■清掃魔/ポール・クリーヴ 2018.10.29=2
「訳者あとがき」から。
本書は、ニュージーランド出身の新進スリラー作家で、「次世代スティーヴン・キング」との呼び声も高い、俊英、ポール・クリーヴの処女作 The Cleaner の邦訳です。
二十四歳の時、本書 The Cleaner と Killing Hour の二作を同時に執筆開始します。翌年は職も辞めて執筆に専念しますが、当然ながら収入は激減。それでも、家を売って原稿を書き続けたと言いますから、大変な執念と精神力です。
描写があまりにもリアルなだけに、読者としてはついつい主人公と作者を重ね合わせて見てしまいがちですが、実際のクリーヴは温厚な紳士ですから、どうかご安心下さい。
本書には、主人公ジョーの台詞として、とてもここには書けないような酷い差別用語・差別表現が頻出します。
翻訳に当たって、ポリティカル・コレクトネス、いわゆるPCの観点から見れば、そのような用語は、いくら原文に書いてあるからと言っても、自主規制してしまうのが良識ある大人の出版社の態度なのかもしれません。とはいえ、こと本書に限って言えば、そのような過剰な配慮が本書の魅力を大きく損なうことになることを恐れ、敢えて自主規制することはしませんでした。..........ここに用いられた差別用語の数々は、ジョーという人間のおぞましさを表現するために不可欠な要素と言うべきでしょう。
『清掃魔』 は、差別用語・差別表現満載。今時、このような差別用語・差別表現が許されるのかと“びっくり”。
読んでいて違和感や不快な思いもしました。
この不快感から途中で投げ出す方もあるのではないでしょうか。
それでも、面白い小説であることは間違いありません。
ぼくは、先に 『殺人鬼ジョー』 を読んだので、この小説のなかで展開されていた過去の挿話の内容を「清掃魔」で知ることが出来き、面白かったです。
「清掃魔」 の雰囲気を少し。
人が死ぬのはもちろんだけど、その人が忘れられるのも悲しいことだ。
誰も彼も、自分には悪いことなんて何一つ起こらないってフリをするくらいしかない。
女は金星から来たとか言うけど、サリーみたいな人間はいったいどっから来たんだ?
彼女はにっこりした、男の武器庫にある最大の武器は、ルックスとカネを除けば、ユーモアだ。
俺は自分のために殺してるんだ。実にシンプル。俺は女が好きで、女の嫌がることをしてやるのが好きなんだ。
今夜、俺はこいつを人生の苦悩から解放してやろうと思っている。
それが俺の人間愛さ。
まさにその通り。カネってやつは、恐怖だの約束だの真実だの、淫売の人生に関わる全てのクソみたいなしがらみをやすやすと超越する。
『 清掃魔/ポール・クリーヴ/松田和也訳/柏書房』
「訳者あとがき」から。
本書は、ニュージーランド出身の新進スリラー作家で、「次世代スティーヴン・キング」との呼び声も高い、俊英、ポール・クリーヴの処女作 The Cleaner の邦訳です。
二十四歳の時、本書 The Cleaner と Killing Hour の二作を同時に執筆開始します。翌年は職も辞めて執筆に専念しますが、当然ながら収入は激減。それでも、家を売って原稿を書き続けたと言いますから、大変な執念と精神力です。
描写があまりにもリアルなだけに、読者としてはついつい主人公と作者を重ね合わせて見てしまいがちですが、実際のクリーヴは温厚な紳士ですから、どうかご安心下さい。
本書には、主人公ジョーの台詞として、とてもここには書けないような酷い差別用語・差別表現が頻出します。
翻訳に当たって、ポリティカル・コレクトネス、いわゆるPCの観点から見れば、そのような用語は、いくら原文に書いてあるからと言っても、自主規制してしまうのが良識ある大人の出版社の態度なのかもしれません。とはいえ、こと本書に限って言えば、そのような過剰な配慮が本書の魅力を大きく損なうことになることを恐れ、敢えて自主規制することはしませんでした。..........ここに用いられた差別用語の数々は、ジョーという人間のおぞましさを表現するために不可欠な要素と言うべきでしょう。
『清掃魔』 は、差別用語・差別表現満載。今時、このような差別用語・差別表現が許されるのかと“びっくり”。
読んでいて違和感や不快な思いもしました。
この不快感から途中で投げ出す方もあるのではないでしょうか。
それでも、面白い小説であることは間違いありません。
ぼくは、先に 『殺人鬼ジョー』 を読んだので、この小説のなかで展開されていた過去の挿話の内容を「清掃魔」で知ることが出来き、面白かったです。
「清掃魔」 の雰囲気を少し。
人が死ぬのはもちろんだけど、その人が忘れられるのも悲しいことだ。
誰も彼も、自分には悪いことなんて何一つ起こらないってフリをするくらいしかない。
女は金星から来たとか言うけど、サリーみたいな人間はいったいどっから来たんだ?
彼女はにっこりした、男の武器庫にある最大の武器は、ルックスとカネを除けば、ユーモアだ。
俺は自分のために殺してるんだ。実にシンプル。俺は女が好きで、女の嫌がることをしてやるのが好きなんだ。
今夜、俺はこいつを人生の苦悩から解放してやろうと思っている。
それが俺の人間愛さ。
まさにその通り。カネってやつは、恐怖だの約束だの真実だの、淫売の人生に関わる全てのクソみたいなしがらみをやすやすと超越する。
『 清掃魔/ポール・クリーヴ/松田和也訳/柏書房』