約1カ月間に渡りダラダラと作っていた紙粘土フジキャビンが、ついに完成しました。
汚い作品ですが、完成報告として写真アップします。
皆さん、ご感想があればコメント欄にドンドンお願いします!酷評でも構いません!
フジキャビン(約1/29フルスクラッチ)
・名車ではなく「迷車」
せっかくなので、ここでフジキャビンという自動車について簡単に説明しましょう。
「軽自動車」という日本独特の自動車文化が確立したのは、1955年の「国民車構想」がきっかけだと言われています。当時はまだ個人所有のファミリーカーというのは夢の話で、車といえば仕事用、営業用が当たり前でした。そこで、当時の通産省が、自家用車の普及を目的として企業に課したのがこの「国民車構想」なわけで、ここからスバル360、マツダR360クーペ等の小さな名車が次々と誕生しました。
フジキャビンがデビューしたのは、大ヒット作「スバル360」が登場する2年前の1956年なので、いわば軽自動車の手探り期に誕生した車種ともいえます。設計したのは、前年に「フライングフェザー」というこれまた風変わりな自動車を設計した富谷龍一氏。鉄板張り合わせのボディに自転車の車輪を4つ付けたようなフライングフェザーも十分な珍車ともいえますが、氏の作品第2弾であるフジキャビンも相当な変わり種でした。今見ても奇抜なたまご型ボディは、軽量化を狙ってまだ先進的な素材であったFRP(繊維強化プラスチック)を採用。1つのライトと大きく開いた外気取り入れ用の穴のおかげで、前方から見た表情は誰がどう見ても「一つ目オバケ」。
車の性質は、どちらかと言えばオートバイに近いものでした。エンジンはキーを回すのではなく、足元のキックペダルで始動。後輪1輪がチェーン駆動で動くという構造もオートバイそのもの。運転席右側の小さなギアレバーでクラッチつなぎ、シフトチェンジを同時に行うので運転には慣れが必要だったといいます。富谷氏は、あくまで「屋根に覆われたオートバイ」という位置づけで、この車を開発したわけです。
しかし、フジキャビンは成功とはいえませんでした。2輪免許で乗れるというのが売りだったものの、その価格は当時のスクーターの2倍もする23万円。荷物が積めない狭い室内も原因となり謙遜されてしまいました。またプラスチック製のボディは手作業で製造されたため非効率で生産台数も限られ、さらに発売後はトラブル(主にボディの破損、ヒビ割れ等)が多発。工場では修理に追われるハメに。結局、登場してから生産が中止されるまで、販売された台数はわずか85台だったと言われています。売れ残った数十台は廃棄処理されたといい、その光景を想像すると涙モノです。
(左上)・・・実車を真横から見ると、意外と全長があり驚かされる。ちなみに前期の試作型ではドアは左だけだったそうだ。
後ろ半分を若干高く作りすぎた気もするが、雰囲気は我ながらイイ感じ?
(右上)・・・上から見るとタマゴ型ボディが強調されてカワイイ。銀色の丸い部品は給油口のフタです。
(左下)・・・一番重要な部分である「ビックリ顔」はかなりこだわって制作。粘土をほんの少し盛っただけで全く違う顔になってしまうんですな。不気味可愛い雰囲気は出ていますか?
(右下)・・・こちらもインパクト大な後ろから見た姿。「風の谷のナウシカ」のオームを思い出すのは僕だけだろうか?急ピッチで作ったためにデコボコが目立ちます。タイヤも曲がっていますね(笑)。
・4年越しの完成?
