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■サッカーの起源

2021-12-20 | ●松本語録

■■■■■■■■■■■■■不撓不屈■■■■■■■■■■■■■。

 
松本光弘
筑波大学名誉教授 ・元 日本サッカー協会理事 ・筑波大学蹴球部監督

■「サッカーとラグビーの違い
グビーとサッカーの違いについてお話したい
この2つのスポーツの起源をたどると成立起源はほとんど同じである。
前者をラグビーフットボール(Rugby Football)といい。
後者をアソシエ―シオン・フットボール(Association Football)と
いう。
両方ともフットボールである。
その頃 イングランドでは貴族や上流階級の
子弟の教育の中心は、全
寮制をベースとしたパブリック・スクールで行われ
ていた。
パブリックの意味は 日本で言う公立の意味ではない。貴族階級の
育機関であった学校が貴族のみではなく上流階級の市民の子弟にも
入学の門戸を開いたという意味でパブリックという名称がついたと
いわれ
ている。

ラグビーフットボールは、有名なラグビー校で行われていたフッ
トボールのル
ールを中心にしてできあがったものであることはほと
んどの人たちが知ると
ころである。
これに対してアソシエーションフットボールという名称は、あまり
日本では聞
かれない。これを私たちはサッカーと呼んでいる。
フットボールアソシエー
ションを最初に結成しルールを定め、その
ルールで行うフットボールをアソ
シエ―シオンフットボールと呼ん
だ。
    

このルールで行うフットボールを略してサッカー(Soccer)と呼
んでいる。 
As-soc-ciationの2つ目の”soc”にerを付けて soccer
すなわち
日本語表記でサッカーとなったといわれている

ちなみに天下の慶応義塾大学はこれをソッカーと日本語表記し、正式
名称は
慶応義塾大学ソッカー部となっている。それに対して早稲田大
学ではア式蹴
球部(サッカー)としてラ式蹴球部(ラグビー)と区別
し今日まで伝統を継承し
ている。

それぞれのパブリックスクールの卒業生たちは卒業後もクラブをつく
りそれ
ぞれの自分たちの出身校で行われていたフットボールのルール
でゲームを
行っていた。そのような中で統一ルールをつくろうという
機運が高まりロンドン
市内でそれぞれのクラブの代表が集まり数回の
会合ののち統一ルールを定
めたのが1863年12月のことであった。

          
THE FA誕生の意図
このアソシエーションを結成し統一のルールを定めたのが、フット
ボールアソシエ―シオン、すなわち現在のThe Football Association
(The FA)である。
T
he FAは世界に一つしか存在しない。それはイングランドのサッカ
ー協会を
意味し 他の国のサッカー協会は全てそのあとに国名がつく。
日本の場合はThe FA of Japanである。
この短縮された略称サッカーは手
でボールを扱ってはならないという
ルール(ドリブリングゲーム)が中心であった

    
   SOCCER                 rugby

これに対して手の使用を認めていた(ハンドリング ゲーム)のが
ラグビー校を中心
とした一派であった。この人たちは1863年設立の
フットボールアソシエーション
(The FA)には加わらず、1871年に
独自にラグビーユニオンを結成している。
ここで手の使用を禁止したドリブリングゲーム(サッカー)と 手の
使用を認めた
ハンドリングゲーム(ラグビー)の2つのフットボール
が存在することとなった。

この手の使用を禁止したサッカーと手の使用を認めたラグビーは、
その後、多くの
点で違いを明確にしながら 地球上の各国に伝播して
いく。

ラグビーはアマチュアリズムを堅持しながらハイソサエティー中心に
英連邦を最重
要視し、特別なスポーツ社会を形成しながら 世界にゆ
っくり確実に浸透していく。
これに対してサッカーは、ルールの簡便さ(全部で17条しかない)
も手伝って瞬く間
に大衆に受け入れられイングランドはもとより英
国4協会(イングランド、スコット
ランド、ウェルズ、北アイルラン
ド)が結成されヨーロッパから南アメリカに伝播 ワ
ールドスポーツ
となった。

