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■白兎伝説と四面会議

2023-06-08 | ●北條語録

■■■■■■■■■■白兎伝説と四面会議■■■■■■■■■■

   

北條俊彦
経営コンサルタント・前 住友電工タイ社長

■■「イナバの白兎伝説
⚫️学校で建国の歴史を教えない国は, 日本ぐらいであろうか
我が国最古の書物『古事記』は,天地開闢から神の出現,そして
国造りから天皇の時代へと,繋がる我が国の成り立ち
が語られた
雄大な物語である。

因幡国風土記は現存せず,出雲国風土記や日本書紀に記載はない
が,古事記では『イナバノシロウサギの神話
』を,スサノオ
六代目の子孫オオナムチ(大穴牟邇神)が,
国造りを完成させ国
を支配する神へと成長してゆく物語
の最初に位置付けている。
「因幡国に住む八上比売に求婚するため出かける 兄神に同行の
途上,ワニを騙したため皮を剥がれ苦しむ兎に
オオナムチは出逢
う。
兄神とは違い彼は適切な治療法を
教え兎を救うが ,回復した兎は
“オオナムチこそが八上比
売と結婚するだろう”と予言する。」
物語はここから始まり,
やがて兎の予言通り八上比売と結婚した
オオナムチは,
兄神達を退け, 国を支配する神となり 名前も大国
主神
と名乗ることになる。

古事記には,因幡の白兎(実表記は「稲羽之素菟」)について[最
後の和邇,我を捕えて我が衣を削げり」と記さ
れており,一説では
この付近を領した白兎神が, 日本海を
荒らす海賊和邇の大軍と於
岐ノ島で戦い, 奮戦虚しく
最後の和邇に打ち敗れ,血に塗れ, 倒れ
た白兎神こそ
が因幡の白兎だったとも解釈されている。


⚫️スサノオ(須佐之男命)は、ご承知のように天照大御神,月読
命に続いてお生まれになった物語の多い神である。

天照大御神は,猛々しく荒ぶる,そして粗暴な弟神のスサノオを恐
れられ“天の岩屋“にお隠れになったが為に
スサノオは ”高天原“
を追放されるのである。


八俣遠呂智退治は,地上界に降りたスサノオの物語
遠呂智の尾から出た草那藝之大刀は,後に 天照大御神に献上され、
古代天皇の権威である三種の神器
の一つとなる。熱田神宮の 御
神体である。後に英雄
ヤマトタケルは,その剣を持ち東征で大い
に活躍した。

             ●智頭町金刀比羅神社 ヤマタノオロチ木彫
夜久毛多都  伊豆毛夜幣賀岐  都麻碁微爾  夜幣賀岐都久流  曾能夜幣賀岐袁
(やくもたつ  いずもやえがき  つまごみに  やえがきつくる  そのやえがきを
これは, スサノオが詠んだ我が国最初の 和歌といわれており,
“祝婚の歌”として 現在迄も歌い継がれているのである。

 

■「地域振興プロジェクト
⚫️さて1980年から大分県の全市町村で始められた “一村一品
動”を思い起こしてみたい。

1979年
当時大分県知事の 平松守彦が提唱し, 実効をあげた地域
振興プロジエクトである。そして国内のみなら
ず アジアはじめ
多くの国々が, 地域経営や経済政策
の一環として取り入れた。

⚫️タイ王国でも2001年に,当時のタクシン首相が,
タイ
版一村一品運動OTOP  (One Tambon One Product)」

始め,全国に展開している。

OTOPの店

OTOPは、タクシンが地域振興のために開始したものだが, 人口
の8割を占める農村部を自分の支持基盤
に取り込むための政策
でもあった。もう一つの政策の柱
の“30バーツ医療制度”と 併せ
効果は絶大で,現在
亡命中ではあるが農村部でのタクシン人気は,
いまだ
衰えを見せていない。

⚫️1987年秋に竹下内閣が成立, 記憶に残るのが竹下の基本政策
の一つ『ふるさと創生事業』であろうか。
の国主導の政策実行を止め(国は支援の立場とし)地方交付税
の配分活用で各自治体が主体的に知恵
を出し,特色ある自治体経
営を進めることで地方経済
を活性化させ, 新たな 国造りを目指す
ものであった。
        
しかし「ふるさと創生一億円事業」は,大いに話題を提供し
たものの成功した事業は少なく “単なるバラマキ
に終わった“と,
その評価は至って厳しい。
ただ各自治体と住民が自分達の住む地域と向かい合うことで,ふ
るさとを意識しその地域経営において
住民自身が参加し,真剣に
考える機会を提供した事
は 大いに評価できる。


   ●鳥取の砂丘(出所:鳥取県)
⚫️鳥取県は人口が日本国内で最も少なく 県内総生産(名目GDP)
も47都道府県では最も小さく, 少子高齢, 
過疎化の進む課題の
多い自治体であるが, 県内の優れた
文化財を地域振興資源として
活用した特色ある地域経営
を実施しており, その成功事例は数多
い。

JICAの研修事業では, 学びの対象として何度か鳥取県を訪問させ
て頂いたが, 鳥取にはどこかヨソ者を惹きつける不思
議な魅力が
あるのだ。
 
鳥取砂の美術館(出所:鳥取県)
⚫️JICA国別研修(コロンビア)では,鳥取県内の地域振興事例
学ぶため,
コロンビア人研修員達と
鳥取県庁
・鳥取市役所、
智頭町役場
鳥取大
そして
砂場珈琲
タルマーリ
三滝園

