醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  228号   聖海(白井一道)

2016-03-06 17:17:26 | 随筆・小説
   
   沖縄の自己決定権(5)

呑助 辺野古新基地建設工事を安倍政権は一旦休止するようですね。
侘助 三月四日、福岡高裁那覇支部で安倍政権と沖縄県が和解が成立したようだね。
呑助 政府と沖縄県は何を争っていたんです。
侘助 代執行訴訟をしていたんだ。
呑助 代執行訴訟とは、何なんですか。
侘助 前沖縄県知事であった仲井眞さんが2013年12月、辺野古埋め立てを承認した。この辺野古埋め立て許可を翁長沖縄県知事は2015年10月13日、辺野古埋め立て取り消しをした。すかさず防衛省那覇防衛局は取り消しを受けて、公有水面埋立法を所管する国土交通相に対し、県の取り消しの効力を止める執行停止と、無効化を求める審査請求した。国交大臣は直ちに那覇防衛局の請求を認め、翁長知事の辺野古埋め立て取り消しの無効化を決定した。この決定を受け、沖縄県は辺野古埋め立て取り消しを無効化した決定は違法だと那覇地方裁判所に訴え出た。この事態を打開すべく、翁長沖縄県知事が辺野古埋め立て取り消しを曲げない以上、安倍政権は沖縄県知事に代って辺野古の海を埋め立てることができるように沖縄県知事に代ることができるよう裁判に訴えた。これが代執行訴訟というものなんだ。
呑助 政府と県の訴訟合戦になっていたんですね。
侘助 政府と県が争う。哀しい話だよね。民主主義というのは地域住民の声を聞いて行う政治が民主政治というものなんだろうけれどもね。何としても米軍のための辺野古新基地建設を政府は地元住民の意思を無視して強行しようとしているんだからね。
呑助 でもよかったですね。政府が折れたんでしよう。
侘助 まぁー、民主主義の体裁はとれたということかな。
呑助 その仲裁案というのは、どんなものだったんですかね。
侘助 琉球新報によると県と国は埋め立て承認取り消しをめぐってそれぞれ起こした訴訟を取り下げる。沖縄防衛局は取り消しに対する審査請求・執行停止を取り下げ、工事を直ちに中止する。国は承認取り消しについて是正を指示。県は不服があれば指示の取り消し訴訟を起こす。双方、判決に従う。このようなものだ。
呑助 じぁー、政府は、すぐ「承認取り消しについて是正の指示」を出すでしようね。
侘助 取り消し是正に不服だと沖縄県は支持の取り消しを求めて訴訟を起こすことになるんじゃないかと思うね。
呑助 でも、その訴訟期間は辺野古埋め立て工事は中断されるわけですか。
侘助 だから、辺野古埋め立て、新基地建設に反対している沖縄県の住民たちの間には、中断でしかないわけだから、油断してはいけないと考えている人々が多数を占めているようだよ。
呑助 きっと、今まで政府に騙され続けてきた歴史があるからでしようね。
侘助 安倍政権はなぜ福岡高裁那覇支部の仲裁を受け入れたのかというと、一つには、沖縄防衛局が国交大臣に出した県の取り消しの効力を止める執行停止と、無効化を求める審査請求に正当性が認められない可能性があるのでないかと思う。沖縄防衛局というのは国の行政機関の一つだからね。行政機関に審査請求できるのは国民であって、行政機関ではないからなぁー。
呑助 行政機関には審査請求できる権利がないということですか。
侘助 こんなことがありえちゃいけないことだよ。だから安倍政権は一歩後退したが、早速、「辺野古移設が唯一の選択肢という考え方に変わりはない」と述べている。もう一つには、参議院選挙を睨んでいるのかもしれない。参議院選挙で三分の二の議席を獲得すれば、憲法を改正し、一気に独裁政権を誕生させ、有無を言わせず、辺野古の海を埋め立て強行するつもりなのかもしれない。