伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

どれだけの国民的な説明をしたのか。今月下旬にも処理水放出開始の報道に思う。

2023年08月08日 | 原発・エネルギー
 政府は、たまり続ける東電福島第一原発から発生する汚染水を多核種除去設備(ALPS)で処理した水、いわゆる処理水の処分方法を海洋放出と決定。これに業業者をはじめとした関係者等が反対している。この間、国際原子力機関(IAEA)が、処理水放出の取り組みは「国際的な安全基準に整合的である」とした報告に関して政府と漁業者などが意見交換をした場でも、漁業者は「科学的安全と社会的安心は違う」と反対の考えを翻してはいないようだ。



 政府は、2014年の地下水バイパスでくみ上げた地下水を1ℓ当たり1,500㏃(ベクレル)以下にして放出することにした際、漁業煮と「関係者の同意なしに(処理水の)いかなる処分も行わない」と約束している。この約束が守られるかどうか。「今月下旬にも処理水放出を開始する方向で検討に入った」という情報は、複数の政府関係者の証言が根拠とされるが、政府を信用できるのかどうかが問われている状況にあると考えて良いと思う。

 そもそも漁業者が、政府と「同意なしに」の約束を取り付けた原因は何だったのか。原発事故の発生とその後の度重なる事故や事象で、不利な情報が隠されたように見えるなどで政府や東電の信頼が、地平線以下に低下したことにあると思う。そのように考えれば、政府や東電が、それまでに失った信頼を回復するにたる取り組みを、この間に進めることが必要だったと思う。すなわち、トリチウムをはじめとした放射性物質の化学的な理解を深め、現状の取り組みで問題があるかどうかを冷静に判断できるよう、国民的な知識を深めることにどれだけとりくんだかにあると思う。

 しかし現実は、そのような取り組みにはならなかった。内閣府や経済産業省のホームページを見ても、最近は、韓国等など国際的な取り組みがいくつか見られるものの、国民に対する取り組みはさしたるものが見られない。風評被害の元となり得る国民の理解の深まりや広がりは不十分な取り組みとなっているように見える。ここに大きな問題があると思う。

 おまけに、原発事故の不十分な取り組みをよそにしてエネルギー政策で大きな役割を原発に据えようとしている。こうしたことにも不信を招く原因があるのだろう。

 もし政府が、漁業者等の信頼を得ようとするならば、原発事故の現実や放射性物質の化学的な性質などを全国民に向けて繰り返し説明し、また、国際的な説明にもしっかり取り組むことが何よりも大きなファクターとなるはずだ。政府が過去、ここに十分取り組んでこなかったと感じているからこそ、漁業者等関係者は反対の意思を持ち続けているのだろう。

 現状でもこの取り組みの実施状況は変わっていない。やるべきことは、まずは全国民に向けて原発事故の現状と放射性物質の状況と化学的な性質について、繰り返し、大規模に国民に向けて報せ、国際的な説明にも十分に務めることだろう。こうしてこそ、漁業者等関係者の国への理解が深まっていくのではないだろうか。

 今日の報道では、岸田首相は訪米時の17日に韓国大統領に放出の安全性を改めて説明し、理解を得た上で海洋放出の方針を決定しようとしているという。

 政府の取り組みが、原発事故の被災地やその住民に理解されてこそ、トリチウムを含む処理水の海洋放出の実施による風評被害は大きく抑制することになるだろう。

 まず政府は、必要な説明を全国民を対象に繰り返し、理解を広める。これに徹底してと陸弧とが、漁業者等関係者の理解を得る上で大切なのではないだろうか。

 時期ありきの処理水放出の実施ではなく、まず、漁業者等関係者の理解を得るために必要な取り組みをしっかりと取り組む。こうしたことが必要だと思う。
 くれぐれも、今月下旬の処理水放出ありきで進めないよう、政府には慎重な対応を求めたい。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