生誕100周年で、昨年来サリンジャーにまつわる作品を2つ観てきたが『ライ麦畑の反逆児』は、短編を書き始めたサリンジャーが、戦争を経て精神を病み、『ライ麦...』で世界的名声を得るが、やがて世捨て人になるまでの半生が描かれる。
この作品のサリンジャーが真実であるならば、皮肉屋はシャイネスの裏返しであり、厭世観は潔癖症の派生したカタチであると汲み取れる。
精神の歪みはやはり戦争に起因する。
サリンジャーが戦争に動員される前から書き始めていた『ライ麦...』を戦後のブランクを経て完結させたのは、ひとつの奇跡である。
サリンジャーより4歳年少である僕の父の戦後は、
教育者としての健全な道をまっしぐらに歩んだようにみえるが、戦争・捕虜の体験から、常人が看過するようなことに懐疑心を抱く一面もあった。
『ライ麦畑...』あらためて読み返してみようと思う。