「緊急事態宣言」がさらに1カ月程度延長される事態となっています。厳しく、深刻な事態の克服の努力が続けられています。同時に、「コロナ後」の議論が始まっています。4月28日の「毎日」紙の「シリーズ 疫病と人間」に、山極寿一京都大学長の寄稿文が掲載されました。
山極寿一学長は、ゴリラ研究で世界的に知られている学者で、以前に「しんぶん赤旗」紙上でも語っていたことを記憶しています。寄稿文を読み教えていただき、考えさせられることがいくつもありました。その一部を紹介させていただきたいと思います。
山極学長は、まず、次ぎように述べています。
「この数十年ウイルスによる新しい感染症が増加しているいもかかわらず、今回大きく混乱してしまった原因は何なのか。更に、たとえこの感染症が終結しても、もはやこれまでの状態に簡単に復帰できるとは思えない。強固な感染症対策を打ち立てるとともに、新たな経済秩序、国際関係、暮らし方を早急に考えていく必要がある」
【猿の惑星】及び【単独と集団】については、省略させていただきます。
【開発から感染へ】
「(前半部分は略)更に、人間の動きが活発になったことも、未知のウイルスが人に感染する可能性を広げた。コンゴでもガボンでも昔から未知の感染症が知られていた。しかし、森の奥では人々が広範囲に移動せず、感染症が発覚すれば村全体を焼き払ってきた。ところが、森林伐採によって、森の中に縦横無尽に大型トラックの走る道路ができ、都市と物資の輸送が簡単になった」
「また、携帯電話が普及して奥地でも都市と連絡できるようになった。伐採地は現地に雇用を生み出し、発電機などが導入されて都市型の生活が可能になる。電気のある暮らしと現金経済に慣れた人々は、伐採が止まると困難に直面する。現金収入がないとテレビも冷蔵庫も洗濯機も使えなくなり、料理にも困る」
「そこで、手っ取り早い解決法として野生動物を狩猟し、伐採道路を利用して都市で売りさばくようになった。携帯電話が都市からの注文を受けるのに利用され、銃も簡単に入手できて猟の効率が上がる。ウイルスに感染した野生動物が都市に出荷され、感染した村人たちも発症する前に都市との間を移動する機会が増え、あっという間に感染症が広がる」
「こうしてアフリカの熱帯森林に限られていたエボラ出血熱は、国境を越えて米国にまで出現したのである」
【移動や集まりに乗じ】
「(前段部分は略)新型コロナウイルスは、現代の人間社会の盲点をついている。ゴリラやチンパンジーの場合は、彼らが移動できる範囲に感染が限られていた。だから、感染個体の死滅によって感染は止められ、社会や暮らし方が大きく変わることはなかった」
「しかし、人間社会はグローバルな人や物の動きが加速して、爆発的な感染が起きやす状況になっている。~中略~新型コロナウイルスはこうした人間の営みを全否定しようとしているのだ」
【つながる幸福】(省略)
【大切なことは】
「もうひとつの懸念は、コロナ後に各国が猛烈な経済復興対策を取り、それがこれまで以上に地球の崩壊を招くことである。近年のウイルス性の感染症は、自然破壊によって野生動物との接触を加速したことが原因である。更に自然資源の開発が続けば、深海や氷河の下に眠っている未知の微生物やウイルスを引きずり出してしまうかもしれない」
「開発の手を抑えても、地球温暖化は生物の動きを変え、新たな脅威をもたらす可能性がある。いま私たちに必要なのは、グローバルな地球と国の動きと、私たち自身の身近な暮らしの双方で、人間にとって大切なことは何かをじっくり考えることである。コロナ後に、それが決定的な成果を生むだろうと思う」
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