(「河北新報」平成29年9月2日付け記事より引用)
宮城県内の特別支援学校が慢性的な教室不足に直面している。通学を希望する児童生徒が増加する一方で、受け入れ環境の整備が追い付いていない。進学先の選択や登下校に不自由を強いられる子どもや保護者。学校新設が遅れる中、通常学級との連携などを模索する動きもある。障害児教育の現場から実情を報告する。(報道部・鈴木悠太)
◎特別支援学級の現状(下)学びの場連携模索
<98教室を増設>
特別支援学校の在籍者数増加は、発達障害の認知などによる対象の拡大が背景にある。加えて小中学校の特別支援学級で学ぶ児童生徒が、進学先に選択するケースも多くなっている。受け入れ枠を広げるため、県教委は近年、繰り返し対応を迫られてきた。
2011年度は名取、利府の両支援学校に仮設のプレハブ校舎を建設し、利府の分校を富谷市に設置。14年度は小中高等部で計45教室の小松島支援学校(仙台市青葉区)を開校した。
通学者の増加で教室が不足し、17年度には利府の分校を塩釜市にも開設。18年度には小松島の分校を泉区に、19年度には名取の分校を名取市内に置く予定だ。分校は全て小学校の空き教室が充てられた。
矢継ぎ早に計98教室が11~19年度で増設される計算だが、20年度以降も15教室ほどの不足が見込まれる。状況を改善するため、県教委は太白区秋保町の旧県拓桃医療療育センターと旧県拓桃支援学校の跡地に、特別支援学校を新設する方針を明らかにしている。
新設校は職業教育に力を入れる「高等学園」の機能も備える。県教委特別支援教育室の目黒洋室長は「なかなか教育環境が整わず、心苦しく思っている。当面は各校に学習の工夫をお願いしながら、開校の準備に全力を尽くす」と話す。
裾野が広がる特別支援教育を支えるマンパワーを確保するため、県教委は18年度の教員採用試験から免許保持者のみ出願できる特別枠を設けた。熱意ある人材を確保し、教育の質を高めるのが狙いだ。
<多様化目指す>
受け入れ先の多様化を探る動きも進んでいる。8月上旬に大崎市の文化施設スコーレハウスであった特別支援教育の研究報告会。大和町大和中で支援が必要な子どもの家庭と学校のコーディネーターを務める我妻純子教諭(44)は、役割の重要性を説明した。
大和中は3学年で計21人が特別支援学級に在籍し、通常学級で「通級指導」を受ける生徒も4人いる。我妻さんが家族と綿密に相談し、学校の枠組みにとらわれず、本人の希望や状態に合わせて学び方を決める。
我妻さんは「特別支援学校以外にも学ぶ場はある。一人一人が適した居場所を選択できる仕組みが大切だ」と強調する。18年度からは高校での通級指導が可能になる。県教委はモデル校での取り組みを模索し、実施校や対象生徒の基準などを検討する見通しだ。
宮城教育大の村上由則教授(病虚弱教育)は「教員の意識改革など、準備には時間がかかる。あらゆる対策を同時に進め、全ての子どもの可能性を狭めない環境を用意しなければならない」と指摘する。
宮城県内の特別支援学校が慢性的な教室不足に直面している。通学を希望する児童生徒が増加する一方で、受け入れ環境の整備が追い付いていない。進学先の選択や登下校に不自由を強いられる子どもや保護者。学校新設が遅れる中、通常学級との連携などを模索する動きもある。障害児教育の現場から実情を報告する。(報道部・鈴木悠太)
◎特別支援学級の現状(下)学びの場連携模索
<98教室を増設>
特別支援学校の在籍者数増加は、発達障害の認知などによる対象の拡大が背景にある。加えて小中学校の特別支援学級で学ぶ児童生徒が、進学先に選択するケースも多くなっている。受け入れ枠を広げるため、県教委は近年、繰り返し対応を迫られてきた。
2011年度は名取、利府の両支援学校に仮設のプレハブ校舎を建設し、利府の分校を富谷市に設置。14年度は小中高等部で計45教室の小松島支援学校(仙台市青葉区)を開校した。
通学者の増加で教室が不足し、17年度には利府の分校を塩釜市にも開設。18年度には小松島の分校を泉区に、19年度には名取の分校を名取市内に置く予定だ。分校は全て小学校の空き教室が充てられた。
矢継ぎ早に計98教室が11~19年度で増設される計算だが、20年度以降も15教室ほどの不足が見込まれる。状況を改善するため、県教委は太白区秋保町の旧県拓桃医療療育センターと旧県拓桃支援学校の跡地に、特別支援学校を新設する方針を明らかにしている。
新設校は職業教育に力を入れる「高等学園」の機能も備える。県教委特別支援教育室の目黒洋室長は「なかなか教育環境が整わず、心苦しく思っている。当面は各校に学習の工夫をお願いしながら、開校の準備に全力を尽くす」と話す。
裾野が広がる特別支援教育を支えるマンパワーを確保するため、県教委は18年度の教員採用試験から免許保持者のみ出願できる特別枠を設けた。熱意ある人材を確保し、教育の質を高めるのが狙いだ。
<多様化目指す>
受け入れ先の多様化を探る動きも進んでいる。8月上旬に大崎市の文化施設スコーレハウスであった特別支援教育の研究報告会。大和町大和中で支援が必要な子どもの家庭と学校のコーディネーターを務める我妻純子教諭(44)は、役割の重要性を説明した。
大和中は3学年で計21人が特別支援学級に在籍し、通常学級で「通級指導」を受ける生徒も4人いる。我妻さんが家族と綿密に相談し、学校の枠組みにとらわれず、本人の希望や状態に合わせて学び方を決める。
我妻さんは「特別支援学校以外にも学ぶ場はある。一人一人が適した居場所を選択できる仕組みが大切だ」と強調する。18年度からは高校での通級指導が可能になる。県教委はモデル校での取り組みを模索し、実施校や対象生徒の基準などを検討する見通しだ。
宮城教育大の村上由則教授(病虚弱教育)は「教員の意識改革など、準備には時間がかかる。あらゆる対策を同時に進め、全ての子どもの可能性を狭めない環境を用意しなければならない」と指摘する。