またしても「人工地震説」なぜデマは“増殖”するか 全世界「選挙イヤー」に忍び寄る本質的な危険(東洋経済オンライン) - Yahoo!ニュース

またしても「人工地震説」なぜデマは“増殖”するか 全世界「選挙イヤー」に忍び寄る本質的な危険
1/27(土) 9:41配信
東洋経済オンライン
能登半島地震で飛び交ったSNS上のデマの数々。メディアリテラシー教育などだけでは防ぎきれない「本質」を知っておくことが重要です(写真:AP/アフロ)
元日を襲った能登半島地震。倒壊した家屋に取り残された人々の救助や、被災した人々の避難生活、そうした中での盗難事件など、有事の日々が続いている。
■SNSで飛び交った偽情報とデマ
一方SNS上では、被災者をかたった偽情報が拡散された。混乱に便乗したインプレッション(投稿の表示数)稼ぎが目的と思われる。岸田文雄首相が「悪質な虚偽情報は許されるものではない」「公共機関の情報を確認するなど虚偽情報に惑わされないように」と呼びかける事態にも発展した。
今回の地震が「人工地震」だと吹聴するとんでもないデマも飛び交った。すでに気象庁をはじめとする公的機関により否定されているが、一昨年の3月16日に福島県沖で発生した震度6強の地震(関東地方では東京都を中心に200万軒を超える停電などが起こった)でも同様のデマが流布した。その際、筆者は同種の陰謀論が関東大震災の時代から存在することを指摘した(人工地震を信じる人々が映す「陰謀論」深刻な浸透)。
能登半島地震の翌日である1月2日には、お隣・韓国で韓国最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表が、刃物を持った60代の男性に首を刺される事件が発生。朝鮮日報は、「フェイスブックやインスタグラムなどには『割り箸に血のりを付けて演出したものだ』『李在明代表を刺したのは刃物ではなくスマホケース』などの投稿が多数掲載された」として、偽情報の拡散が深刻化している様子を伝えた(*1)。
昨年2023年は、対話型AI(人工知能)の「ChatGPT」の登場もあり、日本では「生成AI元年」と呼ばれる年となったが、今年はより巧妙なディープフェイクが随所で猛威を振るうことが懸念されている。フェイクニュースなどの偽情報が真に恐ろしいのは、仮に短時間であっても混乱を引き起こすことができ、仕掛ける側の目的が達せられてしまう点にある。
今回の地震では、本当に助けを求めている被災者に紛れて、インプレッション稼ぎのX(旧Twitter)アカウントが過去の津波動画などを用いて虚偽の投稿を行い、広告収益を狙ったことなどと推測されている。これらの投稿による直接的な被害は今回ほとんどなかったものの、つねにそれで済むとは限らない。海外からのSNSを介した影響工作の場合、その国の国民感情を推し量る好機になっているかもしれない。
1/27(土) 9:41配信
東洋経済オンライン
能登半島地震で飛び交ったSNS上のデマの数々。メディアリテラシー教育などだけでは防ぎきれない「本質」を知っておくことが重要です(写真:AP/アフロ)
元日を襲った能登半島地震。倒壊した家屋に取り残された人々の救助や、被災した人々の避難生活、そうした中での盗難事件など、有事の日々が続いている。
■SNSで飛び交った偽情報とデマ
一方SNS上では、被災者をかたった偽情報が拡散された。混乱に便乗したインプレッション(投稿の表示数)稼ぎが目的と思われる。岸田文雄首相が「悪質な虚偽情報は許されるものではない」「公共機関の情報を確認するなど虚偽情報に惑わされないように」と呼びかける事態にも発展した。
今回の地震が「人工地震」だと吹聴するとんでもないデマも飛び交った。すでに気象庁をはじめとする公的機関により否定されているが、一昨年の3月16日に福島県沖で発生した震度6強の地震(関東地方では東京都を中心に200万軒を超える停電などが起こった)でも同様のデマが流布した。その際、筆者は同種の陰謀論が関東大震災の時代から存在することを指摘した(人工地震を信じる人々が映す「陰謀論」深刻な浸透)。
能登半島地震の翌日である1月2日には、お隣・韓国で韓国最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表が、刃物を持った60代の男性に首を刺される事件が発生。朝鮮日報は、「フェイスブックやインスタグラムなどには『割り箸に血のりを付けて演出したものだ』『李在明代表を刺したのは刃物ではなくスマホケース』などの投稿が多数掲載された」として、偽情報の拡散が深刻化している様子を伝えた(*1)。
