醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  237号   聖海(白井一道)

2016-03-16 13:43:06 | 随筆・小説

 今日の一句 祖母の声焼いて食べるか蕗の薹(ふきのとう)  聖海

侘助 福島では甲状腺ガンの子供が166名もいるそうだね。その内110名を超える子供が手術をしているらしい。
呑助 そうなんですか。新聞やテレビであまり報道されないみたいですね。
侘助 いつだったか、BSフジのプライムニュースを見ていたら、自民党参議院議員武見敬三氏がむちゃくちゃしゃべっていた。学生団体シールズを代表して京都大学大学院の女性が福島で甲状腺がんの子供が多数いると発言したと同時に猛烈に反論を始めていた。
呑助 武見敬三というのはなかなかの論客ですよ。
侘助 なんとなく、頓珍漢なことを話している感じがしたけれどね。
呑助 医師会のドンと言われた武見敬三の息子ですよ。
侘助 そうらしいね。財務大臣麻生太郎と縁戚関係にあるんでしよう。
呑助 そうらしいですね。
侘助 言葉は多く、長いんだが、話している内容は空疎なんだ。疫学調査の結果、福島原発から排出された放射能によって甲状腺がんが発病しているということは証明されていないということを声猛々しく言っているだけなんだ。
呑助 民主党の枝野幹事長がテレビで発言していましたね。何回も『直ちに健康には影響ありません』と言ったように直ちに健康障害が起こらなかったが、五年たって大きな影響が出て来たんでしようかね。
侘助 そうだと思うよ。
呑助 そうなんでしょうね。
侘助、甲状腺がんの子供を抱える家族会が最近発足したようだ。今の状況では甲状腺がんの子供を抱える家族は孤立しているらしい。親として自分の子供が甲状腺がんだと言えない雰囲気が福島にはあるようなんだ。
呑助 水俣病と同じような状況なんですかね。
侘助 そうだよね。有機水銀中毒だということが判明するまでには水俣病患者を抱える家族は孤立してようだからね。
呑助 差別もされたんでしよう。地域の住民たちからね。
侘助 そうなんじゃないのかな。発病者は少数者だかね。健常者にとっては、不安をかきたてられるような気持ちになるからね。大丈夫だと自分に言い聞かせるためにも発病者を排除したくなるんじゃないのかな。
呑助 家内は福島の野菜や魚は買いませんよ。安全だと言ってもウソかもしれないと信じていませんよ。
侘助 テレビなんかじゃ、風評被害と言っているが、実害の心配があるから買わないんじゃないのかな。
呑助 そうですよ。被害を受けた時に保障してくれるわけじゃありませんからね。
侘助、甲状腺がんの手術を受けた少女の中には顔に大きな影響を与えるような手術痕を残している子がいると言う話だよ。
呑助 そりゃ、可哀そうな話ですね。
侘助 甲状腺がん家族会代表世話人である弁護士の河合弘之さんが発言していた。このような家族会が発足すると凄まじいバッシングがある。私は強いからいくらバッシングが強くとも跳ね返すことができる。これらのバッシングから家族とその子供たち、支援する医師を守る盾となるとね。
呑助 凄い人ですね。
侘助 民主主義というのは少数者の言い分を無視しないということだ。この少数者の主張が正しいことがある。正しい少数者の主張を支持してくれる強い人が世の中にはいるんだね。売名行為だと揶揄する人がいるがね。
呑助 いますね。哀しい事ですよ。困っている少数者に援助の手を差し伸べることを批判するなんてね。
侘助 医師の中にもいる。岡山大学医学部教授津田敏秀さんは原発事故による放射能を浴びた結果、甲状腺がんの発病があったと疫学的に証明した論文を発表しているようだよ。