伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

国保に関する市議会代表質問をネットで視聴

2021年02月22日 | 市政
 いわき市議会の代表質問は、3人以上の構成員を持つ交渉会派が40分の持ち時間で行う一括質問、一括答弁で行う。当初予算が提案される定例議会のみに設けられた質問時間だ。

 今日は3人が質問していたが、このうち国民健康保険に関する答弁を興味を持って聞いていた。質問者は志帥会の永山宏恵議員だ。

 国保税は、支払い能力に応じた応能割りと加入者が受ける利益に着目した応益割りの2つの部分で構成されている。応能割りは基本的に収入に着目した負担となるが、応益割りは、収入に関係がなく、世帯あるいは世帯構成員の均等な負担が求められる。このため、国保税に占める応益負担の割合が大きくなると、負担能力の小さい低所得世帯程負担が大きくなり、問題が大きくなる。

 国保は、市町村単位が事業者となり長らく制度を運営してきた。2018年度に都道府県単位に統合され、現在は県の一括運営をめざす経過措置がとられ、負担額は県が示す課税標準額を参考に市町村が決めるものの、会計は県単位に一本化されて運営されている。つまり、市町村が課税額を決定し徴収した国保税を一端圏の会計に納め、ここから医療費の保健負担分が市町村を通して支払う仕組みとなっているのだ。

 やがて、市町村は徴収のみを担い、負担額の決定や支払いは県で統一して行う形に移行する計画がされている。

 この移行に関して福島県が昨年、基本的な考え方を示した。以下は福島民報の報道だ。



2029年度、国保料率統一へ 市町村のばらつき平準化 福島県など協議

2020/11/25 08:18_ 福島民報



 県は市町村ごとに異なる国民健康保険(国保)事業の保険料率を二〇二九(令和十一)年度に統一する方向で市町村や県国保運営協議会と具体的な協議に入った。被保険者が支払う保険料の激変を緩和するため二〇二四年度から五年間を移行期間とし、段階的に市町村間の保険料の差を縮める。県が二十四日、県国保運営協議会に保険料率の統一を盛り込んだ運営方針の見直しを諮問した。

 現在の保険料率は、各市町村がそれぞれ管内の医療費を加味した上で、被保険者の世帯ごとの所得や人数に応じて一定の負担を求める割合として設定している。相馬市と檜枝岐村は世帯の資産に応じた金額も加えて保険料を算定している。

 このため、各市町村の財政状況や管内の医療費などによって被保険者に求める保険料にばらつきが生じている。二〇一八(平成三十)年度の実績では、減免措置のある東京電力福島第一原発事故による避難区域を除いた市町村で、一人当たり平均の保険料が最も高かった中島村の十万五千十四円と、最も低かった平田村の六万六千百八十五円で、三万八千八百二十九円の差があった。

 新たな保険料率は全市町村で統一するため、被保険者世帯の所得や人数が同じ場合はどの市町村に居住していても原則として保険料は同じになる。ただ、県内の保険料率が平準化されるため、これまで保険料が低かった一部の市町村の被保険者の負担は増える。

 激変緩和のための移行期間は、各市町村が保険料率を設定する際に加味する医療費分を調整するなどし、保険料の増減が緩やかになるようにする。

 一方、県は全県的な医療費抑制に向けた健康づくり事業の推進、保険料収納率の向上などに努めた市町村に対し、財政支援する仕組みを検討する。市町村の判断により、保険料の負担軽減に活用できるようにする。

 県はパブリックコメント(意見公募)や来年三月に予定する次回運営協議会での答申を踏まえ、新たな運営方針を決定する。

 保険料率の統一について、県内で保険料が低い平田村の担当者は「全国的な動きのため、やむを得ない。国保専用の基金を活用しながら急激な負担増にならないように対応したい」と話している。一方で、保険料の高い中島村の担当者は「統一はありがたい。村内の医療費抑制のため予防事業などに力を入れたい」と語った。

以上引用




県が示した方針によると、当初2025(令和7)年度を目途としていた国保税の統一時期を、あらためて29(令和11)年度とし、24年度から5年間の移行期間を設け、国保税が急激に変化しないように各市町村が調整していくとしている。

 問題は、記事にもあるが「一部の市町村の被保険者の負担は増える」とされる点だ。これは単純な国保税額の問題ではなく、実は、どの所得階層の方々により負担してもらうかという国保税額の傾斜のつけ方も含まれる問題となるのだ。