当時のイギリスでは産業革命による労働力の集中に伴う都市化が進行
し週末の空
いた時間にサッカーのゲームを観戦するという いわゆる
プロサッカーの誕生に発展
する。


サッカーのゲームに出場することにより失われた賃金を保証する制
度、いわゆる休業
補償(ブロークンタイムペイメント)を各クラブが
行い始め観るスポーツとしてのプロ
サッカーがいち早く創設された。

英連邦を中心とした英語圏の国々では、ラグビーと
サッカーあるいは
独自のフットボール(アメリカンフットボール、オーストラリアンフ
ット
ボール、カナディアンフットボールなど)があり、サッカーとい
う名称が使用されるが、
英連邦以外のほとんどの国々ではフットボー
ルと言えばアソシエ―シオンフットボール
サッカー)を意味する。
     
子供がサッカーを始める意味
       「ドリブリングとハンドリング
この歴史的違いは、多くの方々が知るところと思われるが、しかし
私が今回このラグビーとサッカーの違いについて特別に取り上げたの
は、もう一つの大きな違いについて指摘したいためである。
この違いはこの2つのフットボールの成立過程でもわかる
ハンドリング
とドリブリングのルールの違いであり、この手の使用の可否が決定的
な違
いとしてのプレイヤーの育成期に大きな相違点として顕在化する。

ラグビーもサッカーも両方ともボールゲームである。このボールの扱
いを人間の最も
器用に扱うことができる部位は手である。
ラグビーはその手の使用が許されている。

ということはボールを扱う技術はプレイヤーにとってそう大きな問題
ではない。唯一ラグ
ビー発祥の初期のボールが家畜の膀胱に空気を入
れて作ったためまん丸くはない楕円
になっているのが扱いずらい点と
いえばいえる。しかしラグビー専門家に伺うとあの楕円
であるがゆえ
に遠くにスピードあるボールを投げることができるとのことである。
それは
銃のタマが回転しながら飛んでいくことで威力が増すのと同じ
原理だそうだ。
これに対してサッカーは手の使用が禁止されているこの事はボール
を扱う技術の獲得が充分でないと、ほとんど高度なサッカーのプレイ
は望めないということである。このボー
ルを扱う技術の獲得、これが
サッカーでは必須の条件である。

  (●D・クラマー氏)
近代日本サッカーの父と呼ばれている  D・クラマーは、この点を
ボールから自由になれ!”という言葉で強調している。
これについては、私の語録「攻撃は人生の華、守備は労働
を思い浮
かべていただきたい。 それと同様に  いやそれ以上に重要なのは前回
の語録「教育の
再発見」である。
私が述べた発育発達の原理原則に最大限配慮した教育が必要であり、
この発育発達の原理原則がスポーツ指導において最重要課題になって
くる。

技術の獲得、このサッカーの最も重要不可欠な要素は、人の一生で、
いつの時期に行うのが
最も効果的であり、最も適しているかはスキャ
モンの発育曲線及び小野剛の発育発達曲線
(仮称)を じっくり理解
すればおおずと解ってくる。

人間にとって一生に一度訪れる、あるいは巡ってくる「即座の習得」
の時期、ゴールデン
エイジの時期に技術を獲得すれば一生ものである。
この時期を逃しては技術の獲得はでき
なくはないが時間と労力が莫大
に費やしなければならなくなる。

そう、このゴールデンエイジの理解が子供たちの将来を決定すると
言っても過言ではない。
一生豊かに人生を楽しむための技術の獲得の
重要性を子供たち自身はまだ知らない。

この人間の発育発達のからくりを大人が十分理解し子供たちの健全な
発育と発達に見合
った教育を用意することは大人である私たちの任務
でもある。松本語録「老後の準備は子供から!を今一度ご参照願い
たい。
 