昨年2023年は、対話型AI(人工知能)の「ChatGPT」の登場もあり、日本では「生成AI元年」と呼ばれる年となったが、今年はより巧妙なディープフェイクが随所で猛威を振るうことが懸念されている。フェイクニュースなどの偽情報が真に恐ろしいのは、仮に短時間であっても混乱を引き起こすことができ、仕掛ける側の目的が達せられてしまう点にある。
今回の地震では、本当に助けを求めている被災者に紛れて、インプレッション稼ぎのX(旧Twitter)アカウントが過去の津波動画などを用いて虚偽の投稿を行い、広告収益を狙ったことなどと推測されている。これらの投稿による直接的な被害は今回ほとんどなかったものの、つねにそれで済むとは限らない。海外からのSNSを介した影響工作の場合、その国の国民感情を推し量る好機になっているかもしれない。
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今年は11月のアメリカ大統領選や3月のロシア大統領選が控えるなど、世界50カ国以上で国政選挙や地方選挙が実施される「選挙イヤー」になるといわれている。また、依然としてイスラエルとハマスの衝突、ロシアによるウクライナ侵攻、中国の影響工作が危惧される台湾情勢など、さまざまな懸念材料が現在も進行中で予断を許さない。
■ネットによる国内外の影響工作は増大する
自然災害関連では、火山の噴火や地震、または台風や水害、山火事等々といった地球温暖化が原因と思われる大規模災害の続発が危ぶまれている。ネットによる国内外の影響工作はますます増大し、フェイクニュースを含む偽情報は、自尊心を奪われ、不当な地位に置かれていると感じている人々の心の隙間にいとも簡単に入り込むことだろう。
だが、国や公的機関による統制を期待するのは現実的ではない。なぜなら、究極的には国や公的機関、ひいては主要メディアにとって触れられたくない情報はつねに存在しているからだ。暴露された事実を過小評価する情報で覆い尽くしたり、偽情報として規制する可能性はいずれの国においても起こりうる。結局のところ、民意を蔑ろにされていると考える国民が多数を占める状況を変えていくことが根本治療となる。
当然ながら既存の政治体制に対する信頼性や、国内の人々の生活が改善され結束が強くなれば、相対的に偽情報の影響力は低下するからである。けれども、わが国の政権与党の裏金騒動や今回の地震対応への批判の高まりを見ると、爆発寸前の状態にある不満や不安が沈静化するようには到底思えない。そこに訪れるであろう、妖しい魅力を振りまく未来のフェイク爆弾は、発信する者と規制する者の双方の欲望を照らし出すと同時に、わたしたちのいびつな心象をも赤裸々に映し出すのである。
(*1)「血のりで演出」「スマホケースで刺した」 フェイクニュースが氾濫する共に民主・李在明代表襲撃事件/2024年1月5日/朝鮮日報
(*2)【検証】「ゼレンスキー氏がヨット購入」 親ロ派の流言はいかに米軍事支援に影響したか/2023年12月27日/BBC
■ネットによる国内外の影響工作は増大する
自然災害関連では、火山の噴火や地震、または台風や水害、山火事等々といった地球温暖化が原因と思われる大規模災害の続発が危ぶまれている。ネットによる国内外の影響工作はますます増大し、フェイクニュースを含む偽情報は、自尊心を奪われ、不当な地位に置かれていると感じている人々の心の隙間にいとも簡単に入り込むことだろう。
だが、国や公的機関による統制を期待するのは現実的ではない。なぜなら、究極的には国や公的機関、ひいては主要メディアにとって触れられたくない情報はつねに存在しているからだ。暴露された事実を過小評価する情報で覆い尽くしたり、偽情報として規制する可能性はいずれの国においても起こりうる。結局のところ、民意を蔑ろにされていると考える国民が多数を占める状況を変えていくことが根本治療となる。
当然ながら既存の政治体制に対する信頼性や、国内の人々の生活が改善され結束が強くなれば、相対的に偽情報の影響力は低下するからである。けれども、わが国の政権与党の裏金騒動や今回の地震対応への批判の高まりを見ると、爆発寸前の状態にある不満や不安が沈静化するようには到底思えない。そこに訪れるであろう、妖しい魅力を振りまく未来のフェイク爆弾は、発信する者と規制する者の双方の欲望を照らし出すと同時に、わたしたちのいびつな心象をも赤裸々に映し出すのである。
(*1)「血のりで演出」「スマホケースで刺した」 フェイクニュースが氾濫する共に民主・李在明代表襲撃事件/2024年1月5日/朝鮮日報
(*2)【検証】「ゼレンスキー氏がヨット購入」 親ロ派の流言はいかに米軍事支援に影響したか/2023年12月27日/BBC