さて、フジキャビンの模型を作ろうと思ったのは、じつはかなり前。小学生の時にその存在を知った時から大好きになり、実車の資料が乏しいにもかかわらず厚紙で制作開始。しかしすぐ挫折。
2度目の挑戦は、それからかなり時が経った高校生の頃。ブック●フで、フジキャビンが詳細に特集されていた「ノスタルジックヒーロー90号(旧車雑誌)」を格安で購入できたのがきっかけでした。
「この車、詳しく知りたいと思ってたんだよね~♪」と、イイ掘り出し物をゲット出来たので嬉しくなりながら読んでいると、また制作意欲が沸いてきて・・・。前回は、厚紙オンリーで制作しようとしていたので丸いボディの再現には限界があり、そのせいで挫折しました。そこで今回は厚紙&紙粘土のハイブリッドで・・・という考えがまとまり、雑誌に載っていた3面写真を頼りに厚紙でさっそく型を制作。
制作を決意したのは、フジキャビンの模型がどうしても欲しいという欲求もありました(笑)。こんなに可愛いフジキャビンなのに、その模型はとても数少ないんです。量産モデルで有名なものといえば、岡山のある模型メーカーが十年以上前に発売した1/24のレジン・キット。やけに丸っこさが強調されていてドッシリしていますが、雰囲気は完璧です。
・・・しかし値段が高い。6000円以上もするので、ホビーにそこまでの金額はかけたくありません。それ以前に、レジン製キットなんて作ったことも無いので怖くて手を出せませんでした(笑)。
そして、制作をさらに後押しするある事件が発生します。「国産名車コレクション」というミニカー付きの雑誌シリーズがあるんですが、そのミニカーのラインナップ予告に「フジキャビン」の文字があり、ワクワクしながら待っていた時期がありました。しかし待てども待てども発売される気配が無く・・・。
「おかしいな?」とラインナップを再び確認してみると、なんとフジキャビンの文字が消され、無かった事にされている・・・。これで悔しくなってしまい、一気に制作意欲が爆発したわけです。
・・・なんて書きましたが、実際には半分ほど作ったところで面倒くさくなり、結局は4年ほど放置して現在に至っていました(笑)。中途半端に制作したボディ部品は我ながら結構よく出来ていて、眺めるたびに「勿体ないな~」とモヤモヤ思っていました。
なかなか制作を再開する気力が沸かないまま時が過ぎ、ようやく重い腰を上げたのは今年に入ってから。4年前みたいにジックリ作っていたらまた挫折してしまいそうなので、今回は思い切って大雑把な制作とし、ガタガタな表面が気になるものの何とかこうして形に出来た次第です。
つい最近、「エブロ」からフジキャビンのミニカーが突如発売されて話題になりました。全体の雰囲気は良いのですが、どうも実車の可愛い表情が再現しきれていない。そして値段がやはり6000円超えと高額。やはり買う気が起きません。僕はもう自分で作ったこの模型があるので満足です。
紙粘土の質感が完璧に消せず、手作り感あふれる見た目が気になりますが、雰囲気はよく再現できたと思っておりますんで。
・・・しかし、やっぱりゼロから作るのは大変。
もうしばらく工作はしたくありません・・・(笑)。
完成作品を眺めていると、4年間の宙ぶらりんだった状態から抜け出せてスッキリした気分さえ感じます。
とりあえず、完成させることが出来てよかったです!
皆さま、お付き合いありがとうございました。
完。
汚い作品ですが、完成報告として写真アップします。
皆さん、ご感想があればコメント欄にドンドンお願いします!酷評でも構いません!
フジキャビン(約1/29フルスクラッチ)
・名車ではなく「迷車」
せっかくなので、ここでフジキャビンという自動車について簡単に説明しましょう。
「軽自動車」という日本独特の自動車文化が確立したのは、1955年の「国民車構想」がきっかけだと言われています。当時はまだ個人所有のファミリーカーというのは夢の話で、車といえば仕事用、営業用が当たり前でした。そこで、当時の通産省が、自家用車の普及を目的として企業に課したのがこの「国民車構想」なわけで、ここからスバル360、マツダR360クーペ等の小さな名車が次々と誕生しました。
フジキャビンがデビューしたのは、大ヒット作「スバル360」が登場する2年前の1956年なので、いわば軽自動車の手探り期に誕生した車種ともいえます。設計したのは、前年に「フライングフェザー」というこれまた風変わりな自動車を設計した富谷龍一氏。鉄板張り合わせのボディに自転車の車輪を4つ付けたようなフライングフェザーも十分な珍車ともいえますが、氏の作品第2弾であるフジキャビンも相当な変わり種でした。今見ても奇抜なたまご型ボディは、軽量化を狙ってまだ先進的な素材であったFRP(繊維強化プラスチック)を採用。1つのライトと大きく開いた外気取り入れ用の穴のおかげで、前方から見た表情は誰がどう見ても「一つ目オバケ」。
車の性質は、どちらかと言えばオートバイに近いものでした。エンジンはキーを回すのではなく、足元のキックペダルで始動。後輪1輪がチェーン駆動で動くという構造もオートバイそのもの。運転席右側の小さなギアレバーでクラッチつなぎ、シフトチェンジを同時に行うので運転には慣れが必要だったといいます。富谷氏は、あくまで「屋根に覆われたオートバイ」という位置づけで、この車を開発したわけです。
しかし、フジキャビンは成功とはいえませんでした。2輪免許で乗れるというのが売りだったものの、その価格は当時のスクーターの2倍もする23万円。荷物が積めない狭い室内も原因となり謙遜されてしまいました。またプラスチック製のボディは手作業で製造されたため非効率で生産台数も限られ、さらに発売後はトラブル(主にボディの破損、ヒビ割れ等)が多発。工場では修理に追われるハメに。結局、登場してから生産が中止されるまで、販売された台数はわずか85台だったと言われています。売れ残った数十台は廃棄処理されたといい、その光景を想像すると涙モノです。
(左上)・・・実車を真横から見ると、意外と全長があり驚かされる。ちなみに前期の試作型ではドアは左だけだったそうだ。
後ろ半分を若干高く作りすぎた気もするが、雰囲気は我ながらイイ感じ?
