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■■■■■■■■■台湾 物語■■■■■■■■■
北条俊彦
経営コンサルタント・前 住友電工タイ社長
■■「想い出の台湾」
●台湾には仕事とプライベートとかなりの頻度で訪れた。
そこにはどこか日本の古き良き時代の香りが残っており、強く
郷愁を誘うものがあった。仕事でお会いした年配の方々は非常
に礼儀正しく、日本語を流暢に話され、親しみ深く真摯にお話
しをさせて頂く機会に恵まれたものである
●私は台湾では列車の旅が好きである。1900年に建設された洋
風建築物が前身の台鉄台南駅や1917年に完成した「辰野式建築
様式」の旧台中駅舎(二代目)は一見に値する。
(写真:旧台中駅駅舎)
旧台中駅舎はその設計の頑丈さから辰野堅固と呼ばれた辰野金吾
デザインの流れを汲むものである。
因みに東京駅丸の内駅舎は辰野金吾の作品である。台湾高速鉄道
は日本の新幹線技術初の海外輸出案件であり、車両は700系改
良型の700T型で日本の新幹線と殆ど同じに見える。
残念ながら次期導入予定の新型車両は日本製車両ではなく欧州製
車両が選択される可能性が高いようだ。
(写真:台南駅駅舎)
高速鉄道車両内の雰囲気は明るく、乗客マナーは大陸とまったく
違っており、違和感なく快適な列車旅を楽しめた。ただこれから
の時代どこにでもテロ犯罪は起きる、特に鉄道は格好のターゲッ
トになり得る。日本も台湾も鉄道はノーチエックだが、大陸で実
施しているように少なくとも入構チエックは必須にすべきだと思
う。
●列車旅といえばやはり駅弁であろう。
日本統治時代に伝わった駅弁を原型に、独自に発展し台湾の文化
になっているようでメニューこそ日本と違えども、その親しみあ
る外装のデザインや中味の多彩さはどんな旅客をも楽しませてく
れるだろう。
もちろん安くて旨いのもありがたい。駅弁屋では目移りしてどの
弁当を購入しようか迷ってしまう。何とか選んだ弁当を手に発車
ギリギリに電車に飛び乗るのはスリル満点だ。
次回の訪問ではゆっくりと“駅弁巡りの旅”を楽しみたい。
■■「飽くなき覇権との闘い」
●自然の恵みを大いに享受してきた両国であるが、日本も台湾
も地震大国、厳しい自然界の摂理に大いに影響を受けてきた。
1999年921大地震では家内と現地で慰霊祭に参加させて頂いた。
さすがに被災後のため列車でなくバスでの移動となったが、現地
で目にする被災の状況は実に悲惨なものであった。921大地震は
台湾において20世紀最大規模の地震であったと記録されている。
921大震災では日本の救助隊が真っ先に駆けつけたが、後年、東
日本大震災で台湾から駆けつけてくれた救助隊の受け入れに日本
政府が躊躇したことは記憶に新しい。
故李登輝元総統に「日本に何かあれば、台湾の救助隊が一番に駆
けつけるという曽野綾子氏との約束が果たせなかったことが、私
にとっての生涯の痛恨時である。」
とまで言わしめているが、日本人として恥いるばかりである。
●李登輝元台湾総統が亡くなられてから2年が経とうとしてい
る。李氏は12年間に亘り台湾総統を務められ,1996年に初の総
裁直接選挙を実施、台湾初の民意による台湾総統となられた。
以来、台湾は民主主義国家なのである。
李氏は京都帝大で学ぶなど22歳までは日本人であり心から日本
を愛し、日本人を友として常に我々を叱咤激励して頂いた。
「“武士道”に起源を持つ精神的に高い文化を持つ日本人に今欠け
ているもの、即ち、自分の精神を高め、私(わたくし)ではない
私、公(おおやけ)のために日本人の一人として奮闘努力せよ」と。
「権力を私用せず公のために私を尽くすのが政治家」後藤新平の
言に「言葉は心の象徴」、日本の政治家はいつまで心なき言葉を
発し続けるのだろうか。日本を愛し日本と台湾の梯となった哲人
政治家の死を惜しむ声は今も絶えない。
●台湾新時代を目指す蔡総統
(●台湾総督府)
■■「アジアの核心,台湾」
●今も昔も日本にとって同胞台湾の存在は重要である。
植民地主義を正当化するものではないが、日帝時代の台湾におけ
る新たな国造りへかけた日本人の理想と思いには学ぶべきことも
多い。日本は多額の国家予算と人財、そして技術の粋を投入、全
力で新生台湾の国造りに取り組んだのである。
また初等から高等教育においても日台の差別なく教育制度を導入。
台北帝大は阪大、名大よりも古く設立されている。台湾からは科
学系ノーベル賞学者も出ている。
台湾人が尊敬する日本人として
・児玉源太郎、
・新渡戸稲造、
・後藤新平、
そして明石元二郎を始め八田與一、長谷川謹介、杉浦茂峰、
小林三武郎、浜野弥四郎、森川清二郎、広枝音右衛門等々錚々た
る顔ぶれであり、また日台の歴史に残る逸話、美談は後を絶たな
い。
第4代台湾総督児玉源太郎がその補佐役である民政長官に指名し
たのが後藤新平であった。後藤新平は「生物学の原則」に基づい
