■■■■■■■■■ASEANの行方■■■■■■■■■■
■[ASEANの危惧」
●菅総理大臣が 就任後すぐ訪れたのが、ベトナムとインドネシアだった。
いずれもASEANの中枢国である。なぜこの国が外遊先の第1番かには諸説
ある。
なにわともあれ米中貿易戦争が長引く中で、貿易と経済面で早急に中国離
れを進める必要がある。この背景には,ASEANや日豪印を含むインド太平
洋諸国の経済リスクをできるだけ最小にとどめる事である。そのために、
新しいサプライチェンを中国から東南アジアに移し、物資の調達の安定と
多様化を図る事が望まれる。特にこの背景には、米国の対中国関係悪化に
よる安全保障上の懸念など政治的な動機もある。
・米中の貿易問題、
・尖閣の問題、
・南シナ海の領有問題,
・中印国境問題、
・豪州記者の強制送還問題など
対中関係は、悪化の一途をたどりつつある。
それだけに経済と安全保障は、切り離して考えにくい世界情勢になりつ
つある。
特にベトナム、タイ、インドネシアのASEANの中核3国は、生産国として
の実績も態勢も確かで、既に一部サプライチェンの移行が始まりつつある
今回の菅総理の外遊も、そのあたりの政府間合議のためとも囁かれている。
●世界の多くの経済学者は、アジア経済は,人口スケールから見ても5年後
には世界一の消費市場になると予測する。しかし南シナ海や尖閣に見る中
国の排他的独善的な領土侵犯や領海侵犯の行為は、自由諸国の中国との永
続的な交易を懐疑的なものにしつつある。
●しかも今回のコロナショックに当たっては、独自のサプライチェンを背
景に膨大な世界の生産需要を取り込んで、経済では一人勝ちの中国の現実
がある。しかもあたりかまわぬ自暴の振る舞いが、コロナで苦しむ他国の
顰蹙を買う。
この20年間を振り返ってみても、日本はもとより先進国の人材や知恵や知
徳をあくどいまでに吸収して、自国経済の進化に取り込んできた悪徳な智
力というにふさわしい行状がある。
何しろ中国は、個人GDPはまだまだ低いものの GDPでは世界第2位の大国
である。しかも人口12億は,欧州28ヶ国のEC欧州連合5億人と、ASEAN
10ヶ国東南アジア諸国連合6億人を束ねた消費市場を,全て自国内に持つ事
と等しい,これは一つの巨大な経済圏にも匹敵する。GDP世界1位の米国
でさえも、いささか恐怖に思うのは当然と言える現実がある。
最近の米中貿易戦争における米国大統領の中国異存からの脱却要請の声明
は、中国と取引ある多くの国々が、中国経済の糧になっている貿易など経
済の面で、直ちにその関係性を縮小し,自戒にむけて協調して欲しいという
要請だろうか。
■[ASEANの魅力とリスク」
●ASEANは1967年に設立、次の10ヶ国で構成される諸国連合体である。
総面積は449平方キロm、日本の約12倍に当たる。総人口は6億5千万人
GDPは約3兆ドルである。
●「中国とASEA10ヶ国のGDP対比図」
(出所:NNA)
●いま世界は、発展途上にある約6億人のASEAN市場に熱い目を向け
る。特に世帯あたりの年間可処分所得が5000ドルから3万5000ド
ル未満の中間層が台頭しつつある。
経済産業省の試算によると,2020年のASEAN域内10ヶ国の中間層は、
23億人に増え、その年間消費額は,14兆6646億ドルと見込まれる。
日本にとっても最大の商機と予測される。
この人たちが豊かな生活に目覚め、まず最新家電や形態電話、外食そして
ネットにつながるスマホを手にして,最新の生活情報を入手することになる。
携帯電話などの通信事業は,若い人を主体に猛烈な勢いで普及を見せている。
これをべースにしてゲーム、通販、服飾、教育、通信など関連事業の伸び
が著しい。
(国名) (人口)人 (都市人口)都市化率(PC普及率)(携帯普及率)
●日本 1億2700万 8488万(67%) 85,9% 90,4% ●
●タイ 6814万 2314万(34%) 19,6% 122,6%
●ベトナム 8903万 2705万(30%) 10,2% 100,6%