(右上)・・・上から見るとタマゴ型ボディが強調されてカワイイ。銀色の丸い部品は給油口のフタです。
(左下)・・・一番重要な部分である「ビックリ顔」はかなりこだわって制作。粘土をほんの少し盛っただけで全く違う顔になってしまうんですな。不気味可愛い雰囲気は出ていますか?
(右下)・・・こちらもインパクト大な後ろから見た姿。「風の谷のナウシカ」のオームを思い出すのは僕だけだろうか?急ピッチで作ったためにデコボコが目立ちます。タイヤも曲がっていますね(笑)。
・4年越しの完成?
さて、フジキャビンの模型を作ろうと思ったのは、じつはかなり前。小学生の時にその存在を知った時から大好きになり、実車の資料が乏しいにもかかわらず厚紙で制作開始。しかしすぐ挫折。
2度目の挑戦は、それからかなり時が経った高校生の頃。ブック●フで、フジキャビンが詳細に特集されていた「ノスタルジックヒーロー90号(旧車雑誌)」を格安で購入できたのがきっかけでした。
「この車、詳しく知りたいと思ってたんだよね~♪」と、イイ掘り出し物をゲット出来たので嬉しくなりながら読んでいると、また制作意欲が沸いてきて・・・。前回は、厚紙オンリーで制作しようとしていたので丸いボディの再現には限界があり、そのせいで挫折しました。そこで今回は厚紙&紙粘土のハイブリッドで・・・という考えがまとまり、雑誌に載っていた3面写真を頼りに厚紙でさっそく型を制作。
制作を決意したのは、フジキャビンの模型がどうしても欲しいという欲求もありました(笑)。こんなに可愛いフジキャビンなのに、その模型はとても数少ないんです。量産モデルで有名なものといえば、岡山のある模型メーカーが十年以上前に発売した1/24のレジン・キット。やけに丸っこさが強調されていてドッシリしていますが、雰囲気は完璧です。
・・・しかし値段が高い。6000円以上もするので、ホビーにそこまでの金額はかけたくありません。それ以前に、レジン製キットなんて作ったことも無いので怖くて手を出せませんでした(笑)。
そして、制作をさらに後押しするある事件が発生します。「国産名車コレクション」というミニカー付きの雑誌シリーズがあるんですが、そのミニカーのラインナップ予告に「フジキャビン」の文字があり、ワクワクしながら待っていた時期がありました。しかし待てども待てども発売される気配が無く・・・。
「おかしいな?」とラインナップを再び確認してみると、なんとフジキャビンの文字が消され、無かった事にされている・・・。これで悔しくなってしまい、一気に制作意欲が爆発したわけです。
・・・なんて書きましたが、実際には半分ほど作ったところで面倒くさくなり、結局は4年ほど放置して現在に至っていました(笑)。中途半端に制作したボディ部品は我ながら結構よく出来ていて、眺めるたびに「勿体ないな~」とモヤモヤ思っていました。
なかなか制作を再開する気力が沸かないまま時が過ぎ、ようやく重い腰を上げたのは今年に入ってから。4年前みたいにジックリ作っていたらまた挫折してしまいそうなので、今回は思い切って大雑把な制作とし、ガタガタな表面が気になるものの何とかこうして形に出来た次第です。
つい最近、「エブロ」からフジキャビンのミニカーが突如発売されて話題になりました。全体の雰囲気は良いのですが、どうも実車の可愛い表情が再現しきれていない。そして値段がやはり6000円超えと高額。やはり買う気が起きません。僕はもう自分で作ったこの模型があるので満足です。
紙粘土の質感が完璧に消せず、手作り感あふれる見た目が気になりますが、雰囲気はよく再現できたと思っておりますんで。
・・・しかし、やっぱりゼロから作るのは大変。
もうしばらく工作はしたくありません・・・(笑)。
完成作品を眺めていると、4年間の宙ぶらりんだった状態から抜け出せてスッキリした気分さえ感じます。
とりあえず、完成させることが出来てよかったです!
皆さま、お付き合いありがとうございました。
完。