一つのじゃがいもの中に 山も川もある
と言ったのは、僕の祖父世代の詩人 高橋新吉である。
画家 熊谷守一が晩年の30年を過ごした、50坪の庭にも、山も谷も絶壁もあった。
そこで昆虫や植物、甕の中の金魚、空の雲をながめて暮らしていたのだ。そして家中には客人があふれていた。
映画の時代は、僕が高校を出た昭和49年。ユースはあんなスタイルで歩いていたな、的な若者が登場する。熊谷守一を撮り続ける若いカメラマンはニコンFを持ち、サブ機でニコマートを使っているところなんか、緻密な近時代考証である。
山崎努、樹木希林の国宝級で夫婦役とあらば、何の感想もないが、フツウのおばさんを演じて日本一の、池谷のぶえがやはりイイ味を出す。
有名すぎるエピソードだが、文化勲章をはじめ、国からの叙勲を総て辞退したのは、袴を履くのも面倒だし、来客接待で妻を疲れさせたくないから。
勲章が大好きだった、3月に他界した父にこの映画見せたかったなあ。