伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

穴の空いたバケツ・新型コロナ

2022年01月07日 | 政治
 ここ数日間の感染確認数の拡大は飛躍的だ。

 12月中は、2桁の確認数まで低下した日が何日かあって、年越しに向けて、徐々に感染確認数が拡大していたが、年を越して以降、感染数が飛躍的に拡大している。

 数字を拾ってみると、
12月27日が161人で、
大晦日が436人だったものが、
1月1日が456人、
  2日が478人、
  3日が672人、
  4日が1,150人、
  5日が2,489人、
  6日が4,302人と、
ここ数日間は倍々で増加している。

 沖縄県では、6日に981人の感染が確認されたという報道を聴いたときには驚いたが、7日の1,400人を超える見通しの速報は驚がくだった。沖縄の1月1日の感染数は52人。ほぼ一週間で、実に27倍にも感染が拡大した。人口比で東京都に当てはめてみると1万3,340人もの感染となる。東京都で、1日の最高感染拡大数は8月13日で5,908人だった。その数字からみても、沖縄県の感染拡大の尋常ならざる事態が分かる。

 沖縄県の感染拡大の一因として、米軍基地の存在が上げられている。

 オミクロン株の流行が世界的に確認されて以降、日本では外国人の入国制限や帰国者に対する規制措置をとってきた。核種報道は、こうした規制が功を奏して、感染能力が高いとされる同株の流行を1ヶ月程抑えることができたとしている。

 しかし、昨年12月22日に大阪府で3人のオミクロン株の市中感染が確認されたことを皮切りに、年越し以降、新型コロナウイルスの感染拡大とオミクロン株の市中感染が各地で確認されるようになってきた。特に、米軍基地を抱える沖縄県と岩国基地を抱える山口県、そしてこれに隣接する広島県は感染爆発の危機感を深めている。

 1日の感染確認数は、大晦日と1月7日を比較すると、沖縄県で32倍、山口県で12倍、岩国市に隣接する広島県では18倍となり、急劇な感染拡大の状況が見える。政府は、これらの県の訴えを受けて、7日には3県に対し、都道府県知事が飲食店の時短幼生などができる「まん延防止措置」を適用させた。

 これらの県では、米軍人を起点とするオミクロン株の感染拡大が指摘されている。米軍は米軍で、新型コロナウイルスへの対応はしているが、これがユルユルなようなのだ。

 その背景に日米安全保障条約第6条に基づく日米地位協定がある。

 安保条約第6条は、米軍による「施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位」について、別個に定める協定や合意で定めるとしている。そして定められた日米地位協定第3条は、「合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる」としている。おそらく、これに基づくものと思うが、米軍には、日本の入国規制は適用されず、日本の新型コロナに対する入国措置とは別個に独自の措置をとっている。

 しかし、米軍の対応は遅かったし緩やかだった。

 米軍は、昨年6月、基地内での警戒レベルを示す公衆保健保護態勢を2番目に高い「チャーリー」から「ブラボー」に1段階引き下げ、9月には新型コロナ検査を免除していたと報道されていることからみると、さらに引きさげて診断の準備などを意味する「アルファ」に引き下げていたのだろう。ブラボーでは「事故隔離」なども措置の対応になるようだが、アルファの段階では、準備段階的な対応に止まっている。軍人の基地外への外出規制も不徹底だったというが、このためなのだろう。

 オミクロン株の南アフリカでの感染拡大と、世界各国での感染確認が伝えられると、日本政府は11月30日から外国人の入国規制を始めた。日本国民などに対しても、10日間の待機期間短縮措置を停止し、14日間待機と行動制限を強化していた。

 ところが、米軍は引き下げたままの措置を継続していたらしい。17日には、米本土からキャンプ・ハンセンに移動してきた海兵隊の部隊に70人の陽性者を確認し、クラスターが発生している。その後、9月の出国時検査の停止などに関係自治体の批判や日本政府の遺憾表明がありながら、警戒レベルの引き上げが発表されたのは年が明けた1月6日のことだった。

 ただし検査は強化されたらしい。「出国72時間前と入国5日以降」に加え、12月30日から入国後24時間以内の検査を実施する3段階の検査を実施することが、外務省に伝えられている(時事)。しかし、日本が入国規制を始めたことからみると、警戒レベルの引き上げが1ヶ月遅れは、あまりにも対応が遅いのではないだろうか。

