■■■■■■■■■■■■■■五輪の行方■■■■■■■■■■■■■■
松本 光弘
●筑波大学名誉教授 ●元日本サッカー協会理事 ●元筑波大学蹴球部監督
■「五輪の意義」
●今ここに至っては、スポーツ界に関係するものが、直接オリパラ開催を
訴えたり、キャンペーンをはったりすることは、無理だと思います。
このような行動を起こすのは、スポーツ関係者以外のところからしなけれ
ばなりません。またコロナ問題が解決すれば、あるいは、収束の見通しが
付くならば,オリンピック開催は、問題なくできるはずです。
オリパラ開催のためにコロナ収束をするのではなく、コロナ収束が目的で、
その結果オリパラが開催できることになります。
●写真提供(Eugene Onischenko/Shutterstock.com)
●これまでの歴史を見ると、西ドイツの第2次世界大戦後の復興には、サッ
カーW杯スイス大会のヘルベルガー監督率いる西ドイツチームの優勝があ
りました。また同じ大戦後の日本の復興には、古橋、橋爪選手の水泳競技
での活躍がありました。
近年では3.11後の日本では、「なでしこジャパン」のアメリカチームをPK
戦で破っての優勝がありました。しかし今回は、これらの事例とは少し異
なると思っています。その大きな違いは、コロナという障害が世界に蔓延
しているという事実があることです。
このコロナ蔓延という障害を乗り越えるなければ オリパラは開催できませ
ん。コロナ解決とオリパラ解決は同時に成立するものです。
オリパラ解決のために、コロナ解決を考えるのは無理があります。これで
は世論の支持は得られません。コロナ解決の暁にオリパラがあるのです。
今現在の政府や行政が打ち出している方策は密集する、あるいは感染拡大
の危険性のあるところ、即ち飲食等の営業店舗の時短や閉鎖です。確かに
これも方策の一つでしょう。
しかしこれらは、非常に消極的すぎる感があります。 さらに効果があり、
確実なのはそのような場所に行かないという一般人の行動です。
これは積極的な方策です。主体的に、自発的に、率先して、ある場合は競
い合って密集しないことが最高、最大の解決策です。
この考えの実行は、私たち自身が判断し行うことが可能です。私たちはコ
ロナ解決の術を持っているのです。私たちがコロナ解決をハンドリングで
きる立場にあるのです。この考えに立てば多くの対応策は出てくるはずで
す。
●主体的に自ずから行動する、能動的に振る舞う、この自発的精神を根幹
とした考えは、これこそスポーツ精神そのもので、他の何ものでもありま
せん。
その心を引き出すこと、その心に気付かせること、その心に火をつける事
それが何より大切です。その火は、それぞれの個人が基本単位です。
その火が集まってそれぞれの家庭に、それぞれの地域に、それぞれの町や
市に、時には友達同士で、部活で、クラブで、ファン同士で、あらゆる人
々の関係を活用しコロナ解決の具体的啓蒙キャンペーンを展開する事です。
この展開の内容や、具体的方策は専門家に委ねることになります。
ここで一番大切で効果が期待できるのは、一般の人が自発的に主体に行動
するきっかけです。人々は知らないことを知ることができた時に感動しま
す。これは興味という点で最高の満足です。
人々はこれまで見る事ができなかったものが見る事ができたりする、これ
も感動のきっかけの一つになることでしょう。
スポーツ界には、これらの対象となる知見や映像が多々ある事と思います。
このようなコロナ解決の手段となるスポーツ界の知見を一般人に知っても
らう事で主体的行動を引き出す方策を考える事です。
この主体的行動を引き出す方法と内容は、これまでのスポーツ界の知見を
結集すればできると信じています。
●写真提供(Eugene Onischenko/Shutterstock.com)
●そして現状では、啓蒙活動はスポーツ界以外から始めることが必要で
す。一つの例として松岡修造氏のあさイチで放映された スポーツ界の知
見の家庭生活内への導入、応用などテレビや新聞を使っての啓蒙です。
CMや広告は即効性とインパクトが大きく、訴えが直接的でないのが最高
です。
なんといっても映像の効果は抜群と思います。これまで見ることができな
かったような場面やプロセス。公開されなかった未知の映像、プロセスや
結果。スポーツの他の分野への影響や他分野からの協力などなど。
特に今回の池江選手の例から得らえた医学的知見や医学的治療、および今
後の医学や多方面への影響。このようなことは、ドキュメントとして公開
するのが最も効果的で、今後のおおきな指針になります。
先に示した池江選手の窮地を救うキャンペーンの発想は、彼女の功績を讃
え、彼女を東京オリンピックに出場させよう、そのために東京オリンピッ
ク開催に協力しましょう。そのためには自主的自発的にコロナ収束に協力
してください、という呼びかけを行うためのものでした。
その裏には池江選手が克服した難病とされる白血病治療に一つの糸口を見
出した難病解決の偉大な事例が隠されているとの判断です。
●出典:スポーツ庁SOIP推進会議
■「スポーツの本質」
●何はともあれ、スポーツの世界も格段に進歩しています。私の現在のス
ポーツ界での興味はなんといってもスポーツの価値、スポーツの社会での
果たす役割です。
ゾーン、フロー体験、暇と退屈の論理学、ゆとり社会、自然活動、野外活動、
行きつくところは,「SDG’s」です。
「国連の活動を象徴する SDGsマーク」
西ドイツのゴールデンプランに支えられたスポーツ活動、私が丁度50年前
30歳の時初めて訪れた西ドイツはケルンでした。素晴らしいスポーツ施設が
あり、羨ましいほどの楽し気なスポーツが展開されていました。
今回のこの緊急事態は、見方によっては新型コロナウイルス問題解決の後、
いわゆるポストコロナに多くの社会改革が出現するように思えます。
50年前の西ドイツの光景と同じでは私は今は満足しません。日本に合った
スポーツ施設と活動が日本に定着する機会でもあるような気がします。
●今後どのようになるか予想ができませんが、誰かが始めなければ事は何
も起きません。冒険家植村直巳氏が冒険心を全開させ世界に羽ばたいたよう
に、この世の中で最初に挑戦する、これもスポーツの根本精神です。
最初にやる勇気。失敗を恐れない勇気。これもスポーツの価値の向上その
ものです。
この目前に迫っている日本スポーツ界にとって最大のピンチは、逆に最大チ
ャンスです。これをスポーツの知見と精神を総動員して解決することができ
れば、コロナ後の日本スポーツ界は、また違った発展が期待できるように思
えます。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます