伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

北朝鮮ミサイルとされる映像で危険を実感

2023年02月20日 | 平和・戦争
 北朝鮮もこれまで何度もミサイル発射実験を繰り返し、政府はJアラート(全国瞬時警報システム)により、落下等に注意を喚起してきた。私のスマートフォンも何度かJアラートの警告音を鳴らしてきたし、北朝鮮のミサイル発射は報道を通しても繰り返し注意が喚起されてきた。

 しかし、これまで伝えられたのは、ミサイル発射の情報と数時間後にどこそこに落下したものと思われるという情報のみ。あくまで言葉、あるいは文字による情報だけだった。ところが、今回、火球という形だが落下するミサイルの姿がとらえられた。もしこの火球が国土あるい人がいる場所んい落ちたらと考えるとぞっとする。

 18日に発射されたミサイルはICBM(大陸間弾道ミサイル)で、通常より高い射角で発射され高い高度に達する軌道を描くロフテッド軌道により打ち上げられ、最高高度は5,700kmに達し、66分間の飛行で約900km離れた北海道渡島大島の西方約200kmの日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したとみられるという。北朝鮮は「火星15型」と発表している。船や航空機に被害はなかったようだが、もしそこにいたらを思うと穏やかではない。

 EEZは「排他的経済水域とは、沿岸国が、その範囲内において、天然資源の探査・開発などを含めた経済的活動についての主権的権利と、海洋の科学的調査、海洋環境の保護・保全等についての管轄権を有する水域」(東京都総務局)とされる。ちょっと分かりにくい。外務省のホームページにもっとかみ砕いた解説があった。

 排他的経済水域(EEZ:Exclusive Economic Zone)とは、漁業をしたり、石油などの天然資源を掘ったり、科学的な調査を行ったりという活動を、他の国に邪魔されずに自由に行うことができる水域です。海に面している国は、自分の海(領海)の外側に決められた幅を超えない範囲で排他的経済水域を設定することができます。海に面している国は、これらの活動を行うほかは、排他的経済水域を独占めしてはならないことになっています。たとえば、他の国の船が通ったり、飛行機が上空を飛んだり、他の国が海底にパイプラインを作ったりすることを禁止することはできません。
<ahref="https://www.mofa.go.jp/mofaj/kids/q_a/imi.html#:~:text=%E6%8E%92%E4%BB%96%E7%9A%84%E7%B5%8C%E6%B8%88%E6%B0%B4%E5%9F%9F%EF%BC%88EEZ,%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9A%E3%81%AB%E8%87%AA%E7%94%B1%E3%81%AB">キッズ外務省


 この解説からすれば、ミサイルが上空(と言ってもICBMはほぼ宇宙空間まで飛び出しているが)を通過することは問題はないものの、ミサイルを撃ち込むことでEEZ内での天然資源の調査や採取、あるいは漁を妨害する行為を行っており、日本の主権的権利を侵していることになり、なるほど違法行為だ。以前にも同じような地点に落下したミサイルがあったようだが、何と野蛮な行為だろう。

 それだけではない。200kmと言えば、いわき市からほぼ北には一関市、南には川崎市の距離になるが、ロフテッド軌道をとった今回のミサイルは、通常の打ち上げ方をすれば弾頭重量等にもよるが1万4000キロを超える射程になりうるという。その飛翔能力から考えれば200kmという距離の何と短いことか。軌道の計算ミスで国土に到達することはないのだろうか。ましてや過去には、日本列島を飛び越えて太平洋に落下したとみられるミサイルもあった。ミサイルに何らかの瑕疵があれば、途中で飛行能力を失い、誤って日本国内に落下する事故が起こることもありうる。

 その際にどんな被害が生じるか、このミサイル発射実験は示したように思えてならない。



 北朝鮮は、米韓あるいは日米韓の軍事訓練が実施されることで、朝鮮半島で軍事的優位をとられることに反発してミサイル発射実験をしているとする観測が伝えられてる。その背後にあるのは、たぶん・・たぶん・・あくまでも私なりの見方だが、金一派の北朝鮮支配、今の局面でいうなら金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記の支配体制の維持という側面があるのだろう。北朝鮮の軍部は、金独裁政権の威光を背景に利権にあずかっているように見える。そういう意味では金一派が独占する利権を守るためのミサイル発射と考えていいのだろう。

 こうした行為は、国際社会のみならず、北朝鮮の金一派の利権体制に支配される北朝鮮人民にとっても赦されない行為だ。ところが北朝鮮の内部から、この体制を変えようという動きは伝えられない。それだけ専制支配体制が強固なのだろう。国際社会がどれだけ北朝鮮を非難しても、ミサイル発射実験といういわゆる瀬戸際外交が放棄されることはない。それどころか何かにつけミサイル発射を繰返す印象が強くなった。

 どうやってこの金一派の野蛮な行為をやめさせるのか。

 簡単ではないと思う。一部に「目には目を歯には歯を」的に、報復として北朝鮮が発射するたびに北朝鮮近郊に向けてミサイルを打ち返すべきという主張もあるようだ。しかし、日本には他国領土を脅かすような武装は現時点では存在しない。

 自民・公明による政府が提出した新年度予算案には、わが国から他国を攻撃できる巡航ミサイル調達に向けた経費が盛り込まれている。相手国の基地を攻撃する能力を持つことによって抑止力にしようというのだろう。しかし、それでも発射実験が停まらなかったら。

 主張のように撃ち返すという行為を実行するようになったら、より効果的なミサイルの着弾ポイントをより目的達成の効果が達成できそうな、相手国が怯えるような国土の近くを狙うようになりそうだ。この結果、偶発的に戦端を開く危険性が高まるのではないか。「目には目を」の対応は、わが国に戦火をもたらしそうだ。

 だいたい、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意」(日本国憲法前文)し、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄」し、その目的を達成するため「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」(日本国憲法第9条)を持つわが国が、どうやったら他国を直接攻撃できる能力を持つことが出来ると判断できるのだろうか。自民党がかつて言ってきた専守防衛をはるかに超えるとしか見えない。

 一方、北朝鮮と対話する外交ルートの確立を模索することによって問題の解決をはかる必要があるという指摘もある。

 蛮行をやめさせるためにどのような事が必要なのか。かなり難しい問題を含むようにも思う。しかし最低限の問題として、わが国を守るために装備も含めて自衛隊がどうあるべきか、国会でしっかり議論することが必要だろう。自衛隊が違憲という立場の共産党も、急迫不正の事態での自衛隊の活用を主張しているし、社民党は違憲合憲論で自衛隊を認めている。であるならば、わが国の外交はどのようにあるべきか、また、自衛隊がどのような装備を持ってわが国の自衛に当たるのかを本格的に議論できる下地が今の国会にはあるようにも思う。

 結論ありきではなく、この分野での本格的な国会論議を期待したいと思う。


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