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老眼鏡

 日曜日、妻の買い物が終わった後、エレベーターを探していたらメガネ売り場の前を通った。
「メガネ、5250円から」
と大きな貼り紙が何枚も貼ってある。
「5250円て安いよなあ」
いとも簡単に食いついてしまった私は、傍らの妻に同意を求めた。
「そうだね。見てみたら」
陳列棚にずらっと並んだメガネにはみな5250円の値札がついている。
「こんなに安くて大丈夫かなあ」
とあまりの勢いに一瞬腰が引けた私は妻に尋ねた。
「Nikonのレンズって書いてあるからいいんじゃないの」
「Nikonってカメラじゃないの?」
「レンズも売ってるんじゃないの?木村さんがCMやってるし、大丈夫だと思うなあ」
などと説得力のない言葉しか返ってこなかったが、まあ物は試し、と店員さんに聞いてみた。
「老眼鏡もできますか?」
「はい、できますよ。視力検査しましょうか?」
「うん・・・。やってもらおうかな・・」
 遠近両用のメガネが真っ二つになって以来、普段は昔かけていた近視用のメガネをかけているが、塾の授業中はそのメガネでは近くの文字がまったく読めないためメガネを外して裸眼でいる。それでも特に不自由はないだろうと、高をくくっていたが、生徒から質問を受け、説明しようとするときに、少し離れた文字が見えにくく、思った以上に難渋することが多くなってきたので、この機会に老眼鏡を買っておいたほうがいいかな、という気になったのだ。
 若い女性店員がなかなか立派な機械で検査してくれるので、これなら安心かな、そんな気になってきた。10分くらいかかってあれこれ視力を測ってくれて、
「これでどうでしょう」とレンズを入れたメガネを渡してくれた。
「うん、よく見える」
「それじゃあ、これでメガネをお作りしてもいいでしょうか?」
「はい、お願いします」
「それじゃあ、フレームを選んでくださいね」
 いやに簡単に決まってしまったが、5250円ならたとえ失敗でもさほど痛くはない。それにいくらHUGO BOSSのフレームだと気取っていたって、まっ二つになってしまえば何の意味もない。これくらいのメガネで十分だ・・。フレームを適当に見繕って
「これでお願いします」
と店員さんに渡したら、
「40分ほどで出来上がりますので、お待ちください」
そんなに早くできるの?なんだかまた少し不安になったが、早いに越したことはない。適当に時間をつぶして戻ってきたら、本当に40分で出来上がっていた!!

 

 何の変哲もないごく普通のフレームだが、塾の授業でしか使うつもりはないメガネだから、見てくれなんてどうでもいい。ただただ使っていて突然まっ二つになるなんてことがなければ十分だ。
「30cm離れた小さな文字が読めるようにしました。階段を降りるときや車の運転をするときには危険ですので、外したほうが安全です」
などと丁寧に使用上の注意まで教えてくれた。しかも写真右のメガネケースまで付けてくれたんだから、このメガネを1個売っていったいいくらくらい儲かるのだろう・・などと余分なことまで詮索したくなる。後で調べたら、このメガネを買った店は「Coolens」という名のメガネ屋だと分かったが・・。

 確かに手元の小さな字はよく見えるようになった。これならメガネをかけたまま、生徒たちの問題集の答え合わせも十分できる。だが、問題はこのメガネをかけたまま遠くを見ると、まるで何も見えなくなることだ。やっぱり遠近両用のメガネの方が使い勝手がいいようだが、今回は老眼鏡と近視用メガネとを上手に使い分けようと決めたのだから、しばらく多少の不便は我慢していこう!!
 
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