年野球,それは親と子供が作るリアルエンターテーメントなのかもしれない。
しばらく,野球から離れられそうにない。
追記
昨日の練習が終わったあと,フロの湯につかりながらリョー坊にきいた。
ARI君に渡したものはナニだったのかを。
それは,後生大事に隠し持っていたカルビーのポテトチップス。
何か特別なときに食べようと,隠し持っていたものだという。
宿泊用身支度の点検はボクがしていた。
その点検をかい潜って持ち出した秘密のポテトチップス。
それを聞いたボクは,リョー坊の顔にお湯をひっかけてやった。
お菓子をめぐっての喧嘩は,時に,凄惨を極め大けがの元になることがある。
そして,お菓子をあげる行為は,相手に対する畏敬の念や思いやりを表している場合がある。
KM軍団は,一昨日の大会で予選リーグを突破できずに涙をのんだ。
しかし,各場面において感動的なシーンがあったことは伝えておきたい。
そして,ひとつだけ記録しておきたいことがある。
KM軍団のエースはARI君だ。
身長167cmのはにかみ屋で,人前で声が聞こえるように喋るということは殆どない。
だけど,バッティング,ピッチング技術も群を抜いており,ランニングもいつも1番である。
試合前日のホテルで摂った夕食のおかわりは7杯で,ボクらを震撼させたのは言うまでもない。
そんなARI君は,予選リーグ第1試合で期待通りの好投を見せた。84球の完投で2失点だった。一方,バッティングでは5回の第3打席で,敵チームを突き放す特大スリーランを披露した。
当たった瞬間にホームランと確信したボクは,一気に絶頂してしまって打球の行方を追わなかったが,目撃者によれば,そのホームランボールは,対角線上の隣コートを直撃したらしい。
ボクの前に座って応援していたリョー坊も,その特大アーチに狂喜乱舞。
選手席と応援席を隔てるネットに駆け寄り,「ARI君!,ARI君!」と叫ぶリョー坊。
身長121cmのリョー坊がネット越しにハイタッチのポーズ。
はにかみ屋のARI君は照れ笑いしながらロータッチで応えてくれた。
席に戻ったリョー坊は,ボクに振り向くと興奮した口調で「カルビーのポテトばやらんといかんね」と言った。その言葉を聞いたボクは,ポテトチップスをARI君に買って上げなくちゃいけないのかなと思った。
予選リーグ第2試合。延長10回の激戦の末,KM軍団は惜敗。
出発地である地元のグランドに戻ったのは夜9:30。周囲を木々に囲まれたグランドは闇に包まれていて,荷下ろし作業は,車のヘッドライトが頼り。ライトに照らし出される土ホコリが疲労感そのものに見えた。
荷下ろし作業,試合結果報告,選手挨拶,解散。
一同がそれぞれに挨拶を交わして帰路についた頃,リョー坊が,突然,姿を消した。
闇の中をしばらく探したが,いつの間にかリョー坊はボクの足元に戻っていた。
「おとーさん,ARI君,どこ?」リョー坊。
「ほら,あそこじゃぁ,おとうさんと歩いとるよ」ボク。
言い終わらないうちにリョー坊は駆けだしていた。
ヘッドライトに3人のシルエットが浮かび上がる。
小さい子供がナニか手渡し,それを少年が受け取る。そして大人が,小さい子供の頭を撫でる。
ボクは,途端に目頭が熱くなった。
野球,それはスポーツに過ぎない。
だけど,そこには空気があり,流れがあり,ドラマがある。
少年野球,それは親と子供が作るリアルエンターテーメントなのかもしれない。
しばらく,野球から離れられそうにない。
追記
昨日の練習が終わったあと,フロの湯につかりながらリョー坊にきいた。
ARI君に渡したものはナニだったのかを。
それは,後生大事に隠し持っていたカルビーのポテトチップス。
何か特別なときに食べようと,隠し持っていたものだという。
宿泊用身支度の点検はボクがしていた。
その点検をかい潜って持ち出した秘密のポテトチップス。
それを聞いたボクは,リョー坊の顔にお湯をひっかけてやった。