●ラオス 644万 214万(33%) 7,0% 51,1%
●カンボジア 1505万 303万(20%) 3,7% 37,8%
●マレーシア 2791万 2015万(72%) 38,7% 110,6%
●ミアンマー 5050万 1699万(34%) 2,5% 0,9%
(出所、東洋経済2018)
●しかし中国の覇権問題とは別に、新興国特異のリスクがある。
殆どの国が、戦後の植民地支配から独立を果たした若い国だけに、経済の
自立と政体安定のために苦労したことは否めない。
例えばタイの場合、私の経験で恐縮だが,2000年から始まった日タイ国際
交流のためのタイロングスティ(海外移住)プロジェクトだったが、順調に
推移したと思いきや、
・2006年、軍事クーデター(政変)、
・2008年、国際空港の占拠、リーマンショック
・2011年、タイ南部大水害、サプライチェンの寸断、そして
・2014年、軍事クーデター(政変)
相次ぐ大きな政変と自然災害のりスクで,好調に推移した計画が中断して
途絶える。特に安住をめざしてスタートした 海外プロジェクトだったが,
その現地が危険にさらされたら、たれも行かない。
やむなく2015年この計画は幕を閉じた。自然と政争のリスクは。予想が
つかない。
かくの如く発展途上の新興国では、政変を含め予期せぬリスクが,たまたま
にして起きる事が多い。しかし起因は様々だが,不安定な経済基盤や統治の
未熟、国民の無知、政権の横暴などが背景にある。これも経済集合体とし
て進化する中で,参加国自体も修練して変容が期待される。
■「ASEANのいま」
●リスクの中には自然災害やパンデミックがある。ともに避けがたい事だ
が、今回のコロナ・ショックでは、ASEANはこぞって大健闘し世界の
注目を集めた。特にタイ、ベトナム、ラオス、カンボジアのメコン諸国と
隣のミヤンマーが世界的な評価を受けている。
いち早く海外空路の閉鎖や感染ルートの遮断、国内広報による感染予防が
奏功したという。
●但しASEAN1の人口を誇るインドネシアは、世界第3位の海洋観光
国で,多島国でもある。それが災いして,感染予防が遅れたという。
●いま長引くコロナショックで、ASEAN諸国の経済も低迷を極める。
タイでは、学生による連日の反体制デモで、政府は改憲論議を再開すると
いう。
タイ隣国のカンボジアは、中国一辺倒の独自路線を進める。
いずれにしろ当面は、観光の再開や交易を勧める事で、世界経済の再興が
待たれるというところだろうか。
ただ政治体制が異なる国々が、政体を超えて経済共同体を目指すのは、な
かなか難しい現実がある。今後の行方を見守りたい。
■「求められる日本の自助努力」
●日本の学術会議の問題が脚光を浴びる。6名の除名よりもこの会の存在が
いま問われている。いろいろ会の内情が伝わるにつれ,中国の魔手に犯され
てきた事がわかって来た。日本独自の学術研究成果が学問の自由という名
のもとに中国に横流しされ、詐取された事実が多々あるという。
しかもそれが,中国の産業基盤の技術になって,中国のいまがあるというから
悔やまれてならない。お人よし日本の行政力の甘さの結果と言っていい。
デジタル時代を迎えて,いささか遅きに失するが徹底的に洗浄して欲しい。
●いま世界では,情報公開と協働、自由交易と後進国支援、自分主義の排除
が,広く求められている。にも拘らずパンデミックは,人の行動を徹底的に阻
害する。それは座してコロナ喪失の到来を待つに等しい。
「国の経済が破綻すれば、まがいなく国民は生きがいを失う」だからこそ
私見だが「コロナ終焉に先駆け,猛烈に経済の再興を」目指すべきと考える。
そこで見識ある経済評論家にお願いがある、このところウイズコロナ,アフタ
ーコロナの経済戦略についての提言が少ない。こんな時こそ日本経済再興生
のためのアジア戦略について、ぜひご意見をお伺いしたい。
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