三流読書人

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ドングリ小屋住人 

黒沢作品 「天国と地獄」を観る

2009年02月05日 08時59分53秒 | 芸術
大きな薄型のテレビを買った。
DVDプレーヤーも買った。
NHKでは、黒沢監督作品をずっと放送している。
先日、NHKハイビジョンで「天国と地獄」を放映、録画してゆっくり観た。
37インチはやや雰囲気のつたわる観方であろうか。
なによりCMの入らないのが良い。
いまから四十数年前、発表された当時観た驚愕がよみがえった。

今また見て驚くのはそのリアリティの追求であろうか。
例えば、被疑者を刑事が尾行する。その尾行の臨場感、緊迫感が凄い。
見ているこちらにもどれが尾行者かどれが群集かわからない。
気取られない動き、服装、斯くあらねば実際には犯人を追うことなどできないと思われる。説得力がある。
それに比べ近頃のテレビのドラマなどはあまりにちゃちでお粗末、観るに耐えない。

そしてなにより、犯人役の山崎努、デビュー作である。
ミラーのサングラスをこのときはじめて見た。
鏡の内側から社会を見る。
犯人の心理を象徴しているようであった。
「もう一度殺人を再現させて犯人を死刑に追い込む」。という仲代達也演じる警部のセリフ。
犯罪と人間、犯罪の背景、犯罪との闘いとは、などあらためて考えさせられる。
最後のシーンも衝撃的である。

「七人の侍」「天国と地獄」「生きる」、私はこの三作だと思う。
後年のおどろおどろしいものはごめんだ。