2011年の被害市日本大震災が発災した時、私はいわき市文化センターの3階にいた。おりしも開かれていた重税反対集会に参加していた。
集会が終盤を迎えた時、地鳴りとともに建物が揺れ始めた。しがみついた二人がけの机が右に左に揺られながら揺れが収まる時を持ったが、悠久に続くと思われるほど長い時間揺れ続けた。待ち続けた揺れが収まる瞬間が来た。しかし、すぐに再び揺れ始めまた長い時間の大きな揺れに耐えた。
悠久に思えた揺れの継続時間はわずか3分だったと後で知った。
地震にしては異例の長さだが、日常生活で考えればカップ麺が食べられるまでのわずかな時間にすぎない。しかし、その3分は地域をガラッと変えた。歩道や道路には割れ目ができ、倒壊した建物、崩れた斜面など地域の景観をがらっと変えた。沿岸部に押し寄せた津波は多数の人々の命を奪い、家財を流出させた。
文化センターをから出た後、市議会議会棟の外で、カーナビゲーションのテレビ報道を情報源にしながら、しばらく様子を見守った。
市役所本庁舎前の駐車場にテントがはられていたが、特に動きは見えない。
いつまでもそうしてもいられないので、勿来に帰る同僚議員を車に乗せ勿来経由で自宅のある遠野に帰ることにした。ところが道はどこも渋滞している。6号国道バイパスは数珠つなぎの大渋滞。後で知ったのだが、小名浜で橋の構造物が突き出し、道路に段差ができたために通行不能になっていたことが原因だったようだ。
やむなく鹿島あたりでバイパスから降り、小名浜金成地区の山沿いの道をたどり多摩川団地から野田、泉から渡辺町を通り抜け、旧陸前浜街道を抜けて植田、中岡、錦を通り勿来支所に同僚議員を下ろした。時刻は午後5時。市役所を出発してから3時間が過ぎていた。道中、江栗大橋から見た鮫川に津波の痕跡を見たことを思い出す。
その後、国道289号線を通って沼辺に入り、南台団地を抜けて遠野に向かう道筋を頭に浮かべながらハンドルを操作していた。
沼辺に入ろうとする時、道が渋滞した。先でどうなっているかは分からない。先行車はピクリとも動かない。やむなく車を旋回させ、289号線に戻り、田人を経由して遠野に戻ることにした。田人でどの経路をとったのだったか。おそらく田人の石割り桜の脇を通り、田人支所から別当を通って遠野に帰ったものと思う。
遠野支所に着いたのは午後7時になっていたことを思い出す。支所では久ノ浜で火災が発生し、分遣所からも出動していることなどを聞いたような記憶がある。災害用備蓄品の毛布を久ノ浜に運ぶようやりとりがされていたような記憶がある。
さて、こんなことを思い起こしたのは、分遣所の防災講話で震災に触れながら能登半島地震の報道映像を映写したときだった。車載カメラ撮影した大きく揺れる町並み、路上にまっすぐ立っていられない通行人。その映像があの東日本大震災の記憶とびったりかさなったのだ。
災害はいつやってくるか分からない。それだけに日頃の備えが大切だ。分遣所の講話では、防災マップ遠野地区版に基づくもの。まずは、防災マップを常に取り出せるところに保管しておくことをアドバイスしながら、食品7日分や水3日分(1日1人3ℓ)の備蓄、薬などを含む非常持ち出し品の準備、そして家族で避難場所の確認など防災について話し合っておくよう勧めた。
防災訓練では、避難所の受付カードの記入後に、防災品の備蓄場所となる防災倉庫の場所や備蓄状況などについて説明がされ、防災用品のうち夜の灯りを確保するバルーンライトや室内用防災テント設置の実演を見学した。テントを開くのは簡単なのだが、たたみ方にはこつがあるようで実演する支所担当者も四苦八苦。しかし、このテントはよい。東日本大震災時は段ボールを使って仕切りを作り目隠しとしていたが、天井はないため横を通りかかる人から中は見えてしまい、プライバシー保護がはかれる状況ではなかった。このテントを使えば家族毎のプライバシー保護をはかることができそうだ。
さて、訓練最後のメニューはペット同伴の避難に関する講話だった。昨年から始まった取り組みで、今年は遠野で2カ所目、これまでに3地区で実施してきたという。
ペット同伴避難の前提は飼い主が自身の無事を確保すること。そして、災害対策として、ペットの頭数を抑制し、不妊去勢の実施やペットの身元を示すものをつけておいたり、人や他の動物に慣らすなど日常の飼育の注意点や災害後の避難の仕方などについて、約30分にわたって説明がされた。
我が家にも2頭の中型犬がいる。不妊去勢は済んでおり、ラブラドールの血を引く雌は人懐っこく無駄吠えもしない、また雄のミックス(2ヶ月程の頃に保護した野良犬)は臆病なので、人がたくさんいるところなどでは無駄吠えはしない。実際、人がたくさんいおり、ペットの散歩もされている公園に連れて行っても吠えることはなかった。吠えてうるさくしないという点では大丈夫そうと安心できる。
講話を聞いての新たな気づきはゲージの暮らしに慣れさせるという点だった。ゲージに慣れていると、ところが変わっても慣れた居場所を確保できるので、動物も落ち着いて過ごすことができるようになるという。我が家の犬は、なぜか車に乗るのは大好きらしいのだが、乗せる際にはゲージなど使用せずにこれまではきた。ゲージに暮らすことが慣れにつながるのならば、ゲージを購入して日常的に犬が利用できるようにしておいた方が良さそうだ。
避難所の訓練はおおよそ2時間30分で終了した。
災害がおきない方が良いのだが、いざの際に備えておくことはもちろん大事。こうした訓練の積み上げが、住民の命を守ることにつながることを強く願いたい。
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