■■■■■■■■■■■日タイ仏教事情■■■■■■■■■■■
■「タイの仏教と僧侶」
●タイと日本は、100年を超える古くからの友好国関係にあるが、また同じ
王国でもある。しかも、おなじ仏教国でもある。、そしてお寺が多い伝統的
な文化国家として、世界的にも知られている。
しかしタイの仏教は、日本と異なり、国民のほぼ93%以上が信者という、仏
教が国教というにふさわしい珍しい存在でもある。
●タイには、およそ3万の仏教寺院と、約40万人の僧侶が現存する。彼らは
「サンガ」という部教集団に属し、高僧も修行僧層もすべて同じ木綿の黄衣を
まとい、厳しい戒律のもとに、日々の修行に明け暮れている。
20歳までの修行僧は「沙弥」(ネーン)と呼ばれ、10戒を守って修行している。
まとう黄衣は、還俗まで脱ぐ事は許されない。 そして20歳を超える出家僧は、
「比丘」(プラ)と呼ばれ、227にも及ぶ厳しい戒律すべてを守ることが求められ
ている。
●タイの仏教は上座部仏教(テーラワーダ)といい、はるかスコータイ時代にイ
ンドからスリランカ、ビルマを経由して伝わったといわれる。
一方、日本の仏教は、1世紀ごろインドから中国に伝わり、その後儒教や道教
の影響を受けながら、変容して大乗仏教となり、朝鮮の百済を経由して日本へ
渡来したと言われる。
■「仏教の信者、国別ランキング」
(順位)、 (国名) (信者数)万人 (人口比)%
1位 中国 24,412 18,2
2位 タイ 6、442 93,2 ●
3位 日本 4,581 36,2 ●
4位 ミヤンマー 3,842 80,1
5位 スリリランカ 1,446 69,3
6位 ベトナム 1,441 16,4
7位 カンボジア 1,370 96,9
8位 韓国 1,103 22,9
9位 インド 980 0,8
10位 マレーシア 503 17,7
11位 台湾 495 21,3
12位 ラオス 409 66,0
13位 米国 373 1,2
14位 ネパール 309 10,3
15位 スンガポール 173 33,9、
(出所 Pew Resarch Center)
■「価値ある出家とは」
●タイでは、男子は、出家して初めて1人前として認めれるしきたりがある。
タイの人々にとって、出家する事は、最大の功徳であり、家族にとっても、自分
の息子を出家させることは、世間に対して大きな功徳を積むことなると信じられ
てきた。
タイ仏教では、尼僧は認められていないが、修道院で白衣を着て修行生活を送
る女性の修行僧「メーチー^」が増えている。 最近では「尼僧サンガ」を求める運
動もあるという。、
「タイの人たちにとって出家とは、どういうものなのか」
「タイの人たちは、なぜ出家するのか」
同じ仏教国の日本人にとって、大変興味ある課題である。
■「梅竿忠夫博士の実感」
●梅竿忠夫博士の名著「東南アジア紀行」上巻(中公文庫)は、今をさる約40年
前に、学術調査隊を引きいて、タイなどメコン諸国を陸路調査した紀行文だが、
その第10章の「山上の聖地」「お墓はない」「国民皆僧」の各項にタイ仏教
国民皆僧ぶりが、驚きの中に紹介されている。
●ある高僧のお葬式に出あった時の事、大きな楽隊を配した極めてにぎやかな
葬式の行列にタイらしさを見出だした驚きの様子が記されている。、
特に、タイでは日本と違い、お寺の檀家や檀徒はいないこと、しかもタイには
お墓がない事に、大変な興味をそそられたとある。
■「日本のお寺の現実」
●日本にはお墓があり、お寺は檀家とのつながりを大切にしながら、寺の経営を
維持してきた経緯がある、
因みに、日本には7万5900のお寺があり、住職の数は、9万3千人,
お寺は、愛知県が 5,145で第1位
大阪府が第2位、
兵庫県が第3位、
京都府が第4位、
滋賀県が第5位
京都府が第6位
と関西が主勢を占める。
しかし日本の仏教は、永らく「葬式仏教」と批判されてきたが、都市への人口流失で
檀家が減少し、お寺の経営難が指摘されて久しい。しかも、後継者の僧侶がいない
お寺が続出しているという。 お寺離れと仏教離れが、現実の問題になって来た。
■「世界の宗教の信者シエア別ランキング】
(順位) (宗教名) (世界人口比率)
1位 未リスト教 31,5%
2位 イスラム教 23,2
3位 無宗教 16,3
4位 ヒンズ―教 15,0
5位 仏 教 7,1 ●
■「タンブン(寄託行為)」
●タイの早朝、随所で見かけるタンブンは、日本人観光客にとって、珍しい情景
の一つである。タイの人たち、特に在家信者は、タンブン(寄託、寄付行為)を積
み重ねる事によって、来世では、ますます幸せになると信じている。いわゆる輪廻
転生である。その為に托鉢を怠らない。
タイの人たちの主な寄託行為とはーーーーーーー
・お寺に寄付する
・僧侶に托鉢する。
・自分自身が出家する。
・息子を出家させる。
・魚や小鳥を逃がす。
仏教の五戒(殺生しない、盗まない、犯さない、嘘をつかない、酒を飲まない)
を守る。
●自制と人のためを思う、平和共存を求めた素晴らしい行為だと思う。
チェンマイなどを訪れて、まず、ほっとする街の感触とは、このようなタイの人達
が醸しだす優しさからきていると判って来た、、そして托鉢などに出会うと、正直
いま、日本に失われつつあるものに出会ったような気がして、ほっとし感動する
のである。これも奥深いタイの大きな魅力の一つだろう。、
■「タンブンとNPO」
●日本の社会貢献事業活動は、NPO法案が制定されて、既に15年経つ。
そのモデルは、米国のNPO(非営利社会貢献活動、ボランチア活動法)が
元になつて、神戸淡路大震災におけるボランチア活動の後、国会で発議さ
れたと聞いている。
ところが、学説によると、米国のNPO、ボランティア活動の発想の原点は、
タイの寄託行為(タンブン)だという。
●今をさる約55年前、ベトナム戦争のとき従軍した米国兵が、戦闘後一時
的に帰休したのが、隣国タイ北部のチェンマイだった。
そこで出会ったのが、今も変わらぬタンブンだった。 殺伐な戦闘体験後、
のどかにわかち合うタイ仏教の寄託行為に出会って、いたく感動し、彼らの
一部の人たちが帰国後、米国でボラティア活動を立ち上げ、後にNPO法制
になって華開いたという。こんな素晴らしい話は、もう少し喧伝されてしかるべ
きだと思い、あえてご紹介させていただいた。
●タイの人々の心に潜む優しさと、それによって齎されたとされる国民皆僧の
伝統的な文化のしきたり、 欲望が混濁する世の中にあって、その揺るがない
しきたりに対して、ただただ敬服するのみである。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます