遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

DNAはめっちゃしぶとい

2013-04-19 22:59:08 | BIONEWS
篠原先生には、昔免疫タグ付きのRAD53遺伝子をもらったので、丁寧に書かねばなるまい。あの時は助かったのです。おかげさまで1報、論文出せたのです。ありがたや。

阪大、DNA/ゲノムの安定化に関わる新しいタンパク質複合体「PCCS」を同定(マイナビニュース) - goo ニュース
さて、切れたDNAの直し方なんだが、二重らせんがほどけてしまって、ぶらぶらしている単鎖にはRad51タンパク質(大腸菌ではrecAね)が巻き付いて・・・そこで新しい分子複合体が見つかった。いよっ、彰はん♪
Psy3、Csm2、Shu1、Shu2の四分子の複合体。名付けてPCSS。従来の研究から、4つタンパク質それぞれは減数分裂期の組換えやDNA複製時に生じるDNA損傷の修復に関わることは判明している・・・って、俺は知らんかったぞ。(笑) コアとなるPsy3-Csm2の2量体のX線構造解析を行ったところ、構造がRad51と類似しており、Psy3-Csm2の2量体がRad51フィラメント形成を促進、安定化すると。しかも、またPsy3-Csm2の2量体はRad51フィラメントの一方の末端に結合し、その形成を促進するが、この結合様式は家族性乳がん責任タンパク質であるBrca2の反対になるんだと。おもしろいねぇ。

NIGなど、画期的な染色体工学で「セントロメア」の謎の一部を解明(マイナビニュース) - goo ニュース
もうちょい遺伝的なお話。染色体には動源体を形成される起点となるセントロメアがあることで、複製された2本の姉妹染色分体が二つの新しい細胞に別れる。それがなくなると染色体の分配がおかしくなって細胞はどんどん死んでく・・・でも、稀に死なない細胞が出てくる。なんとまあ、『ネオセントロメア』なるものを形成して染色体を分配してしまうんだな。この仕組みを調べるために、無理矢理セントロメアを除去して、それでも生きてくる細胞をセレクションした。そしたら、ネオセントロメアを形成した細胞がどっちゃり採れてきた。DNA配列上には特異的な配列はないんだが、立派なヘテロクロマチン構造を形成していた。セントロメアを構成するタンパク質CENP-Aはセントロメアだけでなく、微量に染色体のあちこちに分布していて、それがたまたまセントロメアの『種』になってネオセントロメアを形成したらしい。こういうエピジェネティカルな染色体機能が、グダグダに組み換わった染色体をもつがん細胞を生き延びさせることになってるのかもしれません。

本日のお酒:KIRIN LAGER + 立山 本醸造
コメント
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