他, 数多くの企業・施設を訪問させて頂いた。
特に, 智頭町で
はこと起こし運動“ひまわりシステム“から30数
年 多くの成功事
例を産み出し“民のちから”による 地域経営を活
発におこなって
いた。

⚫️智頭町のパン屋さんタルマーリでは, 経営者の渡邊格氏から、
腐る経済」とは地域で得た利潤を全て使い切り, 地域で生産
した商品を地域内で消費すること。
そして持続可
能な「腐る経済循環」を目指す仕組みつくりで
ある「地域
循環型こと起こし」について学ばせて頂いた。

 
      (図)タルマーリ地域内循環図

⚫️砂場珈琲では社長ご講義の後,  コロンビア珈琲と クラブ
ンドで温かくもてなして頂いた。当時, 唯一, 鳥取県に
スタバが
なく平井知事の「鳥取にはスタバはないが,日
本一の砂場がある
発言が大いに受け「スタバはない
が砂場はある」が, 砂場珈琲の
宣伝コピーとなっていた。

参考までに,現在, スタバは鳥取駅南口, 及びイオンモール鳥取北
店内の2店舗が営業している。



 ●砂場珈琲本店
⚫️少し話は変わるが,私の研究テーマである天然繊維強化樹脂の
材料候補の一つ, 麻について学ぶため
繊維利用目的で野州麻を栽
培されている 栃木県の
麻農家大森由久さんを 訪問させて頂いた
がある。

大森さんの野州麻は, 伊勢神宮の注連縄(しめなわ)や元横綱白
鵬土俵入りの横綱にも使われ, 昭和57
年に品種改良された栃木
白という無毒の大麻である。


栃木白は,,陶酔作用を起こすTHCは殆ど含まない。大森さんから
は麻の技術特性だけでなく, 縄文時代
から続く麻と人との関り合
い, そして 日本の伝統文化
との深い結びつきについても  学ばせ
て頂いた。
その昔, 智頭町にも麻の栽培とそれに繋がる歴史と文化が存在し
た。1948年GHQによる大麻栽培禁止
令以来, 60年ぶりに 智頭町
で大森さんの弟子が麻の
栽培を始めると聞き, 新たな町おこしと
伝統文化の復活
に期待し心から喜んだものだが, 残念な結果にな
って
しまった。


■■最強の地方振興システム

⚫️山間過疎地域である智頭町で,  地域活性化計画作りの手法と
して住民参加型『面会議システム』を確立
させている
それは地元の
こと起こし運動”のリーダーである
寺谷篤志氏と、
京都大学防災研究所岡田憲夫先生との
合作である。

当時,智頭町では高齢化が顕著に進行し高齢者の独居世帯が増加、
共助のコミュニテイも機能しなくなっており,
独居老人の安否確
認,及び扶助のため 新しい社会システム
の構築が必要となってい
た。
そのため 地元郵便局長であった
寺谷篤志氏が リーダーとして誕
生させたのが“ひまわりシステム
であった。詳細については寺谷
篤志氏著書「創発的営み:
地方創生へのしるべ 鳥取県智頭町発」
を一読頂きたい。

このシステムは, その後「ひまわりサービス」として国政レベル
事業へ格上げされ 全国展開されたが,小泉の郵政民営化によっ
て町村における重要な公共機関であった 特定郵便局
が無くなり
(このことが地方の疲弊と崩壊を一気に加速させ
て行くのだが)
「ひまわりサービス」の機能は縮小,変質化し
てしまうのである。


        🔵出所:鳥取県智東町

⚫️四面会議システムとは、
・「SWOT分析
・「四面会議図
・「協働
デイベート
・「行動計画書
で構成され,参加者間との役割分
担と包括的で相互連携的な実行
案作りを可能とする(正解
より成解を重視する)会議手法である。
またコミュニケーションや 共通経験の場ともなり,外部者との
流ネットワークも構築できるシステムだ。それは 国内だけで

くアジア諸国でも, 地域振興や防災など様々な領域で活用
されて
いる。

⚫️地域経営や地方創生の基本は『自助・共助・公助』をそ
れぞれ、
相互補完的に機能させること。
特に、自助・共助に おいて個人や
地域のコミュニテイが,自発的
に参画しながら,地域の特性を反映
させ,実行可能な行動計画や連
携の仕組みを創ることが 重要だ。

少子高齢化と人口減少,地方の荒廃は現代日本が直面する 重要課
題であるが, 時間差こそあれ世界各国共通の課題でも
ある。

課題先進国」として 我が国が世界に先駆けて 取り組むこと
なるが, 能率・効率・生産性などの経済合理性のみで考えるの
でなく,我が国固有の価値観を保持し 伝統や文化など社会的合理
性に重きを置いた『新しい社会システム』を創り上げ, 地方
元気にすることから先ず始めるべきである。
グローバル化
ボーダレス
フラット化
ノマド化
の 流れの中で,
如何にサバイブしてゆくのか、日本人一人一人が
しっかりと考える
べきである。
グローバルスタンダードなどは, 決して存在しないのだ


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