不良品

おいらは左利き。
家族にも、親戚縁者のなかにもおいらの知る限り左利きは居らず、おいらは変わり者だった。
いや、少なくともおいらはそう思っていた。
親父も、お袋も、左手で絵を描き、スプーンを持つおいらを苦々しく見ていたように思う。

事件は幼稚園に通うようになった時に起こる。

おいらは、ハサミが上手に使えなくて、からかわれるようになっていた。
今時のモノほど精度のよくない…かみ合わせがやや開き気味になる当時の紙切りハサミ…。



基本的にハサミというのは右利きの人が使うようにできていて、右手の親指と人差し指を使って『握る』動作をする時に歯の噛み合わせが閉じるように出来ている。
これを左利きの人が使うと、右手の時とは逆に、『握る』動作をする時に歯の噛み合わせがやや開き気味になるのだ。
その辺りの理屈が幼稚園児だったおいらに判るわけもなく、もちろん他の幼稚園児にも判るわけもなく…。

ただおいらには、ハサミが使えない…という事実があって。
『幼稚園に行きたくない…。』あれほど出たいと思っていた島の外、あれほど乗りたいと思っていた幼稚園バスという船…。

幼稚園児という小さな世界…助けを求めるのは両親で…。
でも、おいらの気持ちと違う方向に物事は動く。

『左手はダメだ。何をするにも…。』
親父もお袋もそう思ったんだろう。
かくして両親はおいらを何とか『矯正』しようとする。

うまく使えない右手に鉛筆を持たされ、ひらがなを覚えさせようとする。
『文字は右手の方が書きやすいように出来ているんだよ…』
文字を覚え始める幼稚園の頃の話だ…初めて書くひらがなは、右手で何とかしようとする。

でも…お箸は使えなくても食べる動作は左手でしているわけで…。
右手で食べるように仕向けられたのは、苦痛で苦痛で…。

結局、最後は『ムリなんだ』と気がついてくれて『完全に矯正すること』は両親が折れるのだが、
左利き用のハサミを用意してくれた両親が『これ、高いんだからねっ！』…と言ったことは、今も忘れない。

左利きは不良品。
頭の中にそう刻まれた幼稚園の日々。

文字を書く事だけは右手。
唯一、おいらが右手で出来ること。

『普通』のことが『普通』にできる。
これがおいらと、おいらの当時の『小さな世界』をつなぐ希望だった。

団地島

幼い頃に過ごした『団地』は、昔懐かしい『絵に書いたような』５階建て。



自動車乗入れ禁止のその団地は、外周約 1.3 km の『島』だった。
クルマとの接触事故が考えられない島の中は子どもの格好の遊び場だった。

幼稚園に入園するまでの『おやくそく』は、島から出ないこと。
『入ってはいけません』と書かれた芝生は、子どもの夢の大地。
管理の人が回ってくると、一目散に逃げた。

おいらには３歳年上の姉貴がいて、この団地に来た 1973 年当時、姉貴は６歳、おいらは３歳。
幼稚園バスに乗って団地から『登園』する姉貴は、おいらが守らされている『おやくそく』と違っていて、ずいぶんオトナに見えた。
『おいらもあのバスに乗って、この団地から出るんだ。』幼いころ、そんなことを考えていた気がする。

団地の外周は、対向２車線のなんでもない道路。
交通量も決して多くなく、信号もなかった。
でもおいらには、それはそれは大きな『断崖絶壁』だった。

『幼稚園バス』という船に乗って、島から出ていくこと。

島の向こうに何があるのか…。
早く幼稚園に行きたかった。

最初の記憶

1970 年生まれのおいら…。
今は新潟市江南区になった当時の中蒲原郡亀田町出身の親父、お祖父さんの都合で新潟県内を引越して歩き、新潟市内で青春時代を過ごしたお袋。
新潟にゆかりの両親だが、おいらは親父の仕事の都合で埼玉県南埼玉郡蓮田町（今は蓮田市）の生まれ。
三歳の頃、親父が『団地』を購入して埼玉県大宮市（今はさいたま市）に移る。

おいらの記憶に『蓮田時代』はほとんどない。
唯一の記憶は…夕暮れ時、親父の自転車の後ろに乗って、街の電気屋さんに『パントースター』を買いに行ったこと。

ごっつい実用自転車で、後ろの荷台にちょこんと乗せられ…でも、荷台が大きすぎて上手く跨げなくて。
東北本線（今は通称・宇都宮線と言う）の踏切を渡る。
『ゴツゴト』と音をたてて線路を乗り越えて…自転車が大きく揺れて…渡りきったら『カン！カン！…』と警報機が鳴って、赤い警告灯が点滅して…。
暗くなって、赤い遮断機の警告灯が尚さら迫力を増したのだろう…必死で親父にしがみついていたような気がする。