て台湾の経済改革とインフラ建設を強力に推し進めた。
第一に風土病の撲滅(マラリア)のため上下水道のインフラ整備
を進め、上下水道は台湾全土に完備された。
第二に専売制度の導入によるアヘン吸引者を減少させた。
第三に台湾製糖株式会社を設立し新渡戸稲造(後に「台湾製糖
の父」と称される)を招聘、新渡戸博士は、精糖産業を台湾の花
形輸出産業にまで育てあげた。
第四に都市改造の手始めとして台北市の三線道路を整備した。
敷設には「台南上水道の父」と台湾で今も尊敬を集める浜野が指
揮している。三線道路は名を変え今も使用され続けている(中山
南路、忠孝西路等々)。
“後藤の大風呂敷”と言われた後藤新平の真骨頂、彼が描いた青写
真のもとに新生台湾の骨格が出来上がっていったのだ。
●そして今の台湾を存立せしめた元大日本帝国陸軍中将根本博を
忘れてはならない。大東亜戦争敗戦直後、蒋介石の配慮もあり根
本は在留邦人の内地への帰還と北支那方面35万将兵の復員を無事
完了させた。
その後、共産党との闘争で敗れ台湾へ逃れた国民党であるが共産
党侵攻の危機にさらされていたのである。既に帰国していた根本
は蒋介石への恩義に報いるため1949年単身台湾へ渡り(密航)
中国名林保源として第五軍管区司令官顧問、中将に任命される。
根本は、台湾防衛計画として廈門を放棄し、防衛線は金門島を拠
点とすることを提案。10月24日の古寧頭戦役を自ら指揮し、上陸
してきた人民解放軍を完膚なきまで打ち破り、金門島を死守した
のである。
根本の帰国後も金門島を巡り激戦が展開されるが、台湾側は人民
解放軍の攻撃を防ぎきり現在に至る台湾の存立が確定したのであ
る。
●いま、我々日本人が認識しなければならないことは、
「台湾は中国からの独立を求めているわけではない。
既に、台湾は独自のアイデンテイテイーを持つ台湾人の主権国家
であり、正に国家主権を守ろうとしている。」だけであるという
こと。
そして大陸の台湾侵攻には尖閣諸島も含まれている、
即ち日本も当事者である。台湾の主権維持は東アジア地域の平和
と安定だけでなく、そして我が国の安全保障政策上最も重要な課
題なのである。
(●金門島から見た中国本土)
後に、後藤新平は関東大震災で被災した東京を世界最大規模の帝
都として復興させるなど日本においても縦横無尽の活躍を見せる
が、新平はベルサイユ条約締結直後には早くも先の大戦を直感予
想し、国内にあっては我党内閣、不自然な多数党による国政の私
物化を徹底的に批判し、政治の改革と日本国の立て直しを訴えた。
●内憂外患こもごも到る「国難来(こくなんきたる)」におい
ては、「国難を国難として気づかず、漫然と太平楽を歌っている
国民的神経衰弱こそもっとも恐るべき国難である。」と憂い、
そして、「最大の国難として挙げざるをえないのは、
・政治家の腐敗・
・政治の堕落
である」とも訴えている。
まさに今の日本と同じ状況ではないだろうか。
台湾人が同じ日本人であった時代から日本と台湾は同胞。引き続き、
互いに両国が尊敬と親愛の念を抱き共存共栄を図ってゆくべきもの
と切望する。そして今こそ、喫緊の課題として日本人自身が現実を
直視し“日本人であることの意義”を問い直す必要があるのではない
だろうか。
■■■■■■■■■関連資料■■■■■■■■■
■■台湾の概要」
●面積 3万6千平方キロm(九州よりやや小さい)
・人口 約2,340万人(2021年12月)
・言語 中国語、台湾語、客家語等
・宗教 仏教、道教、キリスト教
●略史
(年月) (略史)
・1949年 台北に「臨時首都」を遷都
・1971年 国連を脱退
・1975年 蒋介石総統死去
・1987年 戒厳令解除
・1988年 蒋経国総統死去、李登輝副総統が総統に就任
・1996年 初の総統直接選挙で李登輝が当選
・2000年 民進党の陳水扁が総統に当選
・2004年 陳水扁が総統に再選
・2008年 国民党の馬英九が総統に当選
・2012年 馬英九が総統に再選
・2016年 ●民進党の蔡英文が総統に当選
・2020年 ●蔡英文が総統に再選
●政治体制
政体 民主共和制。五権分立(行政、立法、監察、司法、考試)
総統 蔡英文(副総統:頼清徳)
議会 立法院長:游錫堃
・外交
大洋州(4か国)欧州(1か国)中南米 (8か国)アフリカ(1か国)
・ 軍事力
予算 約3,726億台湾ドル(2022年度、台湾国防部発表)
兵力 約16万人(『ミリタリーバランス2021』等による)
●経 済
名目GDP7,727億米ドル(2021年、台湾行政院主計處)
一人当たりの名目GDP 33,004米ドル(2021年)
・ 主要産業(製造業)
電子製品、化学品、鉄鋼金属、機械
・ 実質経済成長率6.45%(2021年、台湾行政院主計処)
■■台湾の軍事環境」
■■台湾と日本の観光(図説)
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