<日本弥栄の会より転載>
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青森県のローカル新聞『東奥日報』と『デーリー東北』が9月10日に報じたところによると、耐震性に問題があるとして新渡戸記念館を廃館に追い込んだ十和田市の決定に対して、青森県建築物耐震診断・改修判定委員会(以下、判定委員会)は「(市の耐震診断は)適切に行われた」とする、いわば“お墨付き”を与えたそうです。
記念館の廃館・取り壊しの撤回を求める差し止め訴訟の第一回目の公判は、9月18日(金)に始まりますので、十和田市としても「外堀」を埋めにかかったのでしょう。
さて、これを受けて私の方から、無慈悲な反論をしたいと思います。
新渡戸記念館問題についてよくご存知ない方は、まずこちらの動画を先にご覧頂いた方がよろしいかと思います。
『東奥日報』の同記事によると、十和田市は、記念館のコンクリート外壁の一部を採取して、圧縮強度試験を実施したところ、推定強度が7.6ニュートン/平方mmしかなく、極低強度とされる9.0ニュートンを下回っていたといいます。
これについては、小名木善行先生が上記動画の中でわかりやすく説明されています(2:40頃~)。
だから十和田市は、記念館の建物の耐震性に問題があるのは明白だとして、県の判定委員会に諮るまでもないと判断し、6月30日をもって廃館を決議したというのです。
東日本大震災を含めて3度の大きな地震に見舞われてもヒビ一つ入らなかった建物なのに、なんかおかしいですねえ。
いったいどこの部分のコンクリートを計ったんでしょうか。
しかし廃館を決議するに際し、記念館を管理する新渡戸家側が、市の調査に問題ありとして訴訟の動きを見せたため、市としては同委員会に判定を依頼。8月25日に審査し、9月3日に「耐震診断は適切に行われた」という結果報告を受けたのだそうです。
十和田市としては、「これで正式に、記念館が危険な建物であることが認められた」と胸を張っています。
そして、『廃館決議が出ているにもかかわらず不法に記念館を占拠する新渡戸家とボランティアに手を焼いている』という構図を浸透させるために、地元市民しか読まないようなミニゴミ新聞を使って、新渡戸家を悪者に仕立て上げる世論工作にやっきになっています。
ここまで、よろしいでしょうか?
ここからが、無慈悲な反論です。
新渡戸記念館の耐震診断を実施したのは、どこの会社でしょうか。
それは、十和田市商工会の会頭をつとめる石川正憲氏の設計事務所、㈱石川設計です。
地元ではちょっと知られた設計事務所のようですが、この石川正憲という人物は、新渡戸家の太素、新渡戸傳(つとう)・十次郎らの偉業を顕彰する「太素顕彰会」の会長をもつとめていました。要は、最初は新渡戸記念館を守る側の人間だったのです。
石川氏から最初にもたらされた話は、記念館を新しく建て直すことになったというものでした。館長の新渡戸常憲氏がこの話を聞いたのは、今年の1月29日のことです。
同じ敷地内に新しく立て直すという話ですから、悪い話ではありませんでした。
ところが、翌2月17日に、話はとんでもない方向に急展開します。
十和田市役所の北館総務部長らが記念館を訪れ、4月からの休館と管理指定の打ち切りを、一方的に通告してきたのです。
その時には石川正憲氏も、「記念館の所蔵品を市に寄贈すれば、新たな保存施設の建設を考える」と、市と歩調を合わせて新渡戸家に迫るようになっていました。
何があったか知りませんが、ここで石川氏はいわば「完全に寝返った」ことになります。
そして、記念館の所蔵品をどこに移すのか、何も決まっていないし、何の話し合いももたれないまま、廃館が決議されてしまいました。
市は行政の力をもってどんどんと新渡戸家を追い詰め、“お宝”を寄贈するしか道はないように、新渡戸家に迫ります。
しかし、新渡戸家側がなかなか折れず、訴訟も辞さないという構えを見せたため、しぶしぶ(?)県の判定委員会に「自分たちの下した耐震診断結果による判定は、適正であるかどうか」の審査を求めたというわけです。
しかし、おかしなことに、当方で入手した資料によると、㈱石川設計が行った耐震診断報告書の「診断実施者」には、「内海重光」という人物の名が見られるということです。
この人は、㈱石川設計の職員ではなく、青森市にある㈱ファンビーム建築事務所の代表者で管理建築士です。
そして何とこの人物は、判定委員会の主要メンバーとして名を連ねているのです。
管理建築士というのは、建築士法により、「他の設計事務所の所属建築士となることはできない」と定められているのでは?