買ったのは青いパントースター…『チン！』と音がして食パンが跳ね上がる、昔懐かしいアレだ。

パントースターが珍しくて覚えていたんのではない。
多分…あの踏切の記憶。

電子音ではない鐘の音と、赤い警告灯と、暗がりと…。

親父はそんなことは忘れてしまっていて、
お袋もトースターが有ったことしか覚えていないが…。

あの強烈なインパクトが、おいらの人生の記憶の原点。

見ちまった…

何かね…。
いろいろ思い出すことがあってさ。

山崎まさよし - One more time, One more chance

お下がり

良い天気の日曜日…実家のお袋から『おはぎ作るから食べに来て〜』と、前からメールをもらっていたので家族揃って実家に行く。

最近の中学校は二学期制なのね…期末試験も終わり『ホッと一息』の娘らも、珍しく一緒。
両親も一緒におはぎを食べる…なんて、何年ぶりのことだろう…。

お腹も落ち着き一息ついている時に、長女がおいらを手招きする。
なんだろ…と思って二階についていってみると、コンセントから外されて暫く使用されている形跡のない古いミニコンポが一台。
見覚えのある機種だ… KENWOOD ALLORA XE5 。
おいらの姉貴が独身の頃に使っていたヤツ…。



結婚するときに実家に置き去りにして、親父が使っていたんだ。
その後、親父は新しいのを買って、コイツはお役御免…何時の事だったかな…もうずいぶん前だ。
えっと…姉貴も結婚して１５年経ったから、もう２０年近く前の機械だ。

アンテナの折れた安物のＣＤラジカセで凌いでいた長女…古くたって良い音がするモノはあるって、おいらのスピーカーの件でよくわかっている。

『動くかなぁ…。』
クルマからＣＤを持ってきて、動作確認をする。
ＣＤ…音飛びもなく読込み快調。
スピーカー…変なノイズもなくクリア。多少こもった感じもするが、このクラスのスピーカーでこんな年代モノなら程度が良い方だと思う。
アンプやグライコの動作・表示ともに異常なし…イケル。

『おいらのじゃぁ、ないし…。おじいちゃんに聞いてみたら？』長女に親父の許可をもらうように促す。
『使ってないし…いいよ。』長女、二つ返事でミニコンポをゲット。

大喜びで『お下がり』をクルマに積み込む。
偶に家族の用事に付き合うと、良いことがあるもんだ。

快晴の日曜日。
家族で過ごすのも悪くない。

三連休

この間見たときは『一気』に工事が進んだ気がしたものだから、また工事が進んでいる気がして見に行ってみた…。



あれ？
あまり進んでいない…。

前回のがこれ…



前回見に行ったのが９月１９日…今朝が９月２５日…『６日も経っているのにさ…』と思ったら…
２０日(火)-大雨
２１日(水)-大雨
２２日(木)-雨
２３日(金)-秋分の日
２４日(土)-三連休中日
２５日(日)-三連休終日

進む訳ないわな…。
平日は台風絡みの大雨だったし、
金曜日も土曜日も仕事で、すっかり世の中の動きとズレているんだった。

進捗を気にしすぎると、進み具合が遅く感じるのは『気のせい』ではない気がする。

冷え込み

台風が通り過ぎたというのに天気が良くならない彼岸の中日…最低気温は 14.5 ℃と、一気に下がる。

流石にこのくらいの気温になると、涼しいを通り越して肌寒い。

ついこの前まで寄り付きもしなかった飼猫のニャー…。
今年も…膝に乗る季節が来たね。

彼岸まで

各地に大きな被害を出した台風１５号は、北海道の東海上へ抜けていった。
台風が来るまで高めに推移すていた気温もこの大雨で一気に下がり、ここ数日は最高気温も２０℃前後と急に涼しい。

暑さ寒さも彼岸まで…
ことわざ通りの気候の変化に季節の移り変わりを感じる。

今日、秋分の日。
来春の春分の日は３月２０日。

秋冬が始まり、春夏へバトンタッチするこの半年はイロイロな意味でイロイロある。
長女の高校受験に新居。

子どもらと花札に興じ、手札の中の１２ヶ月に想いを巡らす。

あと半年…。
たった半年、されど半年。

この彼岸。
彼の彼岸。

マリオ！

クラブニンテンドーのポイント有効期限が近づいています…。
そんなメールが届く…。

決して『ゲームっ子』ってほどのゲーム好きではないものの、最近の子どもが『嗜む』程度のゲームはするウチの子どもら…それなりにポイントは貯まる。
捨ててしまうのはモッタイナイので、選べる範囲で景品に交換。

選んだ景品は…



オリジナル花札。
とりあえず、五光(笑)。

花札と言えば任天堂の『大統領』や『福天狗』…。
この手の商品は任天堂の十八番。

光札・種札と桐のカス札の文字がゲームキャラに置き換えられたもの。
置き換えられた１６枚以外は定番品と同じもの…ネットで調べたら『大統領』レベルの本格仕様なのだそうだ。

で、子どもと勝負するわけ。

『そんなもの仕込んでどうするの…』と、言われそうだが(笑)。

衝撃

順調にコトが運んでいた新居の計画…突然『足元をすくわれる』事態が発生。

銀行さんから連絡…
予定した融資の計画が実行できない…と。

融資は『団体信用生命保険』付きのものを選んだはずだった。
順調に事前審査を通過して…事前で OK なら本審査も問題なし…と言われて疑わなかった。
でも…その告知で引っかかる。

原因は、完治したはずの『あれ』。
他に病歴を記入していないから、間違いない。

ネットで調べてみると、うつ病の経験がある人は、その病歴記載でほぼ 100% 保険加入できないようだ。

おいらの『病気との戦い』は、おいらの勝利で終わったはずなのに…
まだ終われない…悔しい。

融資はペーパー上では OK だから、団信の無い商品に移るか、その辺の打ち合わせをしたい…と銀行の担当者が申し訳なさそうに言う。

他行に移ることも念頭に入れて、また考え直しだ…。