伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

三大明神ウインドファーム竣工式

2024年11月27日 | 原発・エネルギー

 三大明神ウインドファームは、いわき市遠野町と三和町・内郷高野町の境にあり、湯の岳(593.6m)から天狗山、三大明神山、二ツ石山、鶴石山と連なる尾根に作られている。具体的には三大明神山から鶴石山までの尾根沿いに最高到達点が143mとなる、国内でも最大級の風車が9基設置されている。

 風車は1基あたり最大4,200kw(1万2,000世帯分)を発電し、東北電力のネットワークを通して供給されていくという。

 竣工式は8号機の基部に設置された大型テント内で行われた。この風車は式典のために停止されていた。他の風車はそれなりの速度でブレード(羽)が回転していた。その付近にはブンブンと音が響いていたので、平穏な環境で式典を実施するためには風車を止めるしかなかったのだろう。

 さて、式典には会社が用意したマイクロバスで出かけた。車中の社員の説明では林道は大型車両の通行が可能なように整備され、環境影響評価に関する説明会では、盛り土が必要な個所に使う土は風車を設置する場所等の整備で発生した残土を利用するとしていたので、そのような方法で盛り土しながら立派な林道を作ったのだろう。

 今日は、要所要所に警備員を配置しながら車を通行させていた。しかし、通常は、林道の入り口を閉鎖しカギをかけておくのだという。たぶん尾根歩きの登山客は通行できるのだろうが、車などで自由に山に入ることはできなくなるということらしい。

 会場に到着後、竣工式が始まった。遠野町大平の熊野神社の神職が斎主を務め、祝詞奏上、玉串奉てんなどの神事が粛々と進められ、発電施設の安全な運転を祈った。

 終了後には、運転中の6号機か風車の全貌を見た。鶴石山に向かっては5号機から1号機、はるかに遠くには、いわき市川前町小白井と川内村の境付近にある万太郎山沿いに設置された滝根小白井ウインドファームの白い風車が小さく見えている。ここの風車は2,000kw旧で23基が設置されている。写真中の〇で記したところに風車がある。

 別の場所では、田人町のユーラス田人ウインドファームが見えていた。尾根沿いからは市内が一望できると実感できて気持ちが良い。この尾根沿いを歩いてみれば、気持ちがいいのだろうなと思う。

6号機付近から見る5号機から1号機方面

6号基から8号基方面を見る

 この後、スパリゾートハワイアンズで直会(なおらい)の席が設けられていたが、私はこちからは欠席し、会場に向かうマイクロバスから離れ、同社のワゴン車で湯の岳のふもとの駐車場に運んでいただいた。

 

振り返る

 さて、同社は豊田商事が出資する資本金約181億円の会社(以前は東京電力と豊田商事で資本金300億円とされていたはずなのだが)で、太陽光発電と風力発電を、国内はもちろんアジア、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、世界15ヶ国に展開している。

 三大明神ウインドファームの計画が遠野町で持ち上がり、環境影響評価方法準備書の関係で入遠野公民館で開かれた住民説明会に参加したのが、私のこのウインドファームとの出会いとなった。

 説明会では、1基あたり3,000kwの発電能力を持つ風車を最大18基建設し、最大出力5万4,000kwの風力発電所とする計画で、説明後の質疑では住民生活への影響など事業の疑問点について質問していた。

2015年7月29日 入遠野地内に風力発電。環境影響評価説明会で不安聞かれる

2016年1月28日 土石流への不安など新たに語られる/遠野地区の風力発電事業で会社説明会

 この後、県境影響評価準備の説明会などが重ねられました。
2016年8月25日 風力発電環境アセス準備報告書説明会
 同社はこうした住民との意見交換を重ねる中で、当初計画1基3,000kwで18基、最大総発電量5万4,000kw、最寄りの住宅が1.3kmを変更し、1基4,200kwで9基、最大総発電量3万4,000kw、最寄りの住宅から2km以上の距離をとる計画に変更されてきた。
 この後、アカシアリニューアブルという企業が、やはり風力発電所計画を立ち上げてきたが、こちらは説明の機会ごとに内容がぶれまくるなど、どこを信用できるか分からない対応に終始し、住民の猛反発をくらい、撤退を余儀なくされた。それに比べて、住民と対話しながらその意見や懸念解消を踏まえて計画変更をしてきたユーラスの三大明神ウインドファームは信用するにたる現実があるように考えた。
 震災後のいわき市は「原子力発電に依存しない社会を目指」して再生可能エネルギー導入推進を復興ビジョンに明記し、また、福島県も再生可能エネルギーの導入に積極的な姿勢を強くした。また、国も再生可能エネルギーの買電価格を引き上げるFIT政策をとったこともあいまり、本市にも太陽光発電や風力発電事業が次々と立ち上がった。
 三大明神ウインドファームの計画が明らかになった頃、私は共産党所属の市議会議員であった。国内の原発廃炉と再生可能エネルギー導入の政策を訴える政党として、一部とはいえ住民が懸念を表明する規模の大きい風力発電所にどのように対応するのかが、課題になった。
 いろいろ悩み考えたが、むやみに反対するという結論はありえず、住民の声に向き合い、その意見を取り入れながら住民の懸念を解決するために取り組んでいる計画、あるいは事業者が進め、かつ問題と考えている点が基本的に解消されていると考えられるものであれば、反対する立場はとらないで良いのではないか。これは当時の市議団の中でも議論し、市内小川町から双葉郡にかけて計画される風力発電所に関しても、計画全部に反対ではなく、地域に影響があると考えられる号機に対してのみ、問題を指摘しながら計画の変更を求めるという姿勢をとることにした。
 私が離党した後、共産党がどのような政策を掲げているかは知らないが、三大明神ウインドファームは私たちがこうした基本的な考えを確立するうえで教科書的な計画とだった。
 こうした経過を持つウインドファームだからこそなおさら、今後の運営に関しても、地域住民の声に寄り添いすすめ、地域住民の信頼を得ながら進めることを強く期待したい。
 特に、入遠野地区などは三大明神山麓などの沢沿いに集落があり、大雨時の土石流災害に強く懸念している方もいる。環境影響評価で基本的な調査はしているとは思うが、ファームの完成・・すなわち開発終了後の実際の沢の流れの変化などにも注意を払い、問題があれば対応することも必要なのではないか。そんなふうに思う。


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