80年代の人気コミック「ホットロード」が、能年玲奈さん主演で実写化されるそうで。
実写化かぁ…。
このコミックが人気だった頃、すでに私は大人だったので
主人公たちを取り巻く大人たちの描写も理解でき
同時に、中学時代の自分たちの言動もなつかしく思い出され
一読で二度おいしい作品でした。
もともと私はマンガにあまり興味がある方ではなく
マンガ雑誌も購読したことがほとんどありません。
話題になった作品を単行本で読んだ程度ですが
その中で私のベスト3は
水野英子「ファイヤー!」と、三原順「はみだしっ子」、
そしてこの紡木たく「ホットロード」です。
この3作は全巻揃えました。
「ホットロード」は、暴走族の少年少女のラブストーリーと捉えられがちですが
本質は、親子の、言い換えれば大人と子供の、葛藤を描いた人間ドラマです。
絵画に例えると、「暴走族」はあくまでも額縁で
絵自体は、家族とは何かを問う描写です。
以下はあくまでも私の個人的見解なので
作品ファンの方々とは違う意見もあるかもしれませんが
ご容赦願います。
主人公・宮市和希は、幼い頃に父と死別して母と2人暮らしの設定ですが
この母親が生活感のまったくないおしゃれで垢抜けた若い女性。
住んでるところも高級マンションっぽいし
家具もおしゃれなものばかり(食卓にはキャンドルがある!)。
でも父親の写真はまったくなし。
和希曰く「ママがいやいや結婚した相手だから」だそうです。
母には離婚調停中の彼氏「鈴木くん」がいて
どうも「鈴木くん」は、母が結婚前に交際していた相手で
何らかの理由で別れさせられた過去があるそうです
(これはのちに母が泣きながら吐露したことから推測できます)。
多感な中学2年生の和希は
母の愛情が自分に向けられていないと感じ
クラスメートたちとの万引き事件をきっかけに
少しづつ「普通の子」のラインから外れていきます。
そんな時に知り合ったのが
中学卒業後、ガソリンスタンドで働いている春山。
暴走族「ナイツ」のナンバー2でもあります。
彼もまた、家族の中で疎外感を味わっている少年でした。
春山は母親の連れ子で
母が再婚後にできた弟との4人家族。
新しい父親のことはあまり描かれていませんが
母親はとても優しく、春山に愛情をもっている設定です。
弟とも仲が良さそうなんですが
春山は母親に対して心を閉ざしています。
そんな幼いふたりの危なっかしい恋愛を軸に
思春期の子供たち特有の脆さ・自分勝手・浅はかさ・純粋さが渦巻き
それを外から見て苦悩する大人たちの描写が見事に描かれています。
和希の母は、決して虐待してるわけでも育児放棄してるわけでもなく
「友達のような親子」であり続け、いずれ本当に好きだった「鈴木くん」と結婚する
幸せな未来図を描いていた人です。
それが「突然(彼女にとっては)」非行化した娘に訳がわからずオロオロするばかり。
おそらく30代前半であろう彼女ですが
結局は大人になりきれていない人で
離れていく娘と真正面から向き合う勇気がありません。
対して、脇役ですが
和希の3年生の担任教師が印象深いです。
メガネをかけた中年の教師、というステレオタイプのキャラですが
和希の母よりは真摯に和希を理解しようと努めていました。
しばしば高圧的な物言いをするせいか
和希は最後まで心を開くことはありませんでしたが
家出中の和希と話し合う場を設定したのに
「体調不良」を理由に来なかった母(和希は家出しているので、何ヶ月も会っていない)のことを
「君の お母さんは 弱虫だな」
と悲しそうにつぶやいたシーンは忘れられません。
「…顔を見るのがこわいという気持はわかります
でもきょうは はってでも来るべきだったのではないでしょうか」
話し合いから逃げて現れなかったことを
担任から批判された母。
そんないつまでも子供で弱虫の母も成長していきます。
最終巻、自分を避ける母に泣きながら怒りをぶつける和希の横で
「おばさん、こいつのこときらいなの?
