野球には節目の記録がある。
2000本安打、500本本塁打etc。
話しはかわるけど、患者から抜き取った歯の本数を記録している歯医者がいるとすれば、そんな歯医者に診てもらいたい気がしないでもない。嘘。
さっき、『親知らず』を抜いてきた。
抜くというよりは手術に近かった。抜歯後には止血を促すための縫合も処置された。
今、すごく痛い。
問題の『親知らず』は、数年前から口内の一番右奥の歯肉からゆっくり顔を出してきた恥知らずの奥歯のことなんだけど、以前から体の調子が悪くなると歯肉に炎症を起こさせる原因歯であったのだ。
炎症が起こるたびに歯医者に行って、消毒と消炎鎮痛剤および抗生剤を処方してもらうという対処療法で、この何年かその『親知らず』と付き合っていたんだけど、ついに昨年の暮れ、その『親知らず』に虫歯が発見され、抜本的な解決策である抜歯に踏み切ったと、そういうことなのだ。
しかし、レントゲン画像による診断で、その『親知らず』には問題があることが判明したのだ。
その問題とは以下のとおりなんだけど・・・。
①根が深い
②根が太い
③根が曲がっている
④根が顔面神経管に接している
というように、その『親知らず』は非常に性根の悪い輩であったのである。
歯科医師は言った。
「フツーには抜けんでしょうねぇ、小割りしながらになるでしょうねぇ」とレントゲン画像に写っている『親知らず』を砕くような仕草で説明した。
半年が経過した。
とうとう歯肉の炎症が恒常化して、激しい運動をした後もなんだか痛い状態になるまでになった。抜歯を我慢していたのだ、ウソ、逃げていたのである。
歯医者はキライである。いや歯医者が悪いのではない、歯の治療がイヤなのだ。
だって、痛いし、怖いし。
治療台に座ったとき、思わずため息を漏らした。
「緊張してますねぇ~」
背後から歯科医師がウレシソーに声を掛けてきた。
治療台の背もたれがゆっくり倒れていった。
奈落の底に落ちてい行く気持ちだった。
抜歯手術は30分におよんだ。
自力で口を開けることが出来なくなって、左側の奥歯に猿轡みたいなものを咬まされた。
ガギッ、ゴギッ・・・、キュイーーン、・・・・、ジュジュジュジュジュー・・・、ゴギッ・・、ギシギシギシ・・・・、・・ガギッ。
時々、顎がはずれそうなくらいの強力な力が加わるんだけど、「顎がはずれんようにはしマス!」。ボクは恐怖で声を漏らしてしまった「ウッ、ウウゥ」。
「失敗したことはまだ一度もありません!」熱がこもっていた。
「あっ、ブラックジョーク過ぎたかな」自分でツッコムなと言いたかった。
消毒、縫合が終了した。
傍らに、血を吸い込んでピンク色に染まったガーゼの上にバラバラになった血まみれの『親知らず』が置いてあることに気がついた。
助手で女性の若くてカワイイ衛生士が来て、抜歯後の注意事項や内服薬について丁寧に説明してくれた。
ボクは無言でうなずくだけだった。
治療台を離れるとき歯科医師が言った。
「hiratakuwaさんは強いですねぇ~」
今頃感心すんなと言いたかったが、ボクは無言で頭を下げた。
歯科医院を出た。
外は夏の陽気で太陽が眩しかった。
ボクは無言で歩き始めた。
2000本安打、500本本塁打etc。
話しはかわるけど、患者から抜き取った歯の本数を記録している歯医者がいるとすれば、そんな歯医者に診てもらいたい気がしないでもない。嘘。
さっき、『親知らず』を抜いてきた。
抜くというよりは手術に近かった。抜歯後には止血を促すための縫合も処置された。
今、すごく痛い。
問題の『親知らず』は、数年前から口内の一番右奥の歯肉からゆっくり顔を出してきた恥知らずの奥歯のことなんだけど、以前から体の調子が悪くなると歯肉に炎症を起こさせる原因歯であったのだ。
炎症が起こるたびに歯医者に行って、消毒と消炎鎮痛剤および抗生剤を処方してもらうという対処療法で、この何年かその『親知らず』と付き合っていたんだけど、ついに昨年の暮れ、その『親知らず』に虫歯が発見され、抜本的な解決策である抜歯に踏み切ったと、そういうことなのだ。
しかし、レントゲン画像による診断で、その『親知らず』には問題があることが判明したのだ。
その問題とは以下のとおりなんだけど・・・。
①根が深い
②根が太い
③根が曲がっている
④根が顔面神経管に接している
というように、その『親知らず』は非常に性根の悪い輩であったのである。
歯科医師は言った。
「フツーには抜けんでしょうねぇ、小割りしながらになるでしょうねぇ」とレントゲン画像に写っている『親知らず』を砕くような仕草で説明した。
半年が経過した。
とうとう歯肉の炎症が恒常化して、激しい運動をした後もなんだか痛い状態になるまでになった。抜歯を我慢していたのだ、ウソ、逃げていたのである。
歯医者はキライである。いや歯医者が悪いのではない、歯の治療がイヤなのだ。
だって、痛いし、怖いし。
治療台に座ったとき、思わずため息を漏らした。
「緊張してますねぇ~」
背後から歯科医師がウレシソーに声を掛けてきた。
治療台の背もたれがゆっくり倒れていった。
奈落の底に落ちてい行く気持ちだった。
抜歯手術は30分におよんだ。
自力で口を開けることが出来なくなって、左側の奥歯に猿轡みたいなものを咬まされた。
ガギッ、ゴギッ・・・、キュイーーン、・・・・、ジュジュジュジュジュー・・・、ゴギッ・・、ギシギシギシ・・・・、・・ガギッ。
時々、顎がはずれそうなくらいの強力な力が加わるんだけど、「顎がはずれんようにはしマス!」。ボクは恐怖で声を漏らしてしまった「ウッ、ウウゥ」。
「失敗したことはまだ一度もありません!」熱がこもっていた。
「あっ、ブラックジョーク過ぎたかな」自分でツッコムなと言いたかった。
消毒、縫合が終了した。
傍らに、血を吸い込んでピンク色に染まったガーゼの上にバラバラになった血まみれの『親知らず』が置いてあることに気がついた。
助手で女性の若くてカワイイ衛生士が来て、抜歯後の注意事項や内服薬について丁寧に説明してくれた。
ボクは無言でうなずくだけだった。
治療台を離れるとき歯科医師が言った。
「hiratakuwaさんは強いですねぇ~」
今頃感心すんなと言いたかったが、ボクは無言で頭を下げた。
歯科医院を出た。
外は夏の陽気で太陽が眩しかった。
ボクは無言で歩き始めた。