 そもそも、日本政府が入国規制をした段階で、日本政府も米軍の対応に注意を払うべきだったと思う。米軍関係者が、日本の検疫体制に縛られることなく入国していることは自明の理だったろう。と考えれば、日本の規制と同時に米軍にも入国に関する対応の強化を求めることが当然だと思う。また、米軍は、主権国である日本の要請を受けて必要な措置を執るべきだろう。

 現実には、こうしたことがされていなかった結果が、沖縄県や山口県等での感染激増につながってしまったのだろう。沖縄県知事は、

 時事通信はこう伝えた。
 今月中旬のクラスター発生以来、政府は「在日米軍から『日本の方針に整合的な措置を取っている』と説明を受けている」と繰り返してきた。しかし、23日になると松野博一官房長官は一転、「整合的とは言えないことが明らかになった」と認めざるを得なかった。(12月24日)

 日本の方針は軽視しても差し支えないという、米軍の姿勢が浮彫りになるような話だ。

 こうした背景に、日米の異常な関係が見えてくる。

 日本は、米軍と1960年に日米安保条約を締結した。この条約は、詳細は日米両者による協議で定めるとし、これにもとづいて日米は協議の末に日米地位協定を締結している。

 地位協定の内容は、文言上は、米国が欧州と締結しているものとほぼ同じという。しかし、問題は、この協定が骨抜きにされる日米合意が存在することのようだ。それが、日米地位協定合意議事録に記載されている。

 本校を書くにあたって報道など様々検索してみたが、その中に日米地位協定に関するものがあった。その資料によると、琉球大学への米軍ヘリの墜落事故に関して、米軍が日本を排除して調査・事故機の回収をできたのは、日米地位協定合意議事録に記録される「所在のいかんを問わず合衆国軍隊の財産について、捜索、差押え又は検証を行なう権利を行使しない」との合意によるものだというのだ。

 地位協定は、米軍基地外での米軍事故や犯罪について、「日本の取極に従う」としているが、現実には、合意議事録による合意が優先されているのだ。こんなことを決めていたら、日本が米国に、主権国家としてまともに物が言えないのも良く分る。最初から、主権を放棄し、それを後生大事にしているのだから。

 今回の新型コロナ・オミクロン株流行に関しても同様だろう。
 日本は、昨年11月30日から、外国人の入国を停止し、国民についても、入国の際には、それまでの緩和した10日間の待機の短縮措置をやめ、14日間に戻している。しかし、米軍については、これが適用されなかった。

 米軍人は、その作戦行動に伴い、米国等から直接日本に入国している。日本の入国規制に従う必要がないのだ。
実際、昨年12月17日に明らかになったキャンプ・ハンセンの新型コロナウイルスのクラスター発覚は、これが原因だったのだろう。米軍は、今年9月には、それまでの経過入レベルを緩和し、出国時の検査を省略していたという。検査なしで入国し、入国後に発症、感染を拡大したわけだ。

 日本政府は、米軍が、日本の水際対策と「整合的」としていたようだが、この事態を受けて「整合的とはいえないことが明らかになった」と、その判断の誤りを認めている。その上に立って、やっと「遺憾の意」を伝達したという。

 そもそも、米軍が、一般の入国規制の外で行動していることを政府は知っていたはず。それが、米軍におけるクラスターが明らかになってから、問題を把握することになったのだろう。日本が米軍の行動に対して、ものをいえないことが状態化しているので、確かめることさえしなかったということに真相があるのではないだろうか。

 日本が「遺憾の意」を表明したのはクリスマスの頃。その後、30日から米軍は、入国24時間以内のPCR検査の実施をすることにしたようだ。出国3日前の検査などは、それ以前に開始していたようだが。

 米軍がこれらを受けながら、警戒レベルを事故隔離を含む第3段階「ブラボー」に引き上げたのは、年が明けた1月6日だった。日本が入国規制をかけてから1ヶ月後のことだ。あまりに遅すぎる。沖縄県や山突出して突出して早い時期に感染が拡大したのは、この結果としか考えられない。

 感染症においても、米国に物言えなかった日本。国民の生命・財産を守るためにも、こうした問題を国H区していくことが求められているように思う。


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