もしそーなら オレがもらってっちゃうよ」と
春山が和希の母に言い放った時
母の脳裏に浮かんだのは、赤ちゃんだった和希の姿。
よちよち歩きの和希の姿。
「…あげないわよ…誰にもあげないわよ…
親が…親が自分の子をきらいなわけないじゃないの
きらいなわけ…ないじゃないのぉ…」
おそらく初めて母親らしい発言をしたシーンだと思います。
このあと、「鈴木くん」と和希を対面させたり
春山の事故で精神が壊れそうになった和希をしっかり受け止めたりと
「母親」になっていきます。
ラスト近くで母が「鈴木くん」に語ります。
「…たとえあの子の父親が生きていなくても
もしも親同士が心から愛し合っていれば
子供は自然に
人を愛することや愛されることの
大切さを知るのかもしれない…
和希にはそれを
教えることができなかった…」
このセリフは、大人になってからでないと理解できないでしょう。
作者の紡木たくがこの作品を描いたのは20代前半だから恐るべしです。
これをどう実写化するのか想像できないですね。
2時間前後の尺で全部描くとなると、やっぱり
「暴走族の少年少女のラブストーリー」になってしまうのかなあ。
画像は私の持ってる「ホットロード」ですが
第1巻だけ行方不明です。
家じゅうひっくり返して大捜索すれば見つかると思うんですが…。
実写化かぁ…。
このコミックが人気だった頃、すでに私は大人だったので
主人公たちを取り巻く大人たちの描写も理解でき
同時に、中学時代の自分たちの言動もなつかしく思い出され
一読で二度おいしい作品でした。
もともと私はマンガにあまり興味がある方ではなく
マンガ雑誌も購読したことがほとんどありません。
話題になった作品を単行本で読んだ程度ですが
その中で私のベスト3は
水野英子「ファイヤー!」と、三原順「はみだしっ子」、
そしてこの紡木たく「ホットロード」です。
この3作は全巻揃えました。
「ホットロード」は、暴走族の少年少女のラブストーリーと捉えられがちですが
本質は、親子の、言い換えれば大人と子供の、葛藤を描いた人間ドラマです。
絵画に例えると、「暴走族」はあくまでも額縁で
絵自体は、家族とは何かを問う描写です。
以下はあくまでも私の個人的見解なので
作品ファンの方々とは違う意見もあるかもしれませんが
ご容赦願います。
主人公・宮市和希は、幼い頃に父と死別して母と2人暮らしの設定ですが
この母親が生活感のまったくないおしゃれで垢抜けた若い女性。
住んでるところも高級マンションっぽいし
家具もおしゃれなものばかり(食卓にはキャンドルがある!)。
でも父親の写真はまったくなし。
和希曰く「ママがいやいや結婚した相手だから」だそうです。
母には離婚調停中の彼氏「鈴木くん」がいて
どうも「鈴木くん」は、母が結婚前に交際していた相手で
何らかの理由で別れさせられた過去があるそうです
(これはのちに母が泣きながら吐露したことから推測できます)。
多感な中学2年生の和希は
母の愛情が自分に向けられていないと感じ
クラスメートたちとの万引き事件をきっかけに
少しづつ「普通の子」のラインから外れていきます。
そんな時に知り合ったのが
中学卒業後、ガソリンスタンドで働いている春山。
暴走族「ナイツ」のナンバー2でもあります。
彼もまた、家族の中で疎外感を味わっている少年でした。
春山は母親の連れ子で
母が再婚後にできた弟との4人家族。
新しい父親のことはあまり描かれていませんが
母親はとても優しく、春山に愛情をもっている設定です。
弟とも仲が良さそうなんですが
春山は母親に対して心を閉ざしています。
そんな幼いふたりの危なっかしい恋愛を軸に
思春期の子供たち特有の脆さ・自分勝手・浅はかさ・純粋さが渦巻き
それを外から見て苦悩する大人たちの描写が見事に描かれています。
和希の母は、決して虐待してるわけでも育児放棄してるわけでもなく
「友達のような親子」であり続け、いずれ本当に好きだった「鈴木くん」と結婚する
幸せな未来図を描いていた人です。
それが「突然(彼女にとっては)」非行化した娘に訳がわからずオロオロするばかり。
おそらく30代前半であろう彼女ですが
結局は大人になりきれていない人で
離れていく娘と真正面から向き合う勇気がありません。
対して、脇役ですが
和希の3年生の担任教師が印象深いです。
メガネをかけた中年の教師、というステレオタイプのキャラですが
和希の母よりは真摯に和希を理解しようと努めていました。
しばしば高圧的な物言いをするせいか
和希は最後まで心を開くことはありませんでしたが
家出中の和希と話し合う場を設定したのに
「体調不良」を理由に来なかった母(和希は家出しているので、何ヶ月も会っていない)のことを
「君の お母さんは 弱虫だな」
と悲しそうにつぶやいたシーンは忘れられません。
「…顔を見るのがこわいという気持はわかります
でもきょうは はってでも来るべきだったのではないでしょうか」
話し合いから逃げて現れなかったことを
担任から批判された母。
そんないつまでも子供で弱虫の母も成長していきます。
最終巻、自分を避ける母に泣きながら怒りをぶつける和希の横で
「おばさん、こいつのこときらいなの?
もしそーなら オレがもらってっちゃうよ」と
春山が和希の母に言い放った時
母の脳裏に浮かんだのは、赤ちゃんだった和希の姿。
よちよち歩きの和希の姿。
「…あげないわよ…誰にもあげないわよ…
親が…親が自分の子をきらいなわけないじゃないの
きらいなわけ…ないじゃないのぉ…」
おそらく初めて母親らしい発言をしたシーンだと思います。
このあと、「鈴木くん」と和希を対面させたり
春山の事故で精神が壊れそうになった和希をしっかり受け止めたりと
「母親」になっていきます。
ラスト近くで母が「鈴木くん」に語ります。
「…たとえあの子の父親が生きていなくても
もしも親同士が心から愛し合っていれば
子供は自然に
人を愛することや愛されることの
大切さを知るのかもしれない…
和希にはそれを
教えることができなかった…」
このセリフは、大人になってからでないと理解できないでしょう。
作者の紡木たくがこの作品を描いたのは20代前半だから恐るべしです。
これをどう実写化するのか想像できないですね。
2時間前後の尺で全部描くとなると、やっぱり
「暴走族の少年少女のラブストーリー」になってしまうのかなあ。
画像は私の持ってる「ホットロード」ですが
第1巻だけ行方不明です。
家じゅうひっくり返して大捜索すれば見つかると思うんですが…。
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