                         (出典:FIFA)
サッカー,美の本質
ここでオランダの著名なサッカーコーチ、ウイル・クーバー氏につ
いて話さなければならない。
彼はオランダプロサッカーチーム、フェイノールドの監督として活躍
した。その後彼はそれまでのサッカーレジェントたち(サースタンレ
イ・マシウス、ジョージ・ベスト、F・ベッケンバウワー。ヨハン・
クライフ、ペレ、リベリーノ、マラドーナなど)の得意技をモデル化
し世界の子供たちのスキル獲得に「クーバーコーチングメソッド」を
編み出した。彼が提唱した重要な標語に「TIPS」
というものがある。

●ウイル
・クーバー氏
これはオランダサッカー協会が提唱したダッジビジョンでも強調され

ているものである。

T:テクニック(技術)、
I:インテリジェンス。
P:パーソナリティー
S:スピード、
これらの頭文字が「TIPS」である。
サッカーに最も必要であり重要なものはTechnique である。これなく
しては高いレベルのサッカーは望めない。サッカーがサッカーである
ゆえんは手以外の身体の部位を使ったテクニックであり、このテクニ
ックの獲得過程には苦労や努力があり、獲得の
喜びがあり、向上心や
克己心にも繋がる。

    
D・クラマーはサッカーの「グッドゲーム」の中で技術を美の要素
の一番に取り上げている。これに
対してラグビーというスポーツの技
術の獲得は、そう大きな問題ではない。
他の3つの要素、
・インテリジェンス、・パーソナリティー、・スピードがあれば一流
プレイヤーになれる。
特にスピードは
パワーの要素の2つのうちの1つである。体重の重さと
スピードがあいまってパワーが生み出
される。身体を鍛えに鍛えて強
靭なものとし、精神を一点に込めて相手に挑む。これがラグビー
精神
すべてと言ってよい様に思える。それも一人ではなくみんなで協力し
て!

ハンドリングゲームのラグビーと手の使用ができないドリブリング
ゲームのサッカーの最も大き
な違いは技術獲得の臨界期「即座の習得
ゴールデンエイジを考慮してプレイヤーの育成時期、
即ち一貫指導が
サッカーでは最重要事項である点で理解できる。
この長期的、戦略的プレイヤー育成の重要さと困難さに各国サッカー
協会は挑戦し、4年に一回の
FIFAワールドカップに国の威信をかけて
いるのである。

この挑戦の過程で産出される副産物が、
その国のスポーツはもとより
教育や社会の発展や、浄化に大きく貢献していることを日本の関係者
気が付いているのだろうか。

できればFIFA・W杯に出場し優勝する事が目的ではあるが、その強
化の
過程で産出される副産物にも心を向け、社会に貢献することを私
は願ってやまない。

ウイル・クーバー氏は残念ながら既にこの世にはいない。しかし彼が
日本に最初に来日した時の
新聞記事が残っている。それをご紹介して
今回の締めくくりとしたい。

■■■■■■■■名監督の洞察眼■■■■■■■■

     日本はサッカー大国になれる
読売新聞は当時来日中のクーバ―さんを取材し、次の様なクーパー
語録を伝えた。(1979年,昭和54年3月9日の 読売新聞夕刊)
               ●
●「びっくりしたネ、日本の高校や大学には サッカーのタレントが
  いっぱいいるね」

●「日本の若者は身長170センチ、サッカーをやるのにちょうどいい
       体格で足腰も
しっかりしている。大男はサッカーには向かない。
●「日本の若者は素質があり体格がよく規律正しい。日本は施設も多
  く
組織力もある。コーチが正しければ必ずサッカー大国になれる

●「日本が伸び悩んでいるのは、チィームに偉大なパーソナリティ―
      が育って
いないからだ」

  短期間の滞在ながら日本の学校教育の短所をズバリ指摘した。
●「日本の選手は、グラウンドに出れば自分自身で決めて行動しなけれ
   ばならない。
日本人の謙虚さは  社会生活では素晴らしい美徳だが
  グラウンドではマイナスだ」

●「これらを克服すれば日本のサッカーは、必ず欧州と肩を並べる事が
  できる」

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