【11月10日投稿分】
納骨堂に参拝に来ていた檀家高校生男子が、観音堂の縁側に座って皿倉山(北九州、山頂からの眺めは、日本新三夜景)の方を眺めながら、何か考え事をしている様子だったので「よう、来てたのか」と声を掛けると、拙僧を横目で見て「ねえ、住職。俺の姉ちゃん(28歳)なんだけど、結婚の話がきてるんだ」「何だい、嫌なのか」「いやいや、そうじゃなくてさ。父さんも母さんも、相手の男性がバツ1なのが、引っ掛かってる様子なんだ」と。
更に、高校生君が「何か、その拘り方が、俺には納得出来ないんだよな。いい人(男性)なんだよ。戸籍に傷が『付いてる、付いてない』だけで、二の足を踏んでしまうなんて。いや、親の気持ちがわからない訳ではないんだよ。だけど、よく世間で『今までに、何人とお付き合いをしましたか』という質問に対し、平然と『5人かな。7人かな』などと答えてる人達がいるでしょ。あれって、言い換えれば、戸籍に記されてないだけで『俺は、私は、バツ5、バツ7』と言ってるに同じだよね。戸籍に傷が付いた時だけ、相手を見る印象が変わるは、納得出来ないんだよな」「ほう、ほう、そういう事か」「だって、その相手の男性、俺、知ってるんだよね、俺の両親も。凄く爽やかでいい人なんだよ。住職が時々、法話で言ってるじゃん。『人間にはそれぞれ事情がある。事情の塊が、人間』って。その男性がバツ1だっていう事を知らなかっただけで、その男性の人となりは、俺の家族は皆、承知を。1つ(バツ、噂など)上に乗っかっただけで、二の足を踏む事になるのかな。まあ、親にしてみれば、娘の事だから、そうなっても仕方がないのかな。だけど、叩いて埃の出ない人間なんて、誰1人もいないでしょ。埃の程度の問題があるだけで」と。
続けてその高校生君が「ところで住職『見た目だけで、相手を決めつける』と言えば思い出したんだけど、俺の知人にね、派手化粧、長爪のバリバリギャルがいてね。ところがその娘(こ)、料理、裁縫、家事全般、全てを卒なく熟すんだよね。その娘(こ)に『お前、凄いな』と言うと『お母さんに習った、というより、お母さんを見て育ったからかな、自然に身に付いただけだよ。お母さんは、お婆ちゃん(父親の母親)に仕込まれた、と言ってた』と。住職が時々法話で『躾(しつけ)は、するものじゃない。躾は、見せるもの』と。人間、見た目で判断しちゃ、いけないよね」と、この高校生君が。「だよね。プロレスラーや格闘家など、一見怖そうに見えるが、優しい人、多いもんな」と。
更に拙僧、この高校生君に「檀家で20代、30代の独身女性陣に『結婚するなら、やっぱ、バツ付きは嫌かい』と尋ねると『大半の人は、基本、そうじゃないの。だけど、3組に1組は離婚する時代でしょ。バツ1なら、色々な面で許容範囲かな』と。『色々とは』と聞き返すと『離婚って、大変なんでしょ。バツ1さんなら、2度とあんな思いはしたくない、と奥さんや家庭を大事にし、色々とわが心で折り合いを付けてくれそうな気がして。結婚、離婚経験があるも、魅力の1つかな。但し、バツ2以上はあかん。反省、改善の心はないのか、と思ってしまう』と檀家独身女性陣は言ってるよね」と、この高校生に。
対し、高校生君が「なるほどね。ところで、住職。話は変わるけど、参拝して来る度に思うんだよね。不動明王の顔が、喜んでいる様に見えたり、怒っている様に見えたり、哀しんでいる様に見えたり、そんな風に見えるのは、何故なの」と。「例えば、なんか悪さして帰宅した父ちゃんが子供に『母さんだが、今日は機嫌が悪そうだな。何かあったのか』と。すると子供が『何を言ってるの。母さんは、いつものまんまじゃん』と。お不動さんも、お母さんも、顔など何も変わっとらん。見る人の心次第で、顔(印象)が変わった様に見えるだけだよ」「なるほど、そういう事か。父さんも母さんも、姉ちゃんの相手が、バツ1とわかった瞬間に、これまで何年も抱き続けてきた男性への好印象が、あっという間に吹っ飛んだんだ。そうか、そうか、そんな事か。という事は、ここは一丁、俺の出番って事だよね」と納得して、高校生はお寺を下って行きました。この話は、つい先日の話なので、結果はまだ、拙僧のところにまでは、届いておりません。届いたら、どこぞの法話の中で。
物事が大きく動く時(歴史も含め)には、色んな役割の人間が、必要になりますもんね。さて、投稿写真は、わが寺の観音堂から見る皿倉山です。
次回の投稿法話は、11月15日になります。