藤沢周平の短編小説 「龍を見た男」の内容です。
---何かがいる。 と思ったのは、おりくの後から歩きだそうとしたときである。
源四郎は立ちどまった。 自分の顔色が変わるのがわかった。
池の、青みどろに隠れた深みの底のあたりに、何かがいた。
源四郎の二十数年にわたる漁師としての勘が、その気配を掴んでいる。
それは魚ではなかった。 もっと巨大なものの気配だった。
三島由紀夫の小説 「鏡子の家」で画家の夏雄が
霊能士の中橋房江から聞いた龍の話です。
霊能士の中橋房江から聞いた龍の話です。
私は嘗って、湖底に竜をみたことがあるが、厳密に云って、湖ではない。
茨城県の大宝沼という沼がある。 その沼のほとりに立っていたときに、
茨城県の大宝沼という沼がある。 その沼のほとりに立っていたときに、
水の濁りが俄かに動き出し、沼の底まで澄んだように見えたとき、
蟠踞している竜の顔を見たのである。 竜が長大な尾を持って、大蛇のような形をしているというのは訛伝だと房江は言った。
姿はむしろ巨大な牛に似ていて、鈍重な胴体をしている。
これには小は、四、五尺のものから、
大は数十丈、数百丈に4及ぶものまである。
頭部だけは絵によく見られる竜とそっくりで、苔を生じた角を生やし、
青光りのする爛々たる眼を持ち、牙の上部には長い髭が棚引いている。
・・・私はまだ小体のやつしか見たことがないが、
いつか棟梁格の巨大なものを 見たいと思っている。
蟠踞している竜の顔を見たのである。 竜が長大な尾を持って、大蛇のような形をしているというのは訛伝だと房江は言った。
姿はむしろ巨大な牛に似ていて、鈍重な胴体をしている。
これには小は、四、五尺のものから、
大は数十丈、数百丈に4及ぶものまである。
頭部だけは絵によく見られる竜とそっくりで、苔を生じた角を生やし、
青光りのする爛々たる眼を持ち、牙の上部には長い髭が棚引いている。
・・・私はまだ小体のやつしか見たことがないが、
いつか棟梁格の巨大なものを 見たいと思っている。
さぬき市志度の「玉取り伝説」の故事です。
香川県 さぬき市 昔、当時の中国の名称である唐の第3代皇帝、高宗に嫁いだ藤原鎌足の娘である白光は、亡き父の供養物として数々の宝物を、兄である藤原不比等に届けようとしました。 ところが、宝物を積んだ船が志度の浦にさしかかったとたん嵐が起こり、唐に二つとない宝物「面向不背の玉」が龍神に奪われてしまいます。 藤原不比等は玉を取り戻そうと、公家の高官である身分を隠し、淡海と言う名で志度の浦へやってきました。 そこで漁師の娘であった海女と恋に落ち、房前という男の子を授かり、親子三人で幸せに暮らしていました。 ある日、不比等が自分の素姓と志度の浦へやって来た目的を海女に明かすと、愛する人のために玉を取り戻そうと、海女は死を覚悟で龍神のいる竜宮へ潜っていったのです。 海上で待っていた不比等は、海女の合図で命綱をたぐってみると、目の前に現れたのは、今にも事切れそうな海女の姿でした。海女は間もなく不比等に抱かれたまま死んでしまいましたが、玉は海女の命に代えて取り返すことができたのです。 不比等は亡くなった海女を志度寺に葬ると、残された房前を都に連れて帰っていきました。 藤原一族として高官に出世した不比等と海女の子である房前は、母の最期を知った後に志度寺を訪れ、千基の石塔を建立し、小堂を大きな堂塔に立て替え、さらに法華八識を納めて亡き母の菩提を弔いました。 この伝説により志度の浦は玉浦と呼ばれています。また、面向不背の玉は奈良の興福寺に納められましたが、現在は琵琶湖の島、竹生島の宝厳寺にあります。ただ、なぜ宝厳寺にあるかは今も謎のままです。