元外務省国際情報局長の孫崎 享さんが8日付「しんぶん赤旗」に登場し、集団的自衛権の行使容認を憲法解釈を変更して強行したことに対して、外交問題の専門家として理性的でまた、体験に基づく信念で厳しい批判を行っています。 以下、紹介させていただきます。
「集団的自衛権の行使を容認する解釈改憲について、憲法学者だけでなく内閣法制局長官を務めた人たち、つまり体制の中心にいた人たちが、『法治国家の根幹を揺るがす』とはっきりいっています。 こうしたことはかってなかったことです」
「安倍晋三首相は朝鮮半島有事などで避難する日本人を乗せた米艦を守ると説明しますが、こんなことはありえません。 米国務省は『われわれの優先は米国市民を助けること』『米国市民でない友人や家族が乗り物に乗れるとは思わないでください』と説明しています。 『米軍が救助するのは現実というよりハリウッドの脚本』ともいっています」
「各国の日本大使館は、邦人の避難計画を持っていますが、米軍に頼る計画はありません。 いまや海外に住む日本人は150万人。 年間180万人が海外渡航する時代に、その安全を守るために武力行使が必要だというのなら、『自国民保護』で勢力を広げていった戦前の植民地支配の論理そのものです」
「”中国の脅威があるから抑止力を高めるために集団的自衛権の行使が必要だ”と言う人もいます。 しかし、仮に尖閣諸島をはじめ日本が攻撃された場合は、実際に日米安保条約が働くかどうかは別にして、条約第5条で米国が共同作戦に出ることが決まっています。 日本が攻撃されていない集団的自衛権の行使は前提になっていません」
「ですから集団的自衛権の行使は、『日本を守るため』ではありません。 米国が閣議決定を歓迎したように、集団的自衛権は、自衛隊を米軍の”傭兵”にすることが本質です」
「今回の閣議決定にあたり、外務省の元高官が官邸や内閣法制局に入り、首相のブレーンとして解釈改憲を推進しました。 外務省はかつてイランと親密な関係をもつなど、かならずしも米国一辺倒ではありませんでした。 いまは米国の意向で動いています。 日本の国益はこうだと自分で考えていません」
「米国は冷戦崩壊後、世界の秩序づくりで日本を使うという考えを追求しています。 米国のパナマ侵攻(1989年)の際、外務省高官が、『パナマごときで日米関係を壊すな』といって省内の反対論、中立論をつぶしました。 以来、この考えが定着しています。 『憲法ごときで日米関係を壊すな』という発想です」
「しかし、日米同盟を前面にした外交は、外交といえるのでしょうか。 外交は戦争にしないで問題をどう解決するかです。 外交では相手の主張があります。 自分の論理を主張するだけでは、望ましい国とはなりません。 米国がいう『悪の帝国』ロシア、『悪の枢軸』イラン・イラクに私は赴任しました。 生き続けたいという価値観があれば、かならず共通点を見いだせると思います」
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