今日はさわやかな一日になりそうです。今週は久しぶりにヨットもゴルフもありません。車の車検と併せて先週の日曜に電柱でこすってしまった車の修理中なので足がありません。保険で代車が出ると言うことなので今日取りに行ってきます。不思議なもので車の故障に合わせたように我が家のプリンタも故障です。一般に何か事故があると続けて起こる傾向があります。これを 1/f ゆらぎ現象と巷では言います。だから何かあった時はその機会に身の回りの物をチェックすることが備えと言うことかもしれません。
さて日本の原風景も3回目になりました。今日は西の島に残されたある一族の話です。この島に残された人たちは独特の言葉を持っていましたが文字はありません。従って代々言葉でしか伝えられないことを頭に入れておくとその後の展開がわかりやすいかもしれません。伝言ゲームの最後を想像するとよいかもしれませんね。
西の島の東側に比較的緑の深い山に囲まれた海辺がありました。生き残った人達の数家族がそれぞれ別々に生計をたてていました。その中にサクと呼ばれた老人の家族がおりました。サクは幸運なことにこの年になるまで数々の危機を逃れてきた唯一の男でした。彼が他の者と違った点と言えば記憶力が抜群によかったことと自然を視る観察力が違っていました。あるナツの暑い太陽が照りつける青空の夕方、南の水平線に黒い雲が見えました。他の者が山の上から、いつもと変わらない夕焼けを西の空に見て明日もいい天気だと言っているのにサクは生暖かい風が北から吹いてくることを感じ、すぐに海辺の住居に戻ると山の西側の岩場の洞窟に行くと言い出した。家族はこのおいぼれの言うことをまた始まったと相手にしませんでした。前の年にも同じようなことがあってこの家族は西の洞窟まで行ったことがあったのでした。その時は確かにどんよりした小雨まじりの天気ではありましたが、北西の風が強く吹いた程度でした。西側の洞窟にはかなり強い風でサクの家族は身動きできなかったのですが、東の海辺ではさほど大した風も吹かず、むしろそのままいた方がよかったのです。そんなことがあって俄かには信じられなかったのです。息子夫婦と一番上の孫の男の子は海辺のすみかに残りました。二人の孫娘たちは大好きなじっちゃんのサクに付いて行くと言って母親の引止めも振り払い下の孫娘のナオはサクの背中に乗り、上の孫娘のナギは手をつないで暗くなりかけた山道を登っていったのでした。西の洞窟に着いた時は、もうとっぷりと日が暮れ、いつしか月あかりもまったくなくなっていました。山を登る頃は東の水平線からまん丸のお月さんが見えていたのに、今は真っ黒な雲であたりを見回すこともできないほどになっていました。真っ暗な洞窟の中でとにかく孫娘たちを洞の奥に座らせると入口に石を積み、人が這って通れるほどにしあとは枯れ木と濡れたぶなの葉の付いた枝で入口をふさぎました。外ではもう強い雨が降り出し風も東よりに振れ徐々に強くなり出していました。サクが汗と雨でびっしょりになってナギとナオのそばに戻って来ると二人の娘は震えながら寄り添っていました。小さいナオの方は涙をいっぱいためていっしょについてきたのをくやんでいました。姉のナギはじっちゃんの昔話が大好きだったのでまた話を聞かせてくれるようせがみました。ナオを真ん中にしてサクは腰掛けるといつものように静かに昔話を語り出しました。サクの昔話は自分の若い頃の経験を踏まえた生きていく上での教訓に富んだ話だったのでこの孫娘たちのその後の運命を大きく変えて行くことになるのであるが、そんなことは知らずにサクの話を無心に聞いていたのです。この嵐になった晩も寒さをこらえながら夢中で聞いていました。時折姉のナギはどうしてとかそれは何とか聞いていつものように目を輝かせていました。一方妹のナオの方も最初は姉の真似をしながら聞いていましたが、そのうちこの晩の疲れからスースーと寝息をたて始めてました。
この夜はいつになく風の音は地響きを起こすほど強く、時折ゴーッと言う大きな音を立てながら岩の崩れる音を何回も聞いたのでした。その度にサクは話をやめて耳を澄ましていました。夜が明けて雨は弱まったものの時折の岩の崩れる地響きと強い風は相変わらず続いていました。ただ風はいつしか西よりの風になっていました。サクとナギは一睡もせずに夜を明かし体はだるさを感じているのに目だけは異常にさえていました。夜が明けてだいぶたった頃にナオも目を覚まして母親恋しさに泣いていました。サクは地響きの音を聞きながら海辺に残った息子夫婦や孫息子を心配していました。
今日はこれまでです。実はこのあと海辺の村では大変な事態になっていたのですがこの続きは次回にします。明日はふねの文化検定試験なのでこれから少し勉強します。今年から始まったこの試験は何のメリットもありませんが好きな船の話なのでどれぐらいできるか楽しみです。合格したら報告しますが失敗したら次の春まで沈黙します。
それではまた。