醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  231号   聖海(白井一道)

2016-03-09 14:45:58 | 随筆・小説

   沖縄の自己決定権(8)

侘助 ノミちゃん、現日本国憲法には、どのような特徴があるのか、ご存じですか。
呑助 いや、私は床屋ですからね。知りませんよ。中学のころ、習ったかもしれませんが、覚えていることは何もありませんよ。
侘助 戦前の日本社会には民主主義が無かったからね、民主主義を実現するような特徴が現日本国憲法にはあるんだ。
呑助 民主主義ですか。
侘助 何と言っても一番大切ななのは、国民が主権者だという主張だよ。
呑助 主権者とは何ですか。
侘助 政治を決定する最終的な権力を持つ者を主権者というんだ。
呑助 辺野古に米軍基地を作るか、どうかを決定する人のことですか。沖縄の人々が日本国民である以上、辺野古に米軍基地を作らないでくれ、これが沖縄の民意だと主張するなら、主権者である沖縄の人々の意志を政府は尊重しなくちゃ、いけませんね。
侘助 国の政治の在り方はそんなに単純なものではないがね。
呑助 なるほど。そうかもしれませんね。
侘助 国の政治の在り方を最終的に決めるのは国民だということが国民主権ということなんだ。
呑助 国民が国の主人公だってわけですか。
侘助 それから、平和主義かな。
呑助 平和主義というのは戦争はしないということですかね。
侘助 その通り、日清戦争に始まり、日米戦争までおよそ50年間、戦争しどうしだったからね。
呑助 明治維新から太平洋戦争に敗戦するまで、およそ何年ぐらいですか。
侘助 1968年が明治元年、第二次大戦に日本が敗戦したのが、1945ねんだから、80年弱かな。
呑助 今年は、戦後70年ですね。戦後というのは案外長いね。明治、大正、昭和というと大きく日本社会が変わり、大昔のような印象がありますが、時間としてみれば、最近の出来事のような感じがしますね。
侘助、世界は大きく変わったんだ。侵略戦争を堂々としていた時代が第一次世界大戦で終わりを告げたんだ。第一次大戦は総力戦の戦いだといわれてね、国民すべてが戦力として活躍したから、対戦国の非戦闘員である国民を殺傷することが大胆に行われたからね。その戦争の惨禍が凄まじかったから第一次大戦後、侵略戦争はしてはいけないということが国際社会の共通理解になった。
呑助 他国を侵略してはいけないという共通理解が国際社会にあるんですか。
侘助 侵略戦争はしてはいけないというこの国際社会の共通理解が不十分だったから、第二次世界大戦が起きたんじゃないかと思っているんだけれどね。
呑助 そういうもんでしようね。侵略戦争をしてはいけないと言っても強い軍事力を持つ国は、どうしてもその軍事力を使いたいという誘惑がありますよ。
侘助 第一次世界大戦後の1928年に不戦条約が結ばれたんだ。この条約に当時の国々の90%にあたる63カ国が加盟した。その第一条には「国際紛争解決のために戦争に訴えることはできない、かつ、お互いの関係において、国家の政策の手段としての戦争を放棄することを、それぞれの人民の名において厳粛に宣言する」とこのようにあるんだ。日本国憲法9条とほぼ同じと言っていいくらいでしよう。
呑助 本当ですね。
侘助 それから基本的人権 の尊重。日本国の憲法の 特徴は一つ、国民主権、二つ、平和主義、三つ、基本的人権の尊重、戦前は人権が尊重されることが無かったからな。四つ、地方自治があるんだ。中央政府と地方公共団体とは対等な関係にあるんだ。個人にしても、地方公共
団体にしても、国の成員ではないというのが、対等な関係で話し合い、合意を形成し、政治的決定をする。これが民主主義だ。