ここ五十年近い歳月に多大な影響を与えた物にカオス現象がある。この発見には電子計算機の力が大きく寄与している。それまでカオス(混沌)という言葉は無い訳では無かったが自然科学の中では一般的ではなかった。それまでの自然現象では法則に基づいた式を書き下せば現象は係数が多いどんな複雑な式であっても答えは一意的つまり線形的に決定されるという信仰があった。自然の物事は線形的な過程をしており、どんな複雑なものでも難しいことは有っても、基本的にはその答えは導出できるとする信念である。だが歴史を振り返って見るとそうでもない事実は有った。他にも探せばそのような問題は多々あったに相違ないが、ここでは比較的だれでもご存じの、天体力学の場合に例を挙げてみよう。惑星でも遊星でもそれが互いの重力で運動する場合その挙動を焦点が二つの関係ならば比較的一意的に解ける。だがそれが三体の重力焦点で構成される場合は簡単に解き得ないことが指摘された。手計算でこの三体問題をポアンカレは解こうと試みたが果たし得なかった。解が一定に収束せず発散するか或いは爆発してしまう。これはカオスが発見される前の約70~80年ほど前の出来事である。つまりこの問題は人間の手計算では中々解けないという事になる。後年になり分かった事は、全部ではないにしてもいろんなところで解けない問題や行き詰まる問題は、カオス(非線形)が絡んでいることが判明した。此れが発見されたのは電子計算機の発達に因る所がおおい。現在では計算機がといた問題の解は三次元の不思議な挙動を示している。或る意味ではこの解の描く軌跡は美しく神秘的だ。
確率論に関しても、その起源はサイコロやカードを使った賭け事の問題であった。サイコロの賭けは順列組み合わせでその出現率と確率度を出せるが、此れは謂わば古典的な確率論であり長らく曖昧の世界として認識されていた。確率というものが、競馬や株などの賭け事にも応用され自然現象の予測にも影響力を持つ分野が、俄然の進歩を示したのは、測度論を基軸に積分論を論じたルベーグと、確率の基礎を公理的に整備し確率空間を導入したコルモゴロフの影響がおおきい。現代の確率論はこのルベーグ積分と公理論的確率空間から構成されている。確率は自然の分岐現象としても把握されてやがては位相空間とも結びつき、いずれは全く新しい確率論の進展があると予想します。現在のところマイナスの確率と謂う物は想定されていないが、此れが必要となる現象は必ずあるはずで、マイナスの時間とも絡んでいるかも知れません。自然がもたらす現象は、どんなに難しい問題でも必ず理解でき解き明かすことが出来る。というオプテマテックな楽観的な思いがあります。自然の現象は原理的な物に下がってゆくと必ず力学的な構成になっている。それは古典力学でも量子力学でも同じで原理原則が成り立つ。自然の仕組みは恣意的と言う物ではない。現段階では実験できない猛烈なエネルギーレベルでの議論がなされている。実験できない以上その推理が成り立つかは分からない。
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