雲のたまてばこ~ゆうすげびとに捧げる詩とひとりごと

窓の雨つぶのような、高原のヒグラシの声のような、青春の日々の大切な箱の中の詩を、ゆうすげびとに捧げます

ドッペルゲンガー

2017年02月13日 | エッセイ



 クリスマス前後に毎年のようにテレビで映画「ホームアローン」が放送される。昨年は「ホームアローン2」の放送があって、主人公の男の子が空港で父親と同じ背格好の男性に着いて行き、両親はじめ家族一行とはぐれてしまう、一人ぼっちになるきっかけが描かれていた。何度も見ているがまた最後まで見てしまった。
 昨年、2016は春に熊本地震があって佳い年とは言えないが、私の家族にとってはささやかな吉事があった。9月にその祝い事があり、一泊二日で名古屋に行った。
 祝い事には私の家族の他に、私の兄弟や姪、従兄弟も参加してくれて、私が航空機や宿泊先の手配、夕食の食堂の予約などのイベントの実行委員長みたいなことをすることになった。
 そもそもほとんど知らない街のことなので、齧る程度のインターネットを利用して、慣れない下調べや予約、決済をした。利用する飛行機を決定し、予約を取ることさえ初めてのことで四苦八苦。やっと予約確認のメールが届き、予約が済んだようだがそれでもおじさんは現物のチケットの無い取引はどうも不安だ。その不安が的中した。
 以前の旅行のように旅行代理店の店先で口頭でのやり取りしていたら有り得ない間違いだが、宿泊するつもりだったホテルと実際に予約されていたホテルが違っていたのだ。そのことに気がついいたのは現地に着いてからだった。
 祝い事のある会場にAホテルがあり便利と聞いた私は、ネットで検索し、会場の近くのAホテル名古屋栄を選び、予約してしまったのだ。そちらも歩けぬほど遠い距離ではなかったが、会場にほとんど隣接する位置に同じAホテルの名古屋錦があったのだ。そしてさらに私は地図で見て名古屋錦を予約したつもりでいたのだ。あれほど近い範囲に同じ系列のホテルがあるなんて思いもしなかった田舎者の失敗である。その失敗は参加者に少し余計に歩かせてしまうという迷惑で済んだが、次なる事件を引き起こしてしまった。
 幹事である私は間違いが起きないように、長男に頼んで行程表を作り、ホテルや会場、駅、レストランの地図やナビを印刷してもっていたのだが、それがすべて間違っていた名古屋錦に宿泊の予定で作成されていたので、土地勘のない街であまり機能せず、当日は同行の長男のスマホのナビに頼るしかなかったのだ。
 事件は昼前に名古屋入し、皆で集まって名古屋名物ひつまぶしを食べ、一度解散して観光に、ショッピングを済ませて、順調に予定をこなし、夕食に予定していた名古屋コーチンの食べられる鳥料理の店に総勢10人で歩いて向かった時に起きた。
集団はいつしかナビをする長男を先頭にしたグループと、家人がいる残り6人のグループに分かれてしまったのだ。先頭グループにいた私も振り返って後方グループを確認しつつ歩き、後方グループにいた家人も先方を行く私の姿を確認しつつ歩いていたそうだ。ところが予約していた居酒屋の近くまで来て、さっきまであった後方グループの姿が見えないことに気がついた。後で分かったが、どこかの交差点で、家人が前を歩く私と同じ背格好の人を私と勘違いしたためにはぐれてしまったようである。
まるで「ホームアローン2」だ。
翌日の夕方には帰りの飛行機に乗るために名古屋小牧空港にいた。早めに着いたのでレストランやお土産売り場をめいめいが冷やかしている時、家人が驚きの表情で手招きするので、私が小走りで近づくと、
「今、あっちにいたあなたが、次の瞬間すぐ横にいたから驚いたよ。見て。あなたにそっくりの人がいる」そう言いながら家人の視線をたどると、我ながら驚く程そっくりの男性が立っていた。偶然にも着ている服などの格好も似通っているのだ。
「昨日、交差点で付いて行ったのもあの人じゃない?」と、私は言いながらこれなら交差点で間違うのも無理ないと納得した。
私と家人は、これは日本で言うとこころのドッペルゲンガーに違いないと頷きあったのだった。

(2017.2.12)

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