沖縄の自己決定権(4)
呑助 沖縄の人々は、明治維新以来、第二次世界大戦敗北までに日本国民が背負った苦しみの中の最も辛く哀しい苦しみを背負い続けているんですね。
侘助 いや、今も背負い続けているんじゃないのかな。日本にある米軍基地の大半が沖縄に存続し続けているんだからね。
呑助 サンフランシスコ平和条約が発効した4月28日を記念してこの日を「主権回復の日」として安倍政権が祝おうとしたとき、沖縄の人々は怒りを表明しましたね。本土の人々と沖縄の人々との間には気持ちの上で大きな落差のようなものがあるんでしょうね。
侘助 当然のことだと思うよ。だってそうでしよう。沖縄は米軍の占領下におかれたままになってしまったんだからね。四月二十八日を沖縄の人々は「屈辱の日」というようになったんだから。1952年というと、朝鮮戦争真っ最中にサンフランシスコ平和条約は調印されているんだからね。
呑助 朝鮮戦争ですか。神武以来の好景気だという言葉を覚えていますね。
侘助 15年戦争前、朝鮮は日本の植民地だったから、英米仏ソの連合国軍が朝鮮半島に向って進軍してきた。ソ連軍は北から、米軍は南から朝鮮半島に進軍してきた。北緯38度線で米ソの占領地域を分けたんだ。これが朝鮮分断の始まりだよね。北朝鮮側が南朝鮮を解放するんだとして始まったのが朝鮮戦争だ。日本が朝鮮半島を日本の植民地にしていなかったら、米ソに朝鮮が分断されることもなかった。そういう点では、朝鮮の分断ということの責任の一端が日本にはあると思うな。朝鮮戦争が始まると沖縄から米軍は進軍していった。米軍基地の拡張が無慈悲に行われた。沖縄の人々の土地を銃剣を突き付けて奪い、基地を建設していった。その中でサンフランシスコ平和条約が交わされたんだからね。沖縄の人々は本土の政府から切り捨てられたと思うのは当然だと思う。
呑助 朝鮮戦争はまだ終わっていないと言うのは本当ですか。
侘助 1953年に休戦協定が成立し、その状態が今も続いているわけなんだ。北朝鮮は臨戦態勢下にあるわけなんだ。いわゆる緊急事態状況が60年以上に渡って続いているんだ。戦時下にあるという気持ちが北朝鮮指導部にも国民にもあるのと違うかな。
呑助 日本人には分からない感覚ですね。
侘助 世界認識を持つには周辺諸国の人々の気持ちのようなものを理解することなしには形成できないと思う。
呑助 国際感覚でしようかね。
侘助 北朝鮮指導部の人々の緊張感をほぐすような対策を取って行かないといつまでたっても北朝鮮暴走の危険性は存続していくんじゃないかな。
呑助 そういう北朝鮮の政治の在り方と沖縄の新基地建設というのは関係があるのかもしれないですね。
侘助 サンフランシスコ平和条約によって沖縄には琉球政府が成立するが、米軍民政府の施政権下に沖縄はあった。沖縄の人々は日本国民ではなかった。
呑助 沖縄の人々は悔しい思いをしたでしようね。
侘助 だから、サンフランシスコ平和条約が発効した四月二十八日は「屈辱の日」なんだ。
呑助 そういう沖縄の人々の気持ちに想いを寄せない安倍政権というのは本当に日本国民を代表する政府なんでしようかね。
侘助 本当だよね。1972年まで沖縄の人々は米軍の施政権下にあったんだからね。翁長沖縄県知事が菅官房長官に沖縄の歴史を語ったらしいんだが、菅官房長官は「私は戦後生まれの者だから、沖縄の歴史といわれてもピンとこない」と、言ったようだ。
呑助 沖縄の人々の気持ちが分からないという事でしようか。
侘助 過去に目を閉ざす者は現在に対しても盲目になる。ブァツゼッカー元ドイツ大統領の言葉だ。