 以前、市議在職中に国保税の問題を取り上げた際に、この国保統一問題に触れ質問した際に、いわき市執行部から次のような答弁がされた。



伊  藤
 2025年、令和7年度以降に、保険税率を県内統一化することがめざされていますけれども、統一化された場合の課題をどのようにとらえているのか、伺います。

市民協同部長
 現在、県が示す標準保険料率と、本市の国税率には大きな乖離が生じております。

 具体的には、前年の所得額に対して課税する所得割額は本市の方が高く、1世帯につき課税する平等割額も本市の方が高く、一方、1人につき課税する均等割額は本市の方が低い状況にありますことから、本市の税率は低所得者に配慮した設定となっております。

 このため、国保税率の県内統一化に向けては、この乖離を段階的に埋めていく必要があります。

 具体的には、本市の税率について、所得割額と平等割額は引き下げる必要があり、均等割り額については引き上げる必要があります。

 ただし、これにより、所得の高い世帯においては税額は減少しますが、低所得世帯においては、税額は増加することになるため、国保税率の県内統一化に向けては、低所得者に配慮しながら、いかに標準保険料率との乖離を埋めていくかが大きな課題と受け止めております。





  つまり、本市は所得の水準すなわち加入者の支払い能力に応じて負担を拡大する所得割(応能負担)に重きを置いた負担設定をしているものの、県の算定では所得に関係なく等しく負担する均等割あ平等割(応益負担)に重きを置いた税率設定になっているのだ。

 この仕組みをそのままに、県統一の国保税が設定されれば、本市のように応能負担に重きを置いた税額設定をしている自治体では、低所得世帯の負担がより重くなるという問題が生じる。このため、この本市と福島県の負担のあり様の乖離を埋め、応能負担中心の国保税の設定とするよう調整を図っていくことが、大切な取り組みということになる。

 質問した当時から、いわき市として、市の国保の仕組みの良い部分である応能割り中心の国保税設定となるよう県に働きかけるよう求めていた。もちろん、高すぎる国保税引き下げは大切な課題として指摘もしていたのだが。

 今日の代表質問の答弁では、記憶にある限りでは、県の統一に向けた方針には2つの課題があるとして、
1つは、各市町村が基金を活用して国保税の軽減を可能とするなど、県で統一した国保制度となっていないということ、
2つに、いわき市の課題として、県が全県統一の国保税とする目途としていた2024(令和6)年度まで、市は基金を活用して引き上げの抑制を図る考えでいたものの、29(令和11)年度まで延伸となったことから、基金の活用の再検討が必要となった、
と述べていた。

 福島県の国保税の応能割りと応益割りの比率は応益割りに比重を移しており、その比率についても注視が必要としていたようだ。

 この答弁からは、以前、私が求めていた国保税の負担のあり方に関して、市として関心を持っていることは分かったが、その先、積極的に県に働きかけるという点では、市の対応は不十分という印象を受ける。国保に加入する市民の暮らしを守るという観点から、この課題には、市のみならず、党派を超えて働きかけることが大切なのではないだろうか。

 また、県が運営に関する方針として、基金を活用した国保税の軽減を可能としているという点に関しては、それでいいのかの感は強い。たしかに、基金を保有する市町村が、その活用を図ることができることは望ましいことではなるが、これでは根本的な問題は解決しない。

 もともと国保税が、加入者の負担能力を超えて課税されているという現実があることを踏まえれば、国保の負担軽減に都道府県をあげて取り組み、国の考え方を変えさせるということが必要だと思っている。しかし、現行の制度を当てはめて準備を進めるのが都道府県だから、その点で考えても、基金を残せる程財政力がある自治体だけは国保税抑制の恩恵にあずかることができるという仕組みで良いのだろうか・・という疑問が残る。財政力の弱い自治体の住民は、高くても我慢をせよ、ということになる。

 たしかに、現在、市町村が保有する基金は、それぞれの市町村の国保加入者が負担して蓄えられたものだ。その市町村の貴重な財源を、それぞれの自治体の住民に還元するという考え方は分かる。しかし、市町村の基金が枯渇すれば、それぞれの国保加入者は高い国保税をそのまま負担するしか道がなくなるのだ。ここで大切なのは、県内の国保加入者全てが負担抑制の恩恵を受けることができるよう、県として国保税の賦課抑制を図る措置を講ずることなのではないだろうか。それは、現行の国保のあり方そのものを国に問うということも含むことになるのだろう。

 いずれにしても、国保の県統一のありようは、今後とも重要な問題の一つとなるだろう。関心をもって見守っていきたい。


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