醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  230号   聖海(白井一道)

2016-03-08 16:23:03 | 随筆・小説

  沖縄の自己決定権(7)

呑助 沖縄の方には、申し訳ないが、普天間の米軍基地を閉鎖するためには辺野古に米軍基地を移さざるをないんじゃないかと、おっしゃるお客さんが多いですね。
侘助 自民党の政治家たちは皆、世界一危険な米軍基地「普天間」を一刻も早く閉鎖するため、辺野古に米軍基地を建設したいと述べている。
呑助 自民党の主張が世論になっているんですね。
侘助 政権を持っている政党は力を持っているから、力のある者の主張に同調する新聞やテレビが出てくるのが当然なのかもしれない。これらのメディアが世論をつくる。世の中の大勢に同調しなければ、人間は生きていけないからね。
呑助 当然のことですね。
侘助 しかし、考えてみれば、世界一危険な米軍基地は直ちに閉鎖すべきなんだ。代替地を差し出さなければ、世界一危険な米軍基地を閉鎖しないという主張はどうなんだろう。沖縄の人々の人権を尊重する立場に立つなら、代替地がなくとも閉鎖するのではないだろうか。沖縄の人々、いや日本人の生命や安全よりも米軍基地の存在の方が大事だという主張が代替地の提供じゃないのかな。代替地、辺野古に米軍基地を建設するまで、普天間の米軍基地は閉鎖しないという主張が自民党政治家たちの主張だと思うよ。
呑助 確かにそうですよ。沖縄の人々の生活のど真ん中に、学校や病院、住宅地の中にオスプレイが離発着する米軍基地があるんですからね。
侘助 米軍基地は日本の安全と平和を守ると言うが、米軍基地の存在が沖縄の人々の生活を脅かしている。米軍基地の存在によってどれだけ、沖縄の人々は危害をくわえられてきたのか、交通事故を起こした米兵は基地に駆け込めば、日本の警察によって逮捕されることがない。大学に墜落したヘリコプターを日本の警察は調べることができない。大学構内に日本の警察が入ることができない。日本の安全と平和を守る米軍が日本人の生命と安全を脅かしている。自民党の主張する安全保障はちっとも日本人の生命と安全、平和を実現していない。それどころか、日本人の生命や安全、平和を脅かしているんだ。少なくとも沖縄にあっては、ね。
呑助 沖縄の人々は本土の日本人の犠牲になっているということですか。
侘助 日本人の一部の人たちの犠牲の上に日本の平和や安全が保障されているんだという主張を犠牲にされる一部の人たちは絶対に受け入れられるものではないだろうね。
呑助 安倍氏が自ら私が犠牲になって日本の平和と安全を守りますと言うのなら、感謝する日本人はいるかもしれませんね。
侘助 自民党支持者や公明党支持者が私たちは日本の平和と安全のために犠牲になりますと主張し、それらの人々が自らの全財産を沖縄の人々に差し出し、米軍基地を沖縄に建設させて下さいと申し出れば、沖縄の人々の中には考える人がでてくるかもしれないなぁー。
呑助 そりゃ、面白いですね。
侘助 でしょ。だから一部の人々の犠牲の上に成り立つ安全保障には嘘があるんじゃないかと思っているんだ。
呑助 沖縄の人々の犠牲の上に成り立つ安全保障ですね。
侘助 軍事力が安全を保障するという考えに間違いがあるんだ。軍事力による安全保障は必ず一部の人に犠牲を強いる。兵隊は殺される危険性が絶えずある。兵隊の犠牲の上に他の人々の安全や平和が実現するという考えだ。これは国民を分断する。犠牲になった者は敬われ、尊重されてしかるべきだと思うだろうし、犠牲にならなかった者たちもまた自分たちは辛い思いをしたと思っているから、犠牲になった者をそれほど敬いはしないだろうし、尊重もしないだろう。駅頭で恵みを乞う傷痍軍人たちは少しも敬われ、尊重されてはいなかった。