もう、番組としては、約3週間前になるが、NHKで21時から放送されていた「55歳からのハローライフ」(1時間ものの5話連続で1話完結のオムニバスの第1話「キャンピングカー」が忘れられないので、それを見た感想を書き留めておきたい。
あらすじは、
定年より少し前に退職することにしたある男(主人公、リリー・フランキー)が、その早期退職で得られるお金で「キャンピングカー」を購入して、奥さん(戸田恵子)と一緒に日本中をきままにドライブしたいと考えることから始まる。
その思いを家族に話したところ、賛成してくれたのは息子くらいで、奥さんには「まだ、これから子供の結婚とかで費用がかかるのでできるだけ出費は控えて」とか「自分は今、絵画で少しは知られるようになって、その関係の友達との時間を大切にしたいので、ドライブに行く時間がなかなかとれない」とか言われる。
娘に至っては、「お金のことが心配なら、まだ、働けるんだし再就職したら」と言われてしまう。
そういう状況で、せっかく手付金まで払ったキャンピングカーの購入を保留して、再就職先を当たるのだが、今まですご腕の営業マンだと自負してきた自分を雇ってくれるところが、全く見つからない。
「今までいた家具会社の営業課長」というような肩書きがあるからこそ、つきあってくれていた相手も「その肩書き」がなくなると、「ただの人」ということを思い知らされる。
そうして、結局、再就職をあきらめ、念願の「キャンピングカー」もあきらめるのだが、その男(主人公)の気持ちが切なくてよくわかる。
一生懸命働いてきて、こうしたいという思いで早期退職しても、それを受け入れてくれる環境がない。
番組の最後の方で、主人公が好きなコーヒーを入れて、絵を描いている所へ奥さんの所(芝生)へ届けてあげるのだが、そうすることでしか、主人公と奥さんの心の接点がなくなってしまっているのだ。
自分の思いを受け止めてくれると安易に考えていた主人公にとって、「相手の時間を配慮することの大切さ」を初めて思い知ることになったわけである。
翻って、自分が退職したとき、自分の夢に「キャンピングカー」はないが、「それに替わる夢」のために家族を巻き込むことはやめようと思う。合意のうえならすばらしいが。
できるだけ、自立した(昔言われた「濡れ落ち葉」にならないように)状態で、できる夢を実行したい!
PS
本日付けの「日刊ゲンダイ」7ページに「キャンピングカー保有者の世帯収入」が載っているが、年収1000万円以上は18%ほどで、年収600万円以下の人が44%ほど所有している。全国の保有台数は85200台。新車は1年に5000台近く売れている。
ということは、主人公のようにあきらめなかった人がかなりいるということだ。そういう人は、たぶん、奥さんも賛成なのだろう。