放菴日記抄(ブログ)

これまでの放菴特集・日記抄から「日記」を独立。
流動的な日常のあれこれを書き綴ります。

工賃の問題

2007年02月22日 13時55分02秒 | Weblog
 んー、神戸の社会福祉法人の報道を聞くと、背筋が寒くなります.
 不明瞭なこと、議論をさらに尽くさなければならないこと、みんなごっちゃにして「クロ」と断じて報道されている気がしてならない.そして、そのことが、障害者の作業所や施設に対する悪い偏見に間違いなく繋がってゆく。とっても危険な報道です。

 まず「補助金1400万円」の性格について情報が足りない。どういう目的の補助金なのか?
 措置費、支援費、給付費の類いであれば、職員の給与、施設整備に使って問題はないはず(というか、これが施設の運営費なんです!)。利用者へ支給することもできますが、ほんらい生産事業とは区別され、工賃として支給されることはないです。生産事業を援助する目的の補助金(ってこんな莫大な金額になるかなぁ?)であれば・・・、行政の指示どおり使っていなければマズいですけど。

 次に労働基準監督署が指摘する「賃金」ではなく「工賃」である場合の条件。
 これはもっともっと議論を尽くさなければならない部分。

 まず①「利益を利用者へ100%還元」。これは当たり前です!「授産施設会計基準」が制定される前から行政監査で指導されてきた部分。ここは遵守して初めて授産施設になるのです。(ただし、新しい会計基準では、全額工賃に廻さず「工賃資金」や「備品整備資金」として積み立ててもよいとされていますが)
 
 つぎに②「利用者の出欠、作業時間、作業量等の自由であること」。・・・ホントは拘束時間を設けないと出来ない仕事ってあるんですけどね、ウチの法人は利用者の自由です。利用者は1日6時間作業訓練に従事。週30時間です。休憩あり。水飲みも自由。そんなにキツくないと思いますけど。
 利用者の出席を促す活動ってのもやっていかないと施設の存亡の危機が待っているんですけどね(運営費が利用者の出席日数に準拠するもので)。

 ③「指揮監督を行わないこと」。
 ってまあ百歩譲ってこれも理解できます。技術的指導だけはしてよいという条件でね。でもそれと「出席による工賃の差をつけない」ことは別にしてほしかったな。ウチは「出席した人で収益を山分け」っていうの原則だから、出席率で工賃に差はついちゃうかな、結果的に。

 ④「利用者の技能に応じて工賃の差別が設けられていないこと」
 これはサイアクですね。技能を修得した者を評価しなくてどこに「働く喜び」とやらがあるんですか? 技術指導のイミさえないじゃないですか。

 出席や技能の応じた工賃の差がなくなれば、サボる利用者が続出します。サボったモン勝ちでしょう、それって。だって同額のお金が支給されるんだもの。毎日サボって工賃の支給日だけニヤニヤして現れる利用者を想像してごらんなさい。それを是認するならば授産施設はたんなる甘やかしの温床です。それ以前に事業を維持できません。

 報道で槍玉に上がっている法人さんの肩を持つわけではなりませんが、理事長さんの当惑も想像できます。こんなんじゃやってられません。

 授産施設(法律上はもはや名称は消滅しています)はただでさえ中途半端な存在です。
 能力に応じた生産活動を行い、儲けたわずかなお金をみんな(職員以外の利用者)で分け合っているだけなのです。最低賃金法どころの話ではありません。ウチの法人では時給に換算すれば100円にも満たないでしょう。それでも利用者が体の動かせる部位を最大限活用して一つ一つ作ったものを売っている。一つ売れればわあ、と喜び、今度はもう少し多めに作ろうねと話し合う。まるで賽銭箱のような売上を施設に持ちよって、みんなで分けあっているのです。「賃金」と解釈してよいだけの売上があるなら喜んで労働者名簿も賃金台帳も作成します。そこにいけなくてもがいているこの業種を、行政やマスコミはどれだけ理解できているのでしょうか?

 
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