数年前まで廃墟だと思っていたこの建物、実は現役の店舗である。
500円で美味しいかにめしが食べられる穴場である。
この日もあまりのひとけの無さに「やってないかな?」と不安になりながら中を覗くと、
薪ストーブの前にポツンと座る店主(訪問時83歳)が。
「寒くてごめんね。かにめししか出来ないけど……」。
静かな店内に案内してもらう。
円形の建物と大きな窓のおかげで、電気が無くても明るい店内。太平洋が一望できる。
「太陽が出ていると暖かくて気持ちが良いんだよ~」と店主。
薪ストーブの燃料なのか、敷地の外や店舗内の大部分に材木が積み上げられている。これはご愛嬌だ。
創業50年超。かつては奥様と経営されていたそうだが、数年前に亡くなってからはおひとりで切り盛りされている。
早朝に室蘭からやってきてごく少量を仕込み、無くなり次第終了、というスタイル。
味の染みたタケノコが乗ったかにめし。味噌汁付きで500円で、これがまぁ美味しいこと。
年季の入った器もまた味わい深し。
雑然とした店内に不安になりつつ、ご飯をかき込んで味の良さに驚く、これが「かに太郎」体験だ。
かつてはあらゆるカニ料理を提供していたようだが、現在はかにめしのみ。
お値段は据え置きのようだ。
なお、店主がご高齢のため提供できる量が限られており、午前11時の開店から早ければ1時間少々で終了してしまう事もあるそう。
常連客もいるため、細々と続けているとの事。にじみ出る人柄の良さが魅力的な店主であった。
(2020年訪問)