つまり、診断実施者の欄に「㈱ファンビーム建築事務所 内海重光」と記載せず、たんに「内海重光」と名前だけを記載したということは、あたかも「石川設計の建築士」であることを装って“名義貸し”を行ったことになりますが、そうだとするなら、これは完全に違法行為です。
仮に合法だとしても、判定委員会の主要メンバーが、診断実施者として記念館の耐震診断を行って「危険だ」という結論を出しているんですから、市から審査を求められたら「適正である」と言うに決まってるんじゃないですか?
さらに、決定的なのはこれです。
㈱石川設計が行った耐震診断の調査は、何を根拠に行なったかというと、それは「一般財団法人 日本建築防災協会」が定める耐震診断基準にしたがったということです。
しかしそこには、「13.5ニュートン/平方mmを下回る低強度の場合は、再度コアを採取して試験を行うこと」とあるそうではないですか。
その場合、コアの採取場所は、「施工が健全に行われ、強度が正しく判断できる主要部材(耐震壁・梁など)」とされています。そう書いてあるでしょう?
だから、耐震性に問題ありとする低強度の数値が出たというのなら、青森県外の、たとえば東京都の信頼のおける第三者機関にでも、再診断を依頼すればいいのです。
その結果、もし耐震基準を下回る数値が出たというのなら、すみやかに所蔵品の移管場所を取り決めた上で、建て直すのか、取り壊して移転するのか、今後の方針を話し合う協議に入ればいいのではないでしょうか。
私はそう思うんですが・・・何かマズいことでもあるんでしょうか?
ああそうか、この話が持ち上がった時から、市は一貫して「所蔵品(お宝)を寄贈しろ」と迫っているんでした。その話は無くなってしまいますけどね。
さあ、このことを市は裁判でどう説明するんでしょうか。
下手をすると、十和田市と、耐震診断を行った設計事務所と、県の判定委員会が、みんなグルだったことがバレてしまいますよ。
(というか、もうバレちゃったかな?)
第一回目の公判が、とっても楽しみです。
何しろ、明らかになるのはこれだけじゃないんですから。
私が小耳にはさんでいるところでは、㈱石川設計の診断報告書には、数十ヵ所にものぼる疑問点と、デタラメな数値が確認されたそうです。
この辺のところは、新渡戸家の弁護士さんが裁判で出していくことでしょう。
問題は、想像以上に根深いものがあります。
上のことが事実だとすると、新渡戸記念館だけでなく、県全体のあらゆる建築物が、適正な基準をクリアした上で建てられているのか、それこそ、耐震性に問題などはないか、再度確認する必要性が出て来ると思います。
記念館の廃館とかなんとか、そんなこと言ってる場合じゃないですよ。
ひょっとするとこれ、青森県の建築業界全体を巻き込んだ、姉歯事件以来最大のスキャンダルに発展するかもしれません。
そんな事態になれば、国会で取り上げられ、関係者が証人喚問に呼ばれ、与野党からの激しい追及に合うことは必至ですよ。
青森県は、様々な遺跡や史跡が多く、自然も豊かで、私は大好きなところです。
一度、そんな美しい青森県に巣食う利権勢力の腐りきった膿を、洗いざらい出した方がいいでしょうね。
十和田市の職員の皆さん、市議会議員の皆さん、当ホームページをご覧になっていたら、どうか、自分たちの郷土に汚点を残さないようにしてください。
沈み行く泥船に、わざわざ乗り込むことはありません。
内部告発したいことがあれば、小会にお寄せ頂いても構いません。
匿名性は、絶対に守りますよ。
われわれには卑しくも、武士道精神というものがありますから。