家具の学校

『家具の学校』から始まったモノづくり
現在は、ダニエル元町本店にてワークショップ体験をご案内

2011年11月5日 上級特派員便り

2011年11月09日 | Weblog
上級特派員便り

2011年11月5日 @伊勢原校   曇り

今週も引き続きキャビネットの製作。
本日の作業は、地板張り、扉組立、側板、扉の目違い取り。

地板張りは、シナべニアを所定の位置に合わせてボンド貼りするだけではあるが、貼り合わせ部分に隙間ができないようにハタガネで止めたり、しっかりボンドが付くように止め釘を打ったり、接着後止め釘を抜くことを考慮して間に一枚べニア板を挟んで釘を打つとか、補強材を裏に貼ったり、それなりの細かく考慮された作業があるもの。
先日、ある機会を得て大工さんに、最近作ったスツールを見せたところ、俺たちにはこういうものは作れねーな、こんなに隙間のない加工は出来ねーよ、などと言う。職種が異なるので当然なことなのだが、家具製作のち密さを自覚した次第だ。0.1ミリも隙が開いていたら気持ちが悪い、と言うのが家具職人の気持ちだろう。家具製作を習って、上級になって、0.1ミリの隙が気持ち悪いという感覚は確かにある。しかし、その0.1ミリの隙が出来ない技量がまだまだ着いてこない。気持ちが悪いだけでも上達したってことだろうか?

先週の側板組み立てに倣って扉の組み立てを行った。
その後、先週組み立ての側板と扉の目違いを手鉋で落とす。
鉋の仕込みはすでに以前の号で載せたが、鉋刃、裏金の研ぎは当然として、鉋台の仕込みは重要。また逆目に負けない裏金調整も重要だ。
生徒たちの鉋の仕込み、鉋掛けが不十分と感じたのであろう。佐宗講師が、キャビネ製作の後、再度我々を仕込んでくれるとのことだ。ありがたいことだが、こんな調子で卒業できるのだろうか。

本日の佐宗おやつは、コーヒーゼリー。単純なようだが、適度な苦みを残した(加えた?)技量はさすが。

最後になるが、日本を代表するウインザーチェア職人の村上富朗氏が逝った。享年62歳と言う。ここに哀悼の意を表し、氏の冥福を祈る。

写真1: 地板貼り

写真2: 扉の組み立て 右にあるのはショックレスハンマー(次回の『お道具拝見コーナー』にて紹介予定)

写真3: 目地違い取りの鉋掛け
  
写真4: 本日のおやつ コーヒーゼリー

写真5: 仕掛品 こうして湿・乾による歪みから部材を守る

『お道具拝見コーナー』その5(三枝氏投稿)
今回は、某氏が時々使う「替刃鉋」について考察してみよう。
替刃鉋は最近の物を見てないので、確かな事はいえないが、基本的に鉋刃の切れ刃部分を交換出来る様にした物で、後は従来の鉋と変わらない様だ。 台の調整、裏刃の調整、刃の出し入れもほぼ従来の鉋と同じのものと、台の調整は必要だが、厚めのカミソリのような替刃と裏金が鉋身の所定位置に収まるように出来ている為、裏金の調整は不要なものがあるようだ。 詰まり、基本的には従来の様に鉋刃を研がなくて良いだけで、後は従来の鉋と同じだと思う。

従って 先ず従来の鉋が使える前提で成り立つ商品ではないかと思う。 替刃鉋は素人が簡単に使えると言うイメージが強いが、実は鉋を上手く使いこなせる人が使うものでは無いだろうか。

現状プロの家具製作者で、手押し鉋や自働鉋を使わない人はまず居ないだろう。
だから手鉋も仕上に掛けるとか、目違いを取るとかそう言う場合に使う事が多いと思う。 時間に追われて、家具の最終仕上で鉋を使いたいが、仕上鉋がどうも今一切れない。 ここでおもむろに刃を研いでいたら 今日中に仕上がらない。 さりとてこのまま無理に使えば製品に重大なダメージを与えるかも知れない。 第一仕事の流れが滞り、やる気もそがれる。

だからプロなら、段取りを考えて、控えの仕上鉋を用意しているだろう。それを使えば済む話だ。 だが仕上鉋を複数持ち、調整して常に備える事は案外大変な時間と労力が掛かる。 使う樹種が違えば、それに合わせて仕上鉋を用意する必要も有ろう。 
 
そう考えて来ると替刃鉋を、使い刃を交換して最終仕上削りを行うのは、案外合理的とも考えられる。 鉋は材を平滑に削る手道具で その目的ならサンダーで仕上げる方法も有る。 家具は塗装の食い付きを良くする為、塗装前にサンダーを掛けるから、艶が出るような鉋掛けは必要無いと言うのは、言い過ぎだろうか。 

替刃鉋は、本来プロが生産効率を上げる道具として使う物では無いかと思う。では、替刃鉋はその目的に適う物だろうか。 或いは、言い方を替えるなら、家具製作を習う者が使う物だろうか。 残念ながら私の経験不足で結論は出ていない。(逃げてる) 
特に、家具製作を習う者が使う物かと言う件については、いずれ別途論じて見たい。
とまあ此処までが私の考察で、異論反論の有る所だろうし、認識の誤りも有るかも知れない。 その点をご理解頂き、関係者のご意見が頂けると有り難い。
要は、用途に応じて使うなら替刃鉋は便利な道具だと言えまいか。
   
写真は 某氏の替刃鉋である。 この鉋の場合、裏刃は固定で調整出来ない構造だ。 裏刃の調整が出来るタイプも有るようだ。 少し使わせてもらったが、思った以上に切れて 驚いた事を附記しておこう。

写真6: 替刃鉋 萬太郎

写真7: 替刃鉋の鉋身、替刃、裏金

文責・編集